岡山政経塾 チーム21
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◆岡山市中環状線エリアの現状と
活性化に向けた取り組み◆
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「8.交通整備からのまちづくり」
7期生 小河原 房恵
《目 次》
1.岡山の位置
2.交通サービスの整備によるまちづくり
3.岡山市の交通事情
4.提案
5.環境への取り組み
6.スローライフの勧め
7.理想的な交通サービスの提案
8.路面電車の活用
9.自転車の活用
10.タクシー・バスとの共存に向けて
11.将来、岡山市の国際都市への発展に向けて
海外へ行くことが簡単になった今日、世界中の国々が観光客、ビジネスの呼び込みに力を入れている。私の考える日本の魅力は、独特の日本文化と歴史である。特に、「日本人のおもてなし精神」は世界のどの国にもない素晴らしい日本の美学だと思う。日本の文化や歴史、日本の美学は、「目で見ることができるもの」と、「目に見えないもの」がある。目に見えるものとは、建築物、家電、伝統芸能などの実際に存在する物であるのに対して、目に見えないものとは、わび・さび、和み、静、などと内面からの湧き出る感情や心情、空気感といった心で感じるものである。世界中で観光産業やビジネスが盛んに行われている今日、訪問先の一つとしての「NIPPON」は、訪れる価値のある国である。世界中から日本へ、岡山へ人を運びたいと思いこの論文を書いている。本論文では運ぶ手段に着目し論じる。
1.岡山の位置
日本の中の岡山。岡山は、中国四国地区の拠点都市としての役割を持ち、多くの人が岡山を通って移動をしている。2007(平成19)年、岡山市は「岡山市都市ビジョン」を策定し、その中で岡山を「中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市」と位置づけている。この中四国をつなぐ総合福祉の拠点都市とは、「福祉と医療と教育、そして交通の要衝という岡山の持つ特性をいかした都市づくりを進め、先進的な福祉、高度な医療、伝統と厚みのある教育、これを総合化し、さらに力を高め、中四国、さらに西日本圏域の発展とそこに住む人々との幸せに貢献する都市を創造します。」と、説明をしている。
中四国をつなぐ岡山の位置と、交通事情を確認しよう。下の図は、岡山市経済局観光課が作成しているホームページおかやま観光物語(http://www.city.okayama.jp/kankou/benri/access/index.html)で見ることができる。

2.交通サービスの整備によるまちづくり
まちづくりの成果は、【ひと】【モノ】【金】の流れを作ることである。交通サービスの整備をすることで、【ひと】の流れを作ることができる。良いとこには人が集まる。観光客、移住者、既存の住民、人の移動が自由化した現在、人を運ぶ手段としての乗り物のあり方を考えたい。交通サービスの拡充をすることで、人が移動し、良いところと判断されれば、人が流れてくるだろう。もちろん、良いところと判断されるためには、岡山の文化、歴史、特産物など、訪れたいと思ってもらえるような中身が重要になる。本論文では、人を運ぶ手段としての交通サービスに着目し、人が動くしくみを考えたい。
3.岡山市の交通事情
3−1 岡山市内の移動方法
岡山市内の交通事情を説明する。岡山市内の交通の手段は、電車・路面電車・バス・タクシー・自家用車・バイク・自転車・徒歩となる。民間の交通機関が十分に発展していることが特徴である。以下、岡山市経済観光課のホームページを参考に表にまとめてみた。
種類 |
会社 |
方面 |
電車 |
JR |
山陽線(倉敷・福山方面)(和気・姫路方面)・伯備線(備中高梁・新見・米子方面)・赤穂線(西大寺・播州赤穂方面)・瀬戸大橋線(茶屋町・児島・四国方面)・宇野線(茶屋町・宇野方面)・吉備線(備中高松・総社方面)・津山線(福渡・津山方面) |
新幹線 |
JR |
山陽新幹線(広島・博多方面)・東海道・山陽新幹線(新大阪・東京方面) |
路面電車 |
岡山電気軌道 |
岡山電気軌道 |
バス |
中鉄バス |
岡山空港・吉備路・足守・最上稲荷 |
バス |
両備バス |
西大寺・牛窓・瀬戸内海国立公園・光南台・玉野 |
バス |
下電バス |
妹尾・興除・倉敷市児島・鷲羽山 |
バス |
中国JRバス |
中庄・清心学園 |
バス |
宇野バス |
上道小鳥の森・備前焼の里・湯郷 |
バス |
備北バス |
備北バス |
バス |
岡山空港バス |
岡山空港―岡山駅 |
タクシー |
両備タクシー・平和タクシー・岡山タクシー・東和タクシー・下電タクシー |
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今年チーム21が行ったアンケートの結果、市内での主な交通手段は、以下の通りになった。車が圧倒的に多いのが分かる。

3−2 車社会の岡山
岡山へ転勤した方からこのような言葉をよく聞くのは私だけであろうか。「岡山は車がないと住めない。」岡山県警察ホームページには、岡山県民の3人に2人は運転免許を有していると載っている。
岡山県警のHP(http://www.pref.okayama.jp/kenkei/toukei.htm)に岡山県の市町村別運転免許保有者状況(平成21年12月末)の表が掲載されているので岡山市の数値をまとめた。
若年者 (16〜24歳) |
男 |
19,866 |
女 |
18,579 |
合計 |
38,445 |
その他 (25〜64歳) |
男 |
177,010 |
女 |
169,016 |
合計 |
346,026 |
高齢者 (65歳以上) |
男 |
47,166 |
女 |
22.216 |
合計 |
69,382 |
合計 |
男 |
244,042 |
女 |
209,811 |
合計 |
453,853 |
3−3 岡山市の取り組み
岡山市が策定した「岡山市都市ビジョン」では、コンパクト市街地と田園の共生プロジェクトの中で、都市の利便性と自然の豊かさのどちらも楽しめる都市を作る計画がある。
4.提案
車社会には渋滞や環境の問題がある。私が目指しているより充実した交通サービスの提案は、(1)適切な移動手段の選択、(2)より改善された交通手段の模索、が根本にある。車での移動が必要な人には車を利用してもらいたいし、車を利用しなくても移動できる距離や場所であるならば、他の移動手段を選択して欲しい。その理由は、以下の二点である。
1 環境への取り組み
2 スローライフの勧め
5.環境への取り組み
環境への配慮は今や当たり前の世の中である。鳩山由紀夫首相は就任直後、国連の会議で温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減すると発言している。
岡山市内でも車から排出されるCO2の削減に向けた交通のあり方を考えるべきである。実際には、自動車業界の努力もあり、車からのCO2の排出量は2001年をピークに減少傾向にある。下の図は、運輸部門での排出量の推移をグラフにしたものであり、社団法人自動車工業会のホームページでも確認できる。
(http://www.jama.or.jp/eco/earth/graph_04.html)

車を使わなくても良い環境を作れば、車の使用が減少すると考え、1路面電車の拡充、2バイクシェアリングの導入、3歩行の推奨を挙げたい。
5−1 路面電車
路面電車は自動車に比べて環境負荷が少ない。独立行政法人環境研究所のホームページ上で発表されている研究ノート、路面電車の環境負荷(松橋 啓介著)では、岡山電気軌道の路面電車のデーターを用いてエネルギー消費量を算出している。以下のレポートの内容を抜粋した。
「岡山電気軌道の路線延伸計画をケーススタディの対象に選び,産業連関表を用いて計算した金額当たりの二酸化炭素排出量に見積金額を乗じる方法を用いて,交通路と車両からのCO2?排出量を推計した。路面電車車両の購入価格は一般の動力付き鉄道車両の約2倍相当と割高なため,金額当たりの二酸化炭素排出量を乗じる推計方法では見積もりが過剰になる恐れがある。路面電車は一両当たりの重量が比較的軽いことおよび運転席等の装備が多いことを考慮して,ここでは暫定的に一般の動力付き鉄道車両一両と同等の価格を当てはめて計算した、日本全国の乗用車について分析した数値と比較すると,ライフサイクルCO2(LCCO2)排出量は51%になる。同様に,ライフサイクルNOx(LCNOx)排出量を求めると,路面電車からの排出量は乗用車のそれの32%である。路面電車区間を代替するためだけに自動車を使っている場合を想定すると,路面電車導入による改善幅はより大きくなる。」と述べている。
また、世界各国でも郊外型の都市からコンパクトシティへの移行、路面電車の拡充が行われている。お隣の香港(トラムと呼ばれる)、ヨーロッパ(ドイツなどが良く取り上げられる。) 、アメリカ (サンフランシスコ) など、多くの国で路面電車は導入されており、街のシンボルとして観光関連の本でも紹介されているケースが多いように感じる。

香港トラム(http://www5f.biglobe.ne.jp/~hongkong/tram.html)より抜粋

ドイツの路面電車(http://www.d-b.ne.jp/goinhome/oldcountry_waltz/より抜粋)

サンフランシスコの路面電車(http://ja.wikipedia.org/wiki/より抜粋)

日本最大の路面電車 広島電鉄(http://www.uraken.net/rail/travel-urabe10.htmlより抜粋)
さらに路面電車を強化することにより、岡山市の国際化にも寄与することに繋がる。岡山市を訪れる者にとって、交通手段は重要な要素となる。有名な観光都市の移動手段を思い出してほしい。訪れた先での交通手段を選ぶ際の基準は、以下の四点ではないだろうか。
(1) 手軽な価格
(2) 簡単
(3) 風景が楽しめる
(4) 時間に正確
路面電車は、歩くよりも時間が短縮でき、バスよりも時間に正確で、新幹線よりも気軽に乗れ、風景も楽しめるというすべての条件が整うのである。この条件こそがまさに岡山市が国際化し、世界中から人が集まってくる中で交通の基礎となるのではないだろうか。
6.スローライフの勧め
岡山市中環状エリアにスローライフを取り入れたい。スローライフとは、最近良くメディアで取り上げられ、なんとなく聞いたことがあるという人が多いのではないだろうか。その定義ははっきりとしていない。「健康と地球環境にやさしい、こころ豊かな暮らし方」と定義しているホームページを見たときに良い言葉だと思った。私はスローライフとは、時間に追われぎすぎすした生活環境から少しの間離れ、空の青、木々の緑、空気に触れ、川の流れる音を聞き、心を静めることにより、心にゆとりを取り戻すことと考える。今ある生活リズムや環境を変えることは簡単ではない。そこで、もし岡山市中環状エリアにスローライフを楽しむしかけがあったらどれだけ多くの人がリフレッシュできるのかと考える。チーム21の他の章でも紹介しているが、文化エリアや後楽園周辺、西川緑地公園などを歩く、旭川から瀬戸へ向けて船に乗り風景を楽しむなど、時間を忘れ、街並みを見て楽しむということもスローライフの一つではないだろうか。
なぜそこまでして街にスローライフを埋め込むことを提唱するかというと、以下の二つのデーターを見たからである。国民健康・栄養調査結果と自殺者数である。
6−1 国民健康・栄養調査
少し古いデーターになるが、財団法人日本統計協会が発表した統計でみる日本2008で紹介されていたことを抜粋する。「国民健康・栄養調査結果によると40〜74歳における該当者は、有病者数は約940万年、予備軍者数は1020万人、合わせて約1960万人だと推定されており、男性人口の5割、女性人口の2割に相当する」と日本人の健康状態の深刻さを紹介している。
6−2 自殺者数
少し大げさにはなるが、次の数字を見てほしい。警察庁が発表している平成20年中における自殺者の合計は、32249人である。原因・動機別を下の表にまとめた。
原因・動機別 |
平成20年 人数 |
健康問題 |
15,153 |
経済・生活問題 |
7,404 |
家庭問題 |
3,912 |
勤務問題 |
2,412 |
学校問題 |
387 |
その他 |
1,538 |
6−3 西川緑道公園の歩行者専用道路の提案
西川緑道公園を歩行者専用道路にする提案をしたい。他の章でくわしく述べているのでぜひ参考にしてほしい。たとえば、国民健康保険・栄養調査結果で日本人の健康状況の悲惨さ対策として、西側を歩行者専用にすれば気持ちよく歩くスペースの確保ができる。そして、おしゃれなカフェやお店が並んでいたならば、わざわざジムに通ったり、運動公園まで出る元気がなくても、買い物ついで、ちょっとこじゃれた街並みを歩く軽い気持ちで、体を動かすきっかけをつかむことができるのではないだろうか。また、西川でキャンドルナイトを6年間行っているNPO法人タブラ・ラサがある。キャンドルナイトを通じて、電気を消し自然を思いやり、スローライフな時間を楽しむ空間を演出している。
(http://ayaphoto.p1.bindsite.jp/temp.html#2009.5.3より抜粋)
キャンドルだけはなく、幅を広げてさまざまな企画も邪魔にならない程度で行うことも可能になるのではないかと期待できる。例えば、作品(現代アート・美術品・詩)の展示、フリーマーケットの開催や子供のための青空教室など。
7.理想的な交通サービスの提案
既存の公共交通機関との助けあい、より理想的な交通サービスを提案する。
1 路面電車の活用方法(環状化と延伸化・軌道敷緑化)
2 自転車の活用方法(バイクシェアリング・その他)
3 タクシー・バスの共存へ向けて
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