岡山政経塾 チーム21
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◆岡山市中心市街地の現状と未来への取り組み◆
〜市民の声から〜
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第二章 取り組むべき現状と課題、そして未来のための対策
第2項
6期生 大原 正
(1)市民が求めている公共交通機関の現状と課題
1.はじめに

公共交通機関として市民がイメージしているものは何か。路面電車・バス・JR。日常使用頻度により、それぞれ思いつくものは違うはずである。この章では、“岡山市中心市街地=内環状線内(右図赤線)”という定義をもとに、その範囲内に大きくかかわる路面電車とバスついて取り上げ、まずは現状と課題を述べる。
2. 『現状』
* 路面電車
岡山駅前降車専用電停。「何故こんなところで強制的に下 車させられるのか?」確かにこの電停は“岡山駅前”であり“岡山駅”ではない。看板に偽りはない。それでもせめて「その先のもう一つの電停で降ろしてくれれば良いのに」と思ってしまう。
東山もしくは清輝橋方面から岡山駅前行きの路面電車に乗り、終点の岡山駅前に到着するとこんな思いをさせられる。降車専用電停に降りると、乗客は横断歩道で信号を待ち、両サイドの歩道へ渡り、それからさらに駅前広場への横断歩道を渡るかもしくは地下街へ降りて岡山駅に向かうことになっている。旅行に出かけたり、出張したり、いつもより大きな荷物を持っている人々。お母さんお一人でベビーカーを使ったり、小さなお子様を連れていたり、車椅子を使っていたり、多くの人々にとって、とても不便である。特に雨が降っている日はなおさらである。
シンフォニーホールから岡山駅を目指した観光客の話。
“岡山の旅もこれでおしまい。あとは新幹線に乗る為に岡山駅まで路面電車MOMOに乗るだけ。MOMOは100%超低床式路面電車。電停との段差がなく、車椅子でもスムーズに乗ることが出来るという機能性だけではなく、近未来的な外観に、車内には木をふんだんに使ったという、いままでにないデザインに仕上がっている。超高齢化社会に適応した素晴らしい路面電車である。ちなみにこの電車は、第一回日本鉄道賞・2003年グッドデザイン賞・ローレル賞など多くの賞を受賞している。たった一編成しかないこの電車に乗ることが出来て満足、そして終点岡山駅前に到着。しかし外はあいにくの雨。鞄から傘を出して信号を渡る。信号が点滅し始めたので足を速めた。そしてその時。”
雨が降る⇒路面は濡れる⇒路面が滑る⇒転ぶ⇒怪我をする
複数の悪条件が重なるとアクシデントの起こる確率は高くなる。“岡山旅行の最後の最後は悪しき思い出となってしまった。せめてその先の乗車専用電停まで進んで下車させてもらえれば、信号を渡ること無く地下街への階段を利用することが出来、新幹線に乗るために安全に岡山駅に行くことが出来たのに。”
岡山駅前降車専用電停は不親切極まりない場所と構造になっている。誰の為の岡山駅前降車専用電停なのか。運行上の利便性を第一として設計されていると思われても仕方がない。
アンケートでは驚くべきことに、「利用する理由がない」という回答が存在した。「利用する必要がない」ではなく、「利用する理由がない」である。ある意味、路面電車の存在価値そのものが疑われているのではない でしょうか。
「利用する理由がない」と回答した方々のなかには、「路面電車とバスの平行運転区間内でもバスを利用する」というご意見を頂戴した。その理由は「バスなら岡山駅構内に入ってくれる」からであった。
平日、東山線は朝夕の通勤・通学において利用されている。一方清輝橋線においてはその利用も少ない。日中は閑散としている。通勤・通学以外には路面電車の利用目的がなく、特に清輝橋線においては「利用する理由がない」が正論であろう。路面電車へのアンケート結果において『不満』と回答した人々には、運行経路の問題を指摘する声も多く存在する。しかしそれにも増して岡山の路面電車の代表的な乗降場所である岡山駅前の電停の場所と構造に、多くの市民は不満を持っている。さらに付け加えれば、岡山駅構内に入らない路面電車に多くの不満が募り、その結果「利用する理由がない」という回答が多く存在している。
* バス
岡山駅のバス乗り場は東口に集中し、バス会社数社が乗り入れ、それぞれの目的地ごとに整備される都合上、近距離を利用する人々には、乗り場が非常にわかり難い。岡山を訪れた人々にとって、本当にわかり難い。また、岡山駅東口の乗 り場でバスを乗り継がなければならない人にとっては、乗り場を長い区間歩かなければならない。誰のために設計されたバス乗り場なのか。バス会社の陣取り合戦の結果の末に決められたバス乗り場であると判断されても言い訳のしようがない。
一方、岡山駅西口のバス乗り場はとてもわかりやすい。ここを発着するバス路線は限られており、乗り場も一箇所しかないからである。
岡山駅東口を出発しているバスのうち、結果的に岡山駅西口方面にある国道53号線に入る運行経路をもつバスが、なぜか乗り場が集中する東口から発着している。また、通称岡山駅前といわれている、ドレミの街前と三井住友銀行前のバス停からは県外各地へ向けた高速バスも発着している。高速バスは岡山インターに向かう為、全便国道53号線に入る。今や岡山駅東口はあらゆるところにバス乗り場が乱立し、乗り慣れた人以外には全く判りづらい構造となっている。
3. 『課題』
* 路面電車
現状からどのように変えていけば今以上に路面電車を利用するようになるのか。また今後、人口減少・超高齢化を想定した社会環境を踏まえて、路面電車はどうあるべきか。
@ 岡山駅東口の駅前広場への乗り入れ
A 環状化 国道250号(旧2号)線を東西に走らせ環状化
B 延伸
C パーク&ライド
D 始発・最終電車のダイヤ見直し
以上代表的な5項目のアンケート結果を報告する。
「利用する理由がない」という不満項目の裏返しが満足につながる。その道筋が市民へのアンケート調査から見えてきた。個別に考察する
@ 岡山駅東口の駅前広場への乗り入れ
広島駅へも、高知駅へも、鹿児島駅へも、富山駅へも、熊本駅・豊橋駅そして東京都の王子駅へも、路面電車は駅前広場に乗り入れ乗客の利便性を確保している。まだまだその他の都市にも実例がある。この姿こそが本来のあるべき姿である。2009年4月政令指定都市となり、ましてや地域主権型道州制移行時における州都を目指そうとしている岡山市であれば、これくらいは実現したい。
A 環状化
アンケートの結果では「環状化すべきでない」との回答は30.5%、であり、およそ10人あたり7人の方々が環状化を望んでいることが明らかになった。乗車機会を増やすべく、せめて内環状線の南側部分だけでも環状させ、中心地市街地内を運行すべきである。
B 延伸
アンケートの結果では、環状化を除いた具体的な「延伸先」の回答を全体の17.7%の方々からいただいた。延伸すれば「利用する理由」を明確にもった人々の考えが「延伸先」に表現されている。詳細は次の章で述べることとする。
C パーク&ライド
東山電停においてパーク&ライドを整備する。路面電車の乗客を掘り起こす為、新たな試みが必要である。
D 始発・最終電車のダイヤ見直し
平行する路線バスより遅い始発。また早い終電。本当にこれで良いのか。
* バス
“わかりやすくすること”この一言につきる。そのためには東口に集中しすぎている配置を西口へ分散し、その上で出来るだけ重複路線区間をもつバスは方向別に整理することが望まれる。路面電車との役割分担を再考が不可欠である。
(2)公共交通機関の整備について
1. 『中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市』
2007年岡山市はめざす都市像として「岡山市都市ビジョン」を策定しました。その中で都市の使命は『中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市』であるとしています。市民福祉の向上を図るとともに、中四国の拠点都市にふさわしいまちづくりを進めていくため、おおむね20年後の岡山市の将来都市像とその実現に向けた都市づくりの方向を示している。ここには、「福祉と医療と教育、そして交通の要衝という岡山の持つ特性をいかした都市づくりを進め、先進的な福祉、高度な医療、伝統と厚みのある教育、これを総合化し、さらに力を高め、中四国、さらに西日本圏域の発展とそこに住む人々の幸せに貢献する都市を創造します。」と明文化されています。
“交通の要衝”とは、地理的に中四国地域全体を眺めたとき、東西南北に伸びた道路・鉄道が結節する地点であることを示します。そのうち鉄道に視点を向けると、JR岡山駅はまさに“交通の要衝”ということになる。そのJR岡山駅も長らく駅を境に東西地域が分断されていた感の否めない状況から、今、大きく変わろうとしている。東西地域の分断が解消に向かい、中四国の拠点都市の駅として、姿を現そうとしている。
報道発表によると、2010年3月には完成する見込みのJR岡山駅西口広場では、バスターミナルが拡張され、バス乗降場が2カ所から9カ所に増設するとある。(2009年2月18日山陽新聞より・詳細は岡山駅西口方面の活性化についての章を参照)
これを基に、“交通の要衝” JR岡山駅(駅前広場を含む)を名実ともに『中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市』の玄関口とするために、岡山駅バスターミナルの再整備と関連して路面電車から焦点をあて、市民が求めている公共交通機関の整備について、案を示すこととする。
アンケートによる路面電車への課題は以下の5項目である。
@ 岡山駅東口の駅前広場への乗り入れ
A 環状化 国道250号(旧2号)線を東西に走らせ環状化
B 延伸
C パーク&ライド
D 始発・最終電車のダイヤ見直し
2. 整備案について
@ 路面電車の岡山駅東口駅前広場への乗り入れについて
既報をふまえ以下のプロセスの基、実現の提案とする。ポイントは、バスターミナルの整理と空きスペースの有効活用である。
(1) 現在東口広場に集中しているバスのうち、岡山空港行き・他府県行き高速バス等、国道53号線方面に向かう路線の発着を全て西口広場からとする
(2) 東口広場のバス乗り場を整理整頓し、利用客に判りやすくする
(3) 東口広場のバスターミナルを縮小する
(4) バスターミナルの縮小により東口広場の空いたスペースに路面電車の乗り入れを行なう。岡山駅電停の設置。
このプランには近江商人から現代にまで受け継がれる“三方よし”の効果があります。“売り手よし・買い手よし・世間よし”である。岡山駅の東西分断が名実ともに解消され、駅利用客の利便性が格段に向上し、そして清心町交差点における跨線橋から総合グランド方面への右折渋滞が緩和されます。
路面電車の岡山駅東口の駅前広場への乗り入れはこのプロセスで行なえば決して不可能ではない。
A 環状化
およそ70%に人々が望む路面電車の環状化。多くの人々にとって手軽に乗ることができる路面電車であるという意識と、特定の人々だけの単なる乗り物という意識では、存在価値が大きく異なる。中心市街地に訪れたり、中心市街地を楽しんだりする人々のための、親しみのある交通機関として、存在価値を発揮してもらいたい。市民のために、そして岡山を訪れた人々のために路面電車の環状化は必要である。
商店街の活性化を考えるとき、多くの人々に商店街に来てもらうための店づくりやイベント開催の必要性について議論される。正論である。それとともにアクセスも重要である。たとえば、岡山駅から路面電車に乗り、城下電停で下車して表町商店街を南下して歩くとする。商店街を楽しんで国道250号(旧2号)まで来た。また北上して城下電停に戻るには足も痛くなっていて疲れている。新京橋西詰付近に電停があり、そのまま車窓を眺めながら岡山駅に帰ることができたら、有り難いではないか。
東京ディズニーリゾートにも園の外側を周回するモノレールがあります。ディズニーランドとディズニーシー、あわせてそのほかの景色・風景を視点を変えて眺めることが出来るように、モノレール自体がアトラクションになっている。のんびりと路面電車から岡山市中心市街地を眺めてもらい、時には辛口の評価も頂き、市民と訪れて頂いた皆様のお力をお借りしながら、私たちみんなの岡山市中心市街地を作り上げていく必要があります。
JR山手線・JR大阪環状線はもとより、最近では2004年10月に名古屋市営地下鉄名城線が環状化された。市民にとって、そしてそこを訪れる多くの人々にとって、環状化は結果的に利便性が向上し、有効なのである。ちなみに富山市では本年12月に富山地方鉄道市内線(路面電車)が環状化の為に新線を開通させます。
岡山駅⇔市役所⇔新京橋西詰⇔城下⇔岡山駅(上の地図赤線)は最低限環状化すべきである。
B 延伸
アンケートによる具体的「延伸先」の上位5地区は次項の図の通り。
【市民が望む路面電車の延伸先 ベスト5】 |
第1位 青江近辺 27.5% |
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第2位 市役所 17.4% |
第3位 それぞれ 7.2%
桃太郎スタジアム |
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シネマタウン岡南 |
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第5位 後楽園 5.8% |
ここで特筆すべきことは、第1位の《青江近辺》・第2位の《市役所》と回答を頂いた方々に、それぞれ日赤病院と岡大病院をイメージしている人がいることである。市民はそれぞれの病院の価値を潜在的に認識してはいるが、アクセスに大いに不満を持っているのである。岡山駅からバスは乗りづらく、タクシーではコスト負担が大きい。市民は『中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市』の都市像にそれぞれの病院へのアクセスの必要性を求めている。
次に第3位の《桃太郎スタジアム》。本年からJリーグの公式戦が定期的に行なわれる。精一杯地元のチームを応援した後に、歩くことに疲れる人もいる。雨が降ってしまっていたら、路面電車があるととてもありがたい。なぜならサポーターには以外に年配の方・高齢の方も多いからである。お孫さんと観戦する人もいるからだ。
同じく第3位の《シネマタウン岡南》。岡山市では自家用車を主たる交通機関としている人が多いと思う。しかし18歳以下の人にとっては自転車となるであろう。岡南地区まで延伸されれば、路面電車を利用して、帰りは表町近辺で下車し、新たな人の流れを呼び起こすことが出来るかもしれない。相乗効果が期待できる。そして、雨の日にも傘のいらない電停と各施設をつなぐことが出来れば、『傘要らずの路面電車』としてアピールできる。
第5位の《後楽園》。その昔は近くまで走っていたようだ。やはり松山の道後温泉にむけて路面電車が走っているように、その都市の代表的文化施設には是非路面電車を走らせたいと言う気持ちに十分理解できる。優れた日本庭園である《後楽園》を、もっともっと知らない人々に何度でも訪れて欲しいと言う市民の声を感じる。
C パーク&ライド
通勤・通学時間対における道路の渋滞は、一定時間に車が集中することが原因です。さらに特に大きな河川を持つ都市では中心市街地へ向かおうとする車とそこを通過しようとする車が河川に架かる橋に集中するため、渋滞の密度はさらに濃くなります。たとえば新京橋。橋の東側に国清寺交差点(路面電車門田屋敷電停東側)があります。朝のラッシュ時、ここは北から南からそして東からの車のほとんどが新京橋に向かいます。必然的に大渋滞が起こります。
そこで、東山電停においてパーク&ライドの整備を提案します。
パークアンドライドとは、郊外の一定の場所に自家用車を置き、そこから公共交通機関を利用するというものです。駐車場所と駐車料金をどのようにするかという問題が課題となる。
* 駐車場所
電停から遠すぎれば不評を買う。せめて雨が降っても傘を差さずに電停に行くことができる設備は必要である。
* 駐車料金
> 路面電車の利用者、特に定期券所持者を優遇する
> 電子マネーによるポイントで駐車料金を優遇する
乗車ポイント、ならびに路面電車沿線商業施設でのお買い物ポイントを駐車料金に充当できるようにして、相乗効果を計る
D 始発・最終電車のダイヤ見直し
路面電車はバスよりも時間の正確性は格段に優れている。しかし現状に不満が募っている人たちがいる。特に早朝・夜間のダイヤである。
平日の始発は東山が6:00、清輝橋は6:35。これでは始発の新幹線に乗ることは不可能。ここを見直す必要がある。
一方平日の最終岡山駅前発は、東山行き22:11。清輝橋行き21:40。新幹線の最終便が岡山駅到着は23:56。繰り下げは必要であろう。
3.おわりに
既存する路面電車を大いに活かし、今現在活用するために不足している施設と仕組みを構築すれば、今までとは全く違った景色が見えてくる。何もしないよりも一歩踏み出してみてはどうだろうか。
まず、バス路線との役割分担を再考し、環境に良いとされる路面電車ネットーワークの構築と、市民のみならず、岡山を訪れた人々にも配慮した公共交通機関の整備が不可欠である。
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