岡山政経塾 チーム21

 

◆岡山市中環状線エリアの現状と
活性化に向けた取り組み◆



「6.岡山県総合グラウンドの活性化」


            7期生 難波 宏行     

 活性化の定義を【ひと】・【モノ】・【金】が行き交うこととしているが、岡山県総合グラウンドについていかに活性化を図るか。日常の利用としては競技施設としての利用、他の集客としては競技観戦や各種イベントなどその日限りのものが多い。お金を使う場所は、施設の利用料金、数少ない売店ぐらいである。【ひと】の流れもその時の催しやイベントなどで大きく異なる。そのため、【金】を使う常設の施設が少ない。
 今回は、多くの県民に愛着ある総合グラウンドを提案していく。アンケートでもわかるように、施設利用者も多いが、「利用しない」の回答も多数存在する。
つまり、施設利用者には愛着はあるが、興味を持たない県民も多くいる事が分かる。まず常設の魅力で【ひと】の流れを創るための方法を考え、そこから【モノ】と【金】の流れを生み出していく。
 競技者・観戦者以外の、【ひと】の流れを創り、活性化の糸口を見つけていきたい。



 1.岡山県総合グラウンドの概要

 現在の岡山県総合グランドは、1962年に開催された岡山国体に向けて旧陸軍練兵場跡地に整備された。岡山駅より1.5km歩いて20分程度の立地に、35haの広大な敷地を有し、その中には新設された陸上競技場(桃太郎スタジアム)と体育館(桃太郎アリーナ)、プールに野球場、テニスコート、武道館など数多くの施設が点在している。駐車場は約366台である。
 
 岡山県総合グラウンドホームページより




 2.岡山県総合グラウンドの収支の状況

【管理に係る収支の状況】                  (単位:円) 
  20年度 対前年度増減額 19年度 備 考
収入額A  519,623,848 34,380,866  485,242,982 20年度収入額
その他の主なもの
・県委託修繕費
64,018,500円
20年度支出額
その他の主なもの
・施設修繕費
64,018,500円
指定管理者制度
導入による削減効果額
(H17:438,100,041)
65,193,127円
※H20に実施した
大規模臨時修繕費
(25,546,500円)を
除き算定。


指定管理料 348,401,000 △1,055,000 349,456,000
利用料金収入 104,984,248 9,129,466 95,854,782
事業収入 2,220,100 △115,900 2,336,000
その他 64,018,500 26,422,300 37,596,200
支出額B 491,691,676 31,771,015 459,920,661


人件費 119,210,011 5,959,993 113,250,018
管理運営費 308,022,335 1,323,696 306,698,639
事業費 440,830  △1,934,974 2,375,804
その他 64,018,500 26,422,300 37,596,200
収支額A−B 27,932,172 2,609,851 25,322,321
県への納入金 13,966,086 1,304,926 12,661,160
実質的な県負担額 398,453,414 24,062,374 374,391,040
岡山県都市計画課HPより

岡山県総合グラウンドの収支状況の評価
 上記の収支を見ると、収支額A−Bが平成20年度27,932,172円と黒字を推移し、昨年平成19年度と比べると2,609,851円増えている。一見、採算の合った運営をしていると思ったが、実質的な県負担額398,453,414円となっている。
 つまり、収入額A・内訳の指定管理料とその他(県委託修繕費)の部分は、県が負担(税金)となっており、総合グラウンドの実質的な収入は、利用料金収入と事業収入を足した107,207,348円(平成20年)となっている。この収入額は、支出額・内訳の人件費にも達していない。
 収入支出の内訳を見ると、指定管理料で管理運営費を補っている状況で、施設利用などの収入では到底、管理運営できない数値となっている。
 平成20年度で約4億円の県の負担を強いられている現状。施設利用を県民に促し、事業収入の収益の目標を定め、増収をめざしていくと同時に、管理運営費を施設での実質的な収入額に近づけていくための、経費削減の目標を掲げ達成していく必要がある。
私たち県民は、年間3億円以上の赤字施設を抱えている。




 3.岡山県総合グラウンドの問題点

(1) まず県営グラウンドのできた過程や目的の面で問題がある。概要で述べたとおり、岡山国体の開催に向けて整備された事である。国体の開催は、毎年、各都道府県の持ち回りで行われるようになり、戦後復興の経済政策でもあった。結果として、現在は県民の運動を行う場として、また憩いの場の形になっているが、整備された当時の目的は、国体の競技を行うためのものであり、国体終了後の総合グラウンドのあり方まで考えられていたのか、大きな疑問を感じる。

(2) 広大な敷地だが、催しや大会がある時は、駐車場に入るための車の列をよく見かける。総合グラウンドは公共交通機関の利用を促しているが、アンケートで岡山市内の主な交通手段は「車」が圧倒的に多い。県民の現状のニーズに合っていない。総合グラウンド内のひとを集めるために、広大な敷地を効率よく活用し、立体駐車場の整備や平面駐車スペースの拡充が必要である。

(3) 総合グラウンド内にある「津島遺跡」がある。施設の建設や整備の都度、敷地内に出土し調査された遺跡。現在は竪穴式住居や高床式住居の整備、その周りには湿地が再現されている。桃太郎スタジアム内に出土した物の展示をされている。実施したアンケート内でも、岡山県総合グラウンドの利用に関した問いに、1,073人のうち、津島遺跡を支持したのはたったの8人。総合グラウンド通称「運動公園」と呼ばれる敷地内に、本当に必要なのだろうか。津島遺跡の発信の仕方を考える必要があるのではないか。


駐車場の入場待ちの車列 津島遺跡の屋外展示施設
 



 4.提言

 岡山県営グラウンドの今回の提言は、日常の【ひと】の流れをいかに創るかに焦点を置く。今回は2つの提言をする。

(1)  総合グラウンド内のシンボルになる遊具の整備
(2)  県民が総合グラウンドの愛着を高めるため、祭りの開催

(1)  総合グラウンド内のシンボルになる遊具の整備
 総合グラウンドは、スポーツをする施設を有しているため、競技の練習や試合、試合観戦などの目的が主体となる。しかしそれらに関係しない人は、運動公園に来園する機会が少ない。
 競技観戦者や競技利用者以外に対して、常設でひとが呼べるものが特にない。休日には、広い多目的広場で各々が充実した時間を過ごしている姿を見かける。広い広場も一つの魅力だろう。桃太郎スタジアムや桃太郎アリーナなどシンボルの役割を担う競技施設はあるが、競技が行われないとひとの流れは起こらない。競技以外の目的で、ひとの流れを起こすための常設の魅力が必要である。
 その魅力の一つとして、シンボルになる巨大な遊具の提言をする。

 岡山市南区浦安に「浦安総合公園」があり、西地区には、海賊船を連想させる巨大な木製遊具が整備されている。公園内には広場があり芝生が全体に敷き詰められている。また、水遊びや小さな子供も遊べる遊具などがあり、幼稚園や保育園の遠足コースにもなっている。これらの魅力に、週末になると多くの市民で賑わっている。
       
       浦安総合公園の巨大木製遊具

 現在の総合グラウンドの常設の遊具は存在するが、小規模であり魅力をあまり感じない。浦安総合公園の遊具は、子供は当然遊びたいと思う巨大遊具であると同時に、連れていく大人が、子供がその巨大遊具で遊ぶ姿を思い浮かべ、連れて行きたくなるだけの魅力を持っている。
 総合グラウンドに程近い、岡山市北区伊島にある、岡山県立児童会館内にある遊具施設も老朽化により撤去が始まり、この児童会館自体が平成23年に廃館となる予定である。ここの遊具も大きめで、長いローラー滑り台が印象的な公園である。遊具も時代にあったものを、取り入れていき魅力を低下させないよう整備する必要があるのだろう。
 周辺での県の管轄の公園の遊具の撤去など時代とともに無くなっていく中、子供たちが外で体を使って遊ぶ事を考えると、総合グラウンドでの遊具の新設もよいのではないか。
 遊具自体の詳細な提案は特にないが、以下の3つ要素は外せない。
 
 ・遊具自体が印象的で魅力的なもの。(シンボルになり得るもの)
 ・子供が遊びたいと思えるもの。
 ・大人が連れていきたいと思えるもの

 浦安総合公園のような外観で訴えるものでも良いし、総合グラウンドと言うことで、体を動かすやスポーツ感覚で取り組めるアスレチックの要素を取り入れても良いと思う。
 遊具の可能性で、総合グラウンドの【ひと】の流れの可能性を考えていく。


(2)  県民が総合グラウンドに対する愛着を高めるため、祭りの開催
 アンケートの収集の際、年配の方より総合グランドでの思い出を語ってくれた。それは、総合グラウンドで岡山市の地区別対抗の運動会が行われていた話であった。その方の話なので少し偏っているかもしれないが、県民の多くが総合グラウンドを利用し、とても愛着感が漂う内容であった。
 ここで提案することは、総合グラウンドを身近に感じてもらうことが目的である。イベントの一つとして祭りとした。祭りの内容としては
 
 ・花火(メイン)
 ・出店(県内最多の出店数で行うなど)
 ・ステージでの催し(祭りの主旨に則したもの)
 など
 祭りの時期はいつでもよい。夏に旭川で花火大会をするのであれば、冬でも良い。花火をメインとすれば、家族と一緒に、恋人と一緒に、友達と一緒になど、祭り当日に【ひと】は集まる。総合グラウンドで訪れた人が、打ち上げられる花火をみんなで見ている一体感。必要な事は、岡山県総合グラウンドで、過ごした良い印象を思い出として、それぞれの【ひと】の心に刻んでもらうことである。
 イベント(祭り)で総合グラウンドの良い印象を与え、以降のグラウンド運営のきっかけになる。しかし、魅力があり収益の上がる運営をしていかなければ、イベント(祭り)の開催の意義はなくなってしまう。



 今回は、【ひと】をいかに集めるかに特化して考えてみた。特に親子や若年層ターゲットにしたものかもしれない。小さいころから慣れ親しむ総合グラウンドは、大人になっても愛着があり、訪れやすい場所になるものと考える。将来を見据えた総合グラウンドのあり方を考えても面白い。
 【ひと】が集まる場所には魅力ある物があり、それを目的として訪れた【ひと】が、【モノ】・【金】の流れを引き起こす。
 現在の岡山県は、財政危機宣言をするなど財政の不安要素を抱えている。総合グラウンドの運営・管理は税金で補うことが当たり前の考えを、拭い去らなければならない。総合グランドの広大な敷地や施設を活用した採算性を重視した運営。特に事業収入に関しては、発想と努力で伸ばし、財政の改善に寄与できるだけの、収益の創造をしていく必要がある。