岡山政経塾 チーム21

 

◆岡山市中環状線エリアの現状と
活性化に向けた取り組み◆




「8.交通整備からのまちづくり」


            7期生 小河原 房恵     
《目  次》

1.岡山の位置
2.交通サービスの整備によるまちづくり
3.岡山市の交通事情
4.提案
5.環境への取り組み
6.スローライフの勧め
7.理想的な交通サービスの提案
8.路面電車の活用
9.自転車の活用
10.タクシー・バスとの共存に向けて
11.将来、岡山市の国際都市への発展に向けて





 8.路面電車の活用

 現在路面電車は岡山電気軌道株式会社によって運行されている。岡山電気軌道株式会社のホームページ上で、現在の路線が紹介されている。
(http://www.okayama-kido.co.jp/tramway/rosen.html)


 昨年のチーム21が行ったアンケート結果からは路面電車に対し、市民は「利用する理由がない」という回答もあった。その多くは、路面電車が岡山駅構内に入らないという立地条件に不便さを感じたことからの回答であった。より便利になるよう、路面電車の路線を提案する。

8−1 路面電車の環状化
 
 路面電車の環状化延伸化は1994年岡山商工会議所が発表したのが始まりである。現在の路面電車の路線を活用し、新しく線路を引き環状化を目指す。昨年のチーム21が行ったアンケート結果ではおよそ70%の人々が路面電車の環状化を望む回答が得られた。どの地点をつなぎ路面電車の環状化するが重要になる。路面電車を誰に利用してもらいたいか、だれが必要としているのかを考えると、以下の2つが挙げられる。

  1 地域住民のため
  2 観光客のため

 そこで、学生の通学(岡山大学・ノートルダム女子大学・岡山理科大学・岡山商科大学・山陽女子大学・山陽女子高校・就実高校)・社会人の通勤(岡山市役所・岡山県庁・その周辺地域)・イベント(総合グラウンドでの試合)・ショッピングエリア・文化エリア(特に県立美術館周辺)、これらの点を線で結んだ路面電車の環状化が必要である。

8−2 路面電車の延伸化

 今回は路面電車の延伸化について考える。チーム21内でも、路面電車の延伸化の賛否は分かれているが、私は、(1)問屋町、(2)岡山空港、のさらなる発展の可能性を感じており、路面電車を延伸化することによりこの二点もつなぎたいと考える。

8−2−1 問屋町の将来性

 問屋町は今や若者のメッカ的存在である。先日、県外から岡山を訪れた私の友人から、問屋町へ行ったのだが、大変おしゃれな街でまた行きたいと思うと言われた。さらに、海外から日本へ来た友人も、問屋町はとってもおしゃれなダウンタウンだと思うと言われ改めて問屋町を眺めると、おしゃれなカフェに雑貨のお店、少し単価は高いが洋服も買える。今年のチーム21が行ったアンケートで、問屋町を利用するか、利用する方には移動方法を、利用しない方にはその理由を聞いた。
 以下は、年齢別にみた問屋町の利用状況を表した表である。
利用状況 総計 10代 20代 30代 40代 50代 60代〜
(1)利用する  42.2%  33.3%  65.7%  50.4%  29.7%  22.8%  19.2%
(2)利用しない 57.8% 66.7% 34.3% 49.6% 70.3% 77.2% 80.8%
交通手段 総計 10代 20代 30代 40代 50代 60代〜
(1)車 87.9% 55.6% 89.7% 90.8% 84.8% 92.6% 81.8%
(2)JR 2.8% 0.0% 3.1% 1.5% 4.3% 3.7% 9.1%
(3)自転車 6.8% 22.2% 4.1% 6.9% 8.7% 3.7% 0.0%
(4)徒歩 1.9% 11.1% 2.1% 0.8% 2.2% 0.0% 9.1%
(5)バス 0.6% 11.1% 1.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%

 多くの20-30代の方が非常に問屋町に興味をしめしていることが分かる。問屋町を次世代の観光先、ショッピング拠点となることを見据え、問屋町までの路面電車の延伸を提案する。また問屋町を利用しない理由に用事がないからという意見が多いのだが、遠いから、交通手段がないからと回答した人も見逃せない。交通サービスが整えば将来の顧客化が期待できる。
 
なぜ問屋町を
利用しないのか
総計 10代 20代 30代 40代 50代 60代〜
(1)遠い  23.2%  35.3%  23.1%  23.6%  19.8%  18.6%  33.3%
(2)用事がない 61.9% 41.2% 59.6% 62.7% 65.6% 64.0% 60.0%
(3)交通手段がない 7.1% 11.8% 11.5% 8.2% 4.2% 8.1% 2.2%
(4)その他 7.8% 11.8% 5.8% 5.5% 10.4% 9.3% 4.4%

8−2−2 岡山空港の将来性

 岡山空港は、今後の岡山の発展にかかせない場所である。岡山空港は、3,000m滑走路を有し、将来的なの規模拡大にも十分対応可能な環境である。
 
 現在、岡山空港は国内定期便(東京・札幌・鹿児島・沖縄)と、国際定期便(ソウル・上海・大連・北京・グアム)があり全9路線の定期便がある。岡山空港が発表している平成20年度岡山空港利用実績によると、9路線及びチャーター便利用者数は143万3千905人である。国内路線の利用が減り、前年度比では減少しているが、海外路線は利用者の増加や増便などで大きな落ち込はみられなかった。
 
 需要と供給のバランスが取れた場合、岡山空港は3,000m滑走路を有するため欧米路線開設、貨物飛行機の発着陸も可能である。岡山県企画振興部航空企画推進課に岡山空港の将来性を期待し、欧米路線開設の可能性を質問したところ、「欧米への路線開設については、それを支えます航空需要や航空会社の経営戦略などの課題もありまして、現時点では困難なものと考えております。今後とも旅行会社や貨物取扱業者等に3,000m滑走路を有する岡山空港の優位性や利便性を強くアピールいたしまして、旅客や貨物の長距離チャーター便の運航促進に向け、積極的に取り組んでまいります。」とコメントを頂いた。
 
 需要と供給のバランスが整えば、今後のさらなる可能性があることを感じる一方で、問題は、どれだけの人がこれから岡山空港を利用するかである。実際、海外旅行には関西国際空港を利用する人が多い。以下は岡山駅から関西空港までの主な交通手段をまとめた表である。

移動手段 所要時間 料金
リムジンバス(両備バスの場合) 3時間半 片道4500円
往復7500円
電車(新幹線とはるか利用の場合) 2時間前後 片道7500円
(乗車券:4520円,
特急券等:2980円)

 関西空港までの費用と時間、そして関西空港で手続きの時間を考えると、岡山空港から世界へ飛び立つことができたらどんなに便利であろうか。

 現在岡山駅から岡山空港までの交通手段は、自家用車かリムジンバスかタクシーである。岡山駅から空港まではおよそ30分といわれるが、交通渋滞に巻き込まれるとかなり時間がかかる。筆者は岡山空港まで路面電車を延伸化するべきだと考えているが、チーム21内でも空港まで路面電車を利用する価値が薄いと考える人が多い。その理由は、1距離、2路面電車の速度が遅いとの指摘であった。
 岡山駅から空港までの移動手段と時間を表した図である。岡山空港のHP(http://www.okayama-airport.org/access/)で確認できる。
 
 岡山空港は、岡山市中心部から約18キロの位置にある。最新の路面電車のモモは、時速60から70qで走ることができる。単純に距離÷速さ=時間で計算をすると、18km÷60km/時=0.3時間 およそ20分の計算になる。
 
 電車・自動車・バスとさまざまな交通機関がある中で、飛行機を選択する理由は、移動時間の短縮が一番の理由ではないか。それだけ時間にこだわるのであれば、岡山駅から空港までも正確にかつ効率的に移動できることは非常に効果的である。
 
 また、岡山空港は、駐車場が無料という便利さがあり人気の空港であった。遠くは、四国地方、福山方面からも岡山空港を利用する人は多い。しかし、岡山空港の駐車場を有料化する動きがみられる。そこで、駐車場の有料化に関して、岡山県企画振興部航空企画推進課へ質問をした結果を表にまとめた。
 
質問内容 返答
駐車場有料化の開始時期 有料化の時期は、条例公布の日(平成22年3月17日)から1年6か月を超えない範囲内とはされていますが、具体的な期日は決まっていません。
なお、岡山空港には第1から第4までの駐車場があり、そのうち第1駐車場のみを有料化することが決定しています。第1駐車場の有料化後も、全国空港の中で最大規模の約2,900台の無料駐車場が存続します。
有料化のメリット (1)料金を支払ってでも、ターミナルビルの近くに駐車を希望する利用者にサービスを提供できる。
(2)県の歳入確保(歳出削減)となる。
(3)公共交通機関を利用される方との公平性が確保できる。
(4)公共交通機関の利用促進など、環境保全につながる。
有料化のデメリット 岡山空港駐車場のうち、一部の有料化ではあるが、
(1)空港利用者の減少につながる懸念がある。
(2)空港のすべての駐車場が有料化になると勘違いされる。

 上記のデメリットで挙げられている(1)空港利用者の減少につながる懸念があるとのことだが、路面電車で岡山駅と空港をつなぐことにより、駐車場を有料化した反動での利用者の減少を食い止められるのではないだろうか。
 
 さらに、岡山空港の少し手前には、国立病院がある。国立病院にも下車できれば非常に便利になる。一方で考えないといけないのは、リムジンバスを運営する中鉄バスと岡電バスからの理解である。

8−3 軌道敷緑化の導入

 路面電車に関して最後に軌道敷緑化の導入を提案する。すでに鹿児島市交通局では、平成18年度から本格的に市電軌道敷の緑化整備が行われており、期待される整備効果として、(1)ヒートアイランド現象の緩和(路面温度の抑制)(2)騒音の低減(3)まちのうるおいの創出や景観の向上を挙げている。(1)(2)の成果を、2008年5月に鹿児島市が発表した「鹿児島市電軌道敷緑化整備事業-整備効果と今後の計画-」の中で、以下のように発表している。(1)に関して、「夏の晴天時の地表面の温度は、緑化した軌道敷内で17〜18度低くなり、緑化した中央分離帯で24度低くなった。」(2)に関して、「電車通過時の最大の騒音レベルが、軌道敷緑化した地点で4dB小さくなった。4dB軽減とは、今まで軌道から20m離れた地点で聞こえていた音が、8mまで近寄らないと聞こえないほど低減したことに相当。電車による1日平均の騒音レベルは、軌道敷緑化した地点で3dB小さくなった。3dB低減とは、今まで軌道から20m離れた地点で聞こえていた音が、10mまで近寄らないと聞こえないほど低減したことに相当。」(3)に関して、インターネット上に掲載されている写真で確認ができる。

 すでにヨーロッパでは軌道敷緑化を導入し、観光客にも人気のスポットとして地位を確立している。

ウイーンの軌道敷緑化(左)とプラハの軌道敷緑化(右)
(http://www.rail-green.jp/cyutouou.htmlより抜粋)

 一方、この事業にはコストがかかる。鹿児島市の事例では、総事業費が約5億2,600万円(平成21年3月末時点)、維持費が道路延長約3,870m(芝生面積14,800u)の年間管理費は2,800万円、芝生1uあたり1,900円の計算になる。また、鹿児島市では、この芝生を守るため、「芝刈り電車」と「散水電車」が2010年5月に世界で初めて導入している。

軌道敷緑化事業は整備費だけではなく維持費もかかるため、民間だけの力では限界がある。行政と民間との協力体制、さらには市民の街の美化意識と理解も必要になるだろう。







 9.自転車の活用
 
 今年のチーム21の行った「岡山市内での交通手段は何か」、についてのアンケート結果は以下の通りである。

・岡山市内における主な交通手段
選択肢内容 総計 10代 20代 30代 40代 50代 60代〜
(1)車  59.5%  13.0%  51.6%  70.4%  68.5%  58.8%  47.1%
(2)JR 5.6% 6.5% 5.3% 5.4% 6.1% 5.4% 5.9%
(3)自転車 12.7% 23.9% 17.4% 9.8% 10.5% 8.8% 17.6%
(4)徒歩 9.6% 21.7% 13.7% 5.7% 7.7% 10.8% 7.4%
(5)バス 7.6% 21.7% 6.8% 6.1% 4.4% 8.1% 13.2%
(6)路面電車 5.1% 13.0% 5.3% 2.7% 2.8% 8.1% 8.8%


 これからの環境問題を考えると自転車は非常によい交通手段であり、さらにスローライフの観点からも、自転車に乗ることで健康な体作りも実現できる。岡山市内の自転車の活用を考えると以下の点で検討が必要である。

   1 駐輪場の不足
   2 バイクシェアリングの利用
   3 サイクルトレインの利用


9−1 駐輪場不足

 岡山の市街地を自転車で移動するには、自転車の駐輪場を確保することが難しい。岡山駅周辺にある駐輪場を岡山市のホームページを参考にまとめた。
場所
岡山駅東口地下自転車等駐車場 岡山駅西口第2自転車等駐車場
岡山駅西口地下自転車駐車場 下石井高架下自転車等駐車場
岡山駅東口高架下第1自転車駐車場 岡山駅東口高架下第2自転車等駐車場
本町路上自転車駐車場 岡山駅西口自転車等駐車場
駅前町路上自転車等駐車場  

 上記にまとめたように駐輪場は整備されているが、利用者の数に間に合っていない。岡山市は今後の駐輪場の需給バランスをホームページ上で以下のようにまとめている。
 
・ 将来(平成22年)都心において、現在公共により整備されている自転車等駐車場が10%すべて利用されたと想定した場合、自転車等駐車場は将来において約8,300台が不足することが推定される。
・ 岡山駅東口周辺では、将来需要量としては、約7,900台の需要が推計され、将来において約2,700台の不足となる。
・ 岡山駅西口周辺では、将来需要量としては、約3,000台の需要が推計され、将来において約500台の不足となる。
・ 表町周辺では、将来需要量としては、約5,300台の需要が推計され、将来において約5,100台の不足となる。


9−2 バイクシェアリングの利用

バイクシェアリングのイメージ図

        (http://greenz.jp/2009/02/28/bixi/より抜粋)
        
 自転車を有効活用する手段としてバイクシェアリングがある。欧州では一般化しつつあるバイクシェアリングとは、事前に登録し会員となった者が、駅周辺に設置された専用の自転車を自由に使い、使用後は、専用の自転車置き場に自転車を返却する自転車サービスのことである。この根源にあるのは、自転車を「所有」から「使用へ」と定義付けることにより(1)環境問題への対策(2)放置自転車によるモラルの低下の改善策(3)自転車の有効活用が挙げられる。
 
 自転車は大変便利である反面、置き場所に困る。自転車を利用する時間の長さは平均して10分から15分といわれている。それ以外は、どこかで保管されているのである。その利用されていない時間に、他に必要な人が自転車を利用すれば、駐輪場の確保が難しい土地の問題も解決できる。この仕組みに早くから注目し導入したのが、練馬区である。練馬区の取り組みを紹介した非営利団体JFSのニュースレターの記事を抜粋して紹介する。

 「自転車が区民一人に1台の割合で普及している東京都練馬区では、自転車を電車やバスと同様に都市交通の1つである公共財として位置づけ、1992年よりレンタサイクル事業(ねりまタウンサイクル)が開始されました。
 
 ねりまタウンサイクルは1台の自転車を複数の人が使うことにより、自転車の有効利用と駅への自転車の乗り入れを抑制するもので、駅と自宅または通勤・通学先との交通として、現在、区内6駅で7つの施設、2,750台のレンタサイクルが供用されています。施設は立体機械式で統一規格の自転車を改造して収容しており、施設前面にある自転車の出入り口で登録カードを差し込むと、自転車が出てくるという仕組みになっています。
 
 1台の自転車を、駅まで来る人と駅から会社や学校などへ行く人の二人以上が使用することができ、2005年の稼働率は平均約80%でした。同時に、放置自転車台数減少にも効果があったと報告されており、交通不便地域などのバスに代わる交通手段として期待がかかっています。」

9−3 サイクルトレインの活用
 さらに将来を見据えて、自転車と路面電車の新たな共存の在り方も考えたい。サンフランシスコ・ベルリンでは、自転車を電車の中へ持ち込むことを認めている国もある(ベルリン地下鉄H型電車など)。

(http://eco.nikkei.co.jp/special/wired/article.aspx?id=MMECf3000022102009より抜粋)
 日本では原則自転車をそのままの形で持ち込むことは禁止されており、折りたたみカバーなどに収納すれば鉄道の中に持ち込むことは可能である。秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)では毎年2ヶ月間、自転車を電車に持ち込める「サイクルトレイン」の試験運行を行っている
・ 乗車客数はピーク時の3分の2程度に減り、自転車ユーザーを新たな客層として取り込むことを目的にはじめた。
・ 利用客の多くは30-40代後半。50-60代。
・ 2ヶ月間で自転車を持ち込む件数は179件。
・ 料金は通常通り。自転車の料金は無料。
・ およそ半分が買い物のため。田舎のため電車で市街地に買い物へ行く際に、市街地までは電車で、市街地での買い物は、自転車を利用するとのこと。
・ およそ半分は観光のため。観光客が市街地から離れた場所を観光する際に、目的地までは電車で行き、自然や街の風景を自転車で見て回るのに利用しているとのこと。
・ すべての駅では実施しておらず、バリアフリー対応の駅、区間のみ利用可。
・ もともと利用客が少ないため事故などは起きず、普段どおりの運行ができるとのこと。
 また、お話を伺った秩父鉄道の方へほかの会社でも自転車を電車の中に持ち込むことができるのか質問したところ、上信電鉄と上毛電気電鉄を紹介してくれた。さっそく、上毛電気電鉄のホームページを見ると「サイクルトレイン」の写真が掲載されていた。

(http://www15.wind.ne.jp/~joden/otokujoho/sub1.htmlより抜粋)




 10.タクシー・バスとの共存に向けて
 
10−1 水素を燃料にした小型バスの導入
 
 大型バスから水素を燃料にした小型バスの導入の提案をしたい。こちらは、2009年4月4日に産経ニュースのオンラインニュースで発表があった記事から抜粋した写真である。
(http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090404/biz0904040157007-n1.htm)


 2009年4月東京都市大学と日野自動車が開発に成功した水素を燃料として動く小型のバスである。ディーゼルバスと窒素燃料バスと比較すると、窒素酸化物の発生量は、窒素燃料バスにすることで90分の1に抑えることができ、二酸化炭素はほとんど発生しない。問題はコスト面であろう。

10−2 タクシーとバスの在り方について

 タクシーとバスの在り方について提案する。タクシーのメリットは、バスよりも高い料金を払ってでも自分のためだけに目的地まですばやく連れて行ってくれることである。一方バスは、バス停に所定の時間に待っていたら、目的地へ連れて行ってくれる。タクシーよりも安価である代わりに、時間の自由はきかず、乗車場所・目的地の自由もない。
 今や、高齢化社会といわれており、こうした公共交通機関やタクシーを利用したい人は多いだろうが、値段と便利さとの問題がある。特にバスは、公共交通機関であるため、不採算な路線でも公共性から国からの負担金を受け取り運行している。それは住民にとって生活する上で必要な足であるからである。時代の変化とともにバスの在り方も変化しても良いのではないだろうか。

岡山中環状エリアのバス新ルール
 ・利用客の数によってバスの大きさを変える
 ・担当エリアを決める。担当エリアはできるだけ狭く。
 ・エリア内にある大きなポイントとなる建物、駅の出発時刻だけ決めておく。
 ・途中乗車する人は、電話をして概算の到着時刻を教えてもらう。
 ・固定のバス亭はなく、小型バスが通る道ぞいで自由に乗り降りができる。
 ・バスが通るエリア内で目的地を指定したり、エリア内にあるJRの駅、路面電車の駅、岡山駅へ行くことができる。
・遠くへ行く人は、いったん最寄りの電車の駅、もしくは岡山駅で目的地へ向かうバス、その他の乗り物に乗り換える。

 エリア内のタクシーの相乗り、もしくはシャトルバスのようイメージである。タクシーよりも安価な代わりに、到着時刻や出発時刻があいまいになり、時間の正確性はなくなる。乗りたい方で到着時刻が気になる方は、電話で問い合わせるため、電話対応の手間とコストがかかる。時間の正確性を求めるかたは、タクシーを利用するという区分けになる。しかし、誰も乗っていないバスが走る風景、バス停まで遠いので不便という声は少なくなるであろう。





 11.将来、岡山市の国際都市への発展に向けて

 交通サービスを整えることにより、人が移動しやすい環境ができる。また、環境問題、スローライフといった様々な現代の抱える問題もまちづくりをする中で少し工夫をすれば取り入れることが可能である。
 
 既存にあるバス・タクシー・自家用車・路面電車・電車・自転車・歩行と、路面電車を基盤とする交通サービスは互いに助け合って成り立たなくてはならない。岡山市内の中環状エリア内は、自動車の利用を極力押さえ、路面電車・自転車・徒歩を利用するほうが好ましいであろう。また、将来性を考え、路面電車を問屋町・岡山空港まで延伸させるのも岡山市の集客力に寄与するのではないだろうか。

 また、将来に向け国際都市へ発展を目指すための提案として、見本市の導入案がある。見本市がもし岡山市北長瀬の公園予定地にできれば、世界中から観光客、ビジネス客が訪れることになる。以下見本市の可能性を述べる。


11−1 見本市の導入
    
 見本市とは、各種の見本商品を陳列,展観し,商談を整える臨時の市場と説明されることが多い。岡山市の北長瀬駅周辺の公園予定地に見本市を開催する施設を建設する案があるが、賛成である。その理由は、大きな経済効果が期待できるからである。


11−2 見本市を岡山で開催するメリット
  
 見本市の経済効果を、2009年10月13日、岡山経済同友会10月定例幹事会兼特別講演会で、リード エグゼビジョン ジャパン(株)代表取締役社長の石積 忠夫氏を講師に「めざせ岡山! 見本市都市へ」という講演がありその内容をまとめた岡山経済同友会が平成21年11月30日に発行した「おかやま経済同友」とジェトロのホームページを参考に説明する。
 
 見本市の会場としては2から2万平米の敷地が適切とされ、その作りは「安くて巨大な倉庫」のように、「雨露しのげればいい」程度の建物でよいとされる。岡山市で見本市を開催することにより、「2020年には県外から年間20万人、ロシア、中国、韓国など海外からは年間2万人のビジネスマンを岡山に集客」することが可能になると石積氏は考えている。現在岡山では北長瀬周辺の公園建設予定地を利用し見本市の建設の可能性を考える人もいる。おおいに賛成したい。

 
11−3 デメリット

 (1) 出展者数・来客者数が景気に左右されやすい
 (2) 世界中の見本市会場と競合関係になる
 (3) 見本市主催者側の誘致努力


11−4 実例

(1)世界で見本市が行われているが、ジェトロのホームページを参考に表にまとめてみた。
  開催年 2005年 2006年 2007年 2009年
香港・中国 開催件数  3,800 4,320 5,400 不明
北米 4,889 5,000 5,036 4,927


(2)日本国内で開催された見本市の効果(リードエグゼビジョンジャパン主催の事例を取り上げる)
事例 開催年 出展会社 売買額 雇用 出展社の消費金額 来場者の消費金額
国際宝飾展 2009 世界36カ国から1509社 約140億円(推定) 3624名 31.5億円 45.5億円


国際宝飾展の様子(http://www.ijt.jp/より抜粋)

 国際カーエレクトロニクス技術展の様子
(http://www.car-ele.jp/jp/2010/photo.phtml)



11−5 国際都市に対応した交通サービス
 
 将来に向け、岡山市が国際都市に発展し世界中から【ヒト】が集まってきたとき、移動手段となる「交通サービス」は非常に重要な要素となる。より移動しやすい手段、環境問題への取り組み、スローライフの取り組み等、本論文ではあらゆる方向から可能性を考えてきた。

 将来のあらゆる可能性を考え、(1)環境問題に対応した(2)人にもやさしい(スローライフ)交通サービスの在り方を考えなくてはならない。そのために私は路面電車の有効活用を考える。これから発展するであろう場所(問屋町・岡山空港)への路面電車の延伸化、大学生・高校生・通勤といった方のための路面電車の環状化も提案し岡山市の発展を期待したい。さらに、軌道敷緑化により環境問題や市民の美化意識の向上、緑を街に取り入れることでの心の安らぎの場としての路面電車の新たな一面にも注目した。また、既存の公共交通サービスのとの協力や水素バスの導入、サイクルトレイン、バイクシェアリングの導入も提案したい。
 
 岡山市民の生活のための利便性と、訪れた方の観光を楽しむための娯楽性を追求した交通サービスの在り方を考え、将来世界中から訪れた人に岡山を堪能してもらいたい。