岡山政経塾 チーム21
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◆岡山市中環状線エリアの現状と
活性化に向けた取り組み◆
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「7.岡山大学を活かした地域の活性化」
−地域に開かれた岡山大学を目指して−
7期生 藤井 勲
地域が活性化するとはどういうことなのか?
岡山大学を通して地域を活性化するにはどうすればいいのか?
地域は岡山大学に何を求めているのか?
そこで、地域の岡山大学への関心度を把握するため、岡山大学に関して、アンケート調査を実施した。
岡山大学のオープンキャンパスや公開講座などの活動について、その活動に参加したことがあるのか、そして地域が岡山大学に期待することなどについて1073人に対してアンケートを行った。
アンケート調査で分かったことは「岡山大学の地域への貢献で期待すること」という質問に対して45.1%の人が「期待しない」ということだ。
では「地域貢献」について、岡山大学の取り組み姿勢はどうだろうか。
後でも述べるが、法人化により「地域貢献」が岡山大学の使命となり、「地域貢献」のために、岡山大学は「教育」「研究」で培ってきた財産を地域へ提供、及び連携していく活動に力を入れている。
しかし、岡山大学は「地域貢献」の具体的活動として大学コンソーシアム岡山、高大連携事業など積極的に地域連携を図っているのに、どうして、地域は岡山大学に期待しないのだろうか? それは地域が求めること、希望することと、岡山大学の地域貢献活動が一致してないからであろう。
このアンケート結果をふまえて、地域の人の岡山大学の活動内容の認識、利用状況の現状を理解し、地域の人が期待する岡山大学の「地域貢献」を把握し、その「地域貢献」により地域が活性化する仕組みを考えてみたい。
そして、地域が活性化するということは、【ひと】【モノ】【金】がひとつでもかけることなく岡山大学を活かして地域にあふれることだと考える。
1.岡山大学の概要
国立大学法人岡山大学の歴史は明治3年の岡山藩医学部の設立から始まる。そして明治7年の温知学校の設立、明治33年、第六高等学校の設立、明治35年、岡山県女子師範学校の設立、大正11年、岡山医科大学の設立、昭和18年、岡山師範学校の設立とその機能・役割を拡大していき、昭和24年、新生国立岡山大学がスタートする。
そして、平成16年、政府の方針により国から切り離して法人格を与え、自主性・自立性を高め、教育・研究活動を活性化させ、特色を出していくことを目的に行われた改革で、国立大学法人岡山大学となり、現在にいたる。
岡山大学の規模について、平成21年の大学概要によると、学部数は11学部、大学院は7研究科、教員数は1,388人、事務員等数は1,198人、学部学生数は10,443人(留学生83人−最多中国37人−)である。
また、校地面積は2,068,405u(津島キャンパス638,465u 鹿田キャンパス135,327u)で全国35位、校舎面積は580,604uで全国6位(読売新聞 平成20年調査(499校/725校回答))である。
平成21年度の収支をみてみると、収入596億円(運営交付金197億円 病院収入227億円 授業料78億円 産学連携・寄付金39億円その他)、支出596億円(教育研究費238億円 診療経費235億円 産学連携・寄付金39億円 施設整備費22億円その他)である。また人件費の総額は271億円である。
ちなみに、広島大学と香川大学の平成21年度収支概要の比較を次に示す。
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広島大学 |
岡山大学 |
香川大学 |
学部数
大学院数
教員数
事務員等数
学生数(学部)
留学生(学部)
大学院生
土地
建物 |
11
12
1,803
1,528
10,978
71
4,521
3,146,760u
646,959u |
11
7
1,388
1,198
10,443
83
3,397
2,068,405u
580,604u |
6
9
792
975
5,713
34
854
942,416u
275,545u |
〈収支〉 百万円
運営交付金
病院収入
授業料
産学連携・寄付金
他
〈支出〉 百万円
教育研究費
診療経費
産学連携・寄付金
施設整備費
他 |
〈68,339〉
28,896
20,545
9,067
5,447
〈64,200〉
29,466
18,728
5,020
1,791 |
〈59,635〉
19,671
22,656
7,814
3,902
〈59,635〉
23,793
23,543
3,902
2,291 |
〈29,826〉
10,434
10,430
3,855
1,249
〈29,826〉
11,258
9,994
1,249
2,558 |
付属病院病床数
岡山他民間病院など |
740床 |
839床
岡山医療センター580床
倉敷中央病院1,135床
岡山済生会553床 |
613床 |
2.岡山大学が目指していること
岡山大学は平成21年度で「学生支援体制の充実」「教育活動の高度化」「研究活動の活性化」「効果的・効率的な運営」及び「財政の健全化」を重点課題にした第1期中期目標期間(6年間)が終了し、平成22年度から第2期中期目標期間(6年間)に入る。
岡山大学がこの第2期で掲げている目標が「学都・岡山大学の創成」である。
では、この第1期中期目標期間で、法人化に伴って岡山大学の変革、変容を次にみていく。
岡山大学の広報誌である「いちょう並木」から関連記事を引用して、第1期を振り返ってみる。
まず、法人化による際立った運営上の変革はマネジメントサイクルが導入され、期間を定めた達成目標(中期目標)とその実施プログラム(中期計画)を社会に公示し、その結果について、第三者による評価(認証評価・法人評価)を受けることが挙げられる。(いちょう並木24 平成17年2月)。
岡山大学は21世紀の豊かな岡山を目指して、「地域に貢献する岡山大学」、「地域社会における人材教育に貢献する岡山大学」として活動をしてきたが、この法人化によって、岡山大学の基本的使命の「教育」と「研究」を通じた人づくり(いちょう並木6 平成14年2月)の他に、明確に使命として「地域貢献」が追加され(いちょう並木37 平成19年4月)、岡山大学の存在価値のひとつとなり、地域連携推進機構(リエゾンオフィス)を中軸として地域社会と連携を深め、牽引力になることを重要とした。
その成果としては、大学教育事業部(参加大学間の学生相互受け入れ・大学間単位組み入れ)、社会人教育事業部(シテイーカレッジの開催)、産学官連携事業部(産官との共同事業推進)の3事業を柱とする大学コンソーシアム岡山の設立があげられる(いちょう並木32 平成18年6月)。
また、平成14年から始めた、岡山県教育委員会と連携して大学訪問・出前講義・教育連携事業(高校生のための大学講座、大学生とともに受ける授業)を推進している高大連携事業も高校生が岡山大学に関心を持ってもらう機会として有効な事業のひとつとなっている。
目を転じて岡山大学のサークル活動からも、児童文化部・ボランテイアサークル茜などボランテイアで地域貢献する学生サークルもある(いちょう並木38 平成19年6月)。
そして、更に法科大学院・ビジネススクール・教職大学院設立により更なる改革を推進し、あわせて一方的な情報発信ではなく地域連携を更に推し進める目的で研究推進産学官連携機構設立を設立した。
「いちょう並木 52 平成21年10月」にて、千葉学長が「学都・岡山大学の創成」について、「学都・岡山大学の創成とは多様性にとんだ総合大学という特色を生かし、異分野融合を戦略とし、本学を中国四国の学術の中心拠点とする。」と語っている。
岡山大学は、さまざまな活動で「地域貢献」を図ろうとし、地域から認められる「知」の中心拠点であることを目指している。
参考に、広島大学と香川大学の「地域貢献」の一部を次に示す。
広島大学 |
香川大学 |
社会連携推進機構
高齢者対象フェニックス入学制度
キャンパスガイド
広島夕方講座
起業家要請講座
高校生対象の模擬講座
リエゾンフェアー開催
地域貢献研究の活動
〈公開講座の一部紹介〉
高齢者のための家でもできる健康体操教室
サッカーC級コーチ養成講習会
我が家の近代史 |
社会連携・知的財産センター
産学官連携戦略展開事業セミナー
四国防災連携センター連携協議会
瀬戸内圏研究センター
生涯学習教育研究センター
香川大学ミッドプラザ
〈公開講座の一部紹介〉
韓国ドラマで学ぶ韓国文化と韓国語
初心者のための合気道教室
将棋をはじめよう
モダンアート・現代芸術の先駆け アンチエイジング化粧品について考える |
3.岡山大学の現状
このたび実施したアンケートの総数は1073枚におよぶ。
そのアンケートの「岡山大学について」の各質問の回答内容は以下のとおりである。
3−1 岡山大学の活動で知っていることは?(複数回答)

3−2 岡山大学を利用したことがありますか?(複数回答)

3−3 岡山大学が果たす「地域への貢献」について期待することは?

【ある】の主な内容
◇地域がかかわりやすい大学・そのコンテンツの充実 ◇地域との交流
◇学術振興の旗振り役 ◇社会人向け公開講座の拡充 ◇学生の若い力
◇施設の開放・出入りしやすい環境つくり ◇ボランテイア活動
◇優れた社会人育成 ◇優れた人材の提供 ◇うらじゃへの協力
◇地域活性化について主導的な提案・活動 ◇地域コミュニテイーの拠点
◇わからないけどあると思う ◇産官学協同・連携 ◇公園機能
◇地方の核となってほしい ◇伝統行事を広めてほしい
◇アカデミックにならず普通のことをする ◇生涯学習の場
◇岡山の文化を全国に宣伝する ◇岡山県の特徴を示す
◇法人になってから色がなくなったのでもっと努力してほしい
◇インターネットで医療機関を結び診断を下せるようにする ◇町おこし
◇地域文化の向上 ◇障害者雇用 ◇交流拠点 ◇地域防犯
◇学生の感性を生かした文化などへの活動 ◇大学周りをきれいに
◇植樹をきちんと管理した公園 ◇医学研究 ◇文化イベント
◇大学としての魅力を日本中に発信する ◇県内企業の技術レベルアップ
◇教育県としてのレベルアップ ◇ブランド商品開発し商業化を図る
◇英会話教室 ◇知の中核 ◇学生イベント ◇一般人利用の情報開示
◇地域に根付く活動・研究 ◇きちんとした社会人の育成 ◇仕事の紹介
◇岡山の広告塔 ◇青少年のモラル向上活動・研究 ◇オープンキャンパス
◇他県との交流 ◇新規産業の創出 ◇研究内容を分かりやすく公開する
◇大学生がイベント参加を促進すべき ◇元気な若者文化の発信
◇にぎやか ◇よい学生を育てる ◇誰でも講座が聞ける
◇学生と社会の交流 ◇市民との交流をはかる ◇図書館の開放
◇地域貢献よりも大学の難易度を上げ、求心力を高める
◇幼・小・中学生対象のイベント ◇環境問題 ◇海外との交流
◇岡山ブランドを県外に広める ◇県外学生の岡山定着
◇グラウンドの開放 ◇岡山の文化を守る ◇大学生によるイベント
◇医療研究の公開 ◇医療福祉の充実 ◇地域の経済発展
4.岡山大学の地域貢献
上記のアンケート結果を踏まえて、地域の人が期待する岡山大学の地域貢献、そして実行していくための岡山大学の教員、事務員、経営者、学生が担う役割を考えてみたい。
〈地域に開かれた岡山大学〉
「岡山大学の活動で知っていることは」という問いかけに「知らない」と答えた人が39.1%おり、「岡山大学を利用したことがない」という人が50%もいた。岡山大学に関心や興味をもっている方が非常に少ないことに驚いている。
また、岡山大学が果たす「地域への貢献について期待すること」はという問いかけに対しては45.1%の人が「ない」と回答している。
ただ、29.7%の人が「ある」と答えており、地域の人が期待する岡山大学の「地域への貢献」としては、以下の回答があった。
交流拠点・地域との交流 |
施設の開放・出入りしやすい環境づくり |
樹木をきちんと管理した公園機能 |
学生の感性を活かした文化などへの活動 |
ブランド商品開発 |
ここで考えたいことは、「岡山大学の活動を知らない」39.1%の人、「岡山大学を利用したことがない」50%の人に岡山大学の活動をどのように知ってもらい、利用してもらうかである。
岡山大学を知ってもらう手段を考え、岡山大学の活動を知ってもらい、地域の人々が岡山大学の存在を意識し、知りたい情報を手に入れたいときに、手軽にかつ気軽に利用できる環境を作ることである。
また、岡山大学への期待について、「アカデミックにならず普通のことをする。」「わからないけどあると思う。」という意見がアンケートにあった。
地域の人は、難しいことは期待してなくて、ただ、学生と交流をしたくて、自由に大学内を散策できればいいのかもしれない。
岡山大学の存在価値である地域貢献とは、「地域に開かれた岡山大学」の実現なのだ。
次に地域に開かれた岡山大学の実現に向けて、教員、学生などの役割を考えてみたい。
(教員の役割)
専門知識を分かりやすく、楽しく教えてあげること。
(学生の役割)
地域で生活している学生だからこそ、学生ができる教養・専門知識やサークル活動の地域展開を行うこと。
(事務員の役割)
積極的に岡山大学の施設開放、教育・研究の公開、および子供会などの地域の活動との連携、また、教員や学生からの地域貢献に関する提案の実現に向けて行動すること。
(経営者の役割)
教員・学生・事務員が実現しようとしている行動に対して、規制や制限が
あるならば、その規制や制限をなくしてあげること。
5.地域活性化へつながる「地域に開かれた岡山大学」の実現に向けて
アンケート結果から、岡山大学の活動で「社会人向けの公開講座」を知っていると回答した人は15%で、そして「公開講座」を利用したことがあると回答した人が6.5%と少ない数字となっている。
岡山大学は長年の「教育」「研究」で培ってきた「知」がある。それは岡山大学だけのものではなく、地域が発展、活性化するための財産である。その貴重な財産を新たな方法で地域へ提供していかなければいけない。
現状の活動を続けることが、「地域に開かれた岡山大学」の実現になるとは思えない。
たくさんの人に岡山大学の活動に参加してもらうには積極的な宣伝が必要である。そして宣伝する人は、地域の関心事を常に意識していなければいけない。
宣伝する人は、地域で生活をしている学生が最も適任者である。
そして、アンケート結果から地域活性化と結びつく、岡山大学に期待することとして、「にぎやか」「地域との交流」「若者文化の情報発信」「広告塔」「学生の感性を活かした文化などへの活動」「ブランド商品開発、商業化を図る」という意見があった。
その期待することに、岡山大学の「知」が役に立てば地域と岡山大学とが身近なものとなる。
ある平日、車での移動中、次のフレーズがラジオから流れてきた。
「10mも離れてないところで、ジャズダンスをやっていたり、バレーボールをやっていたり、詩吟を詠う声が聞こえてきたりして、若者が自分の好きなところで、自分の好きなことができる自由な場所が大学だ。」
若者の大学への期待は体育会活動や文化会活動などのサークル活動にもある。
「教育」「研究」とならんでサークル活動も岡山大学の「知」となりえる。
地域との係わり合いが深い学生を通して、学生が楽しんでいる活動を通して、楽しく地域とふれあってみてはどうだろうか?
私も岡山大学の卒業生である。法学部で行政法を専攻し、法律を学んだ。先輩、後輩、友達もたくさんできた。ただ、今でも連絡を取っている友達はサークル活動で知り合った先輩たちだ。
JAZZ研究会で音楽を楽しんで、地域に出てライブもした。当時の大人のミュージシャンとも交流ができ、今思えば、サークル活動を通して地域と自然とかかわっていた。そして地域の人もJAZZ研究会を通して、岡山大学に親しみを感じてもらった。
でもそれは、学生個人やかかわっている人のみが楽しんでいるだけだった。その楽しさを地域全体に教えてあげたい。そして岡山大学は地域が楽しんで
いる光景を想像してほしい。
6.新たな「教育」「研究」の「知」の提供
アンケート結果で、岡山大学の「教育・研究活動」を知っている人が6.4%と少ない環境で、どのように「教育」「研究」の「知」による「地域貢献」を実行していくのか?
まずは、地域および民間企業などに、岡山大学の「教育・研究活動」を知ってもらうべきである。
そしてその「知」の価値を地域および民間企業などに認めてもらい、利用してもらわなければいけない。
ここでの「地域に開かれた大学」とは、地域および民間企業などに「知」を積極的に利用してもらうことである。
大学法人となった岡山大学は、時代のニーズにあった地域への提供手段を考えるべきである。
そのために、商工会議所、経済同友会などとの連携を密にし、大学を飛び出して、「知」の宣伝をするべきである。
その宣伝活動の中で、地域および民間企業などが利用したい「知」を知り、その「知」を地域および民間企業などへ売込んでいくべきである。
岡山大学の経営者、教員、事務委員は岡山大学の「知」を地域および民間企業などに売り込む営業マンになってほしい。
7.「サークル活動」の「知」の提供
岡山大学の存在価値である「地域貢献」−「地域に開かれた岡山大学」―をサークル活動と地域との協同でも実現できないだろうか?
岡山大学は学生のサークル活動を積極的に支援し、地域に宣伝し、学生も自分たちが楽しんでいる活動を、講演会という一方通行の交流のほかに、地域と一緒になって楽しむ企画を考えてみてはどうだろうか?
サークル活動を通しても、岡山大学と地域との交流が生まれ、「地域に開かれた岡山大学」が実現されるはずである。
以上、岡山大学の「知」を地域に広げることで、岡山大学限定の活動が、地域に広がり、地域が参加でき、その結果、「知」から生まれる【モノ】によって、そして、交流によって【ひと】が集まり、【金】が行きかう。
活性化の要素である【ひと】【モノ】【金】が地域にあふれることが期待される。
ここでは、【ひと】が集まること、【モノ】、【金】が飛び交うことが地域活性化として定義し、その活性化のための提案であるが、これが最終ゴールではない。
いろんな目的を持った人が、自由に岡山大学を利用する。
岡山大学と交流してもらう。
そして、岡山大学は「交流人口」を増やす努力をしていく。
「散歩するなら岡山大学で」と地域の方から親しみをもってもらいたい。
近い将来、岡山大学が人、地域、教育、研究、あらゆる人の関心事についての「出会いの場」として、認知され、賑わいが生まれ、笑いが生まれ、楽しさがあふれ、人をひきつける魅力いっぱいのものとなり、岡山大学を介して、地域の人、教員、事務員、学生、卒業生たちの心が通い合い、幸せを感じることができれば、岡山大学は誰もが認める「学びの都」となるはずである。
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