岡山政経塾 チーム21

 

◆◆医療・福祉分科会◆◆


3.多様性と先進性に富む岡山県の医療・福祉の現状(現在)
 D) 岡山県の愛育委員について


       8期生 濱本 大輔     

1.愛育委員とは

 平成22年4月20日、明治記念館において、総裁三笠宮妃殿下のご臨席のもと、愛育班員等530人の参加を得て第42回愛育班員全国大会が開催された。そして岡山県愛育委員連合会が総裁表彰を受賞した。


 愛育班活動の歴史は長く平成22年で74年を迎える。社会福祉法人恩賜財団母子愛育会を本会に愛育班の支部組織として全国に7支部ある。その7支部とは、岡山県愛育委員連合会、秋田県愛育組織連絡会、大分県愛育会、香川県母子愛育連合会、埼玉県母子愛育会、兵庫県愛育連合会、山梨県愛育連合会である。7支部の中でも、支部組織のホームページを有しているのは岡山県愛育委員連合会だけである。
 愛育委員は、地区の中核として母子保健を基に生涯にわたる健康づくりの夢と希望にあふれる社会をつくることを任務とし、母子保健を中心とした公衆衛生の向上を図るため自主的につくられた地域組織である。組織構成は、岡山県愛育委員連合会のもとに市町村の各愛育委員会があり、さらに地域ごとに委員会を構成している。例えば、岡山市だけで6地域98地区に分かれている。
 岡山県愛育委員連合会は、多くの方が整然とボランティア活動をしている団体として、岡山県が全国に誇れる組織と言える。




2.愛育委員の歴史
 

 母子保健活動は、明治時代に貧困家庭の子どもや孤児への救貧的慈善事業として始まり、大正時代になると、公衆衛生面から助産婦や乳幼児の健康相談事業が行われた。当時の小児死亡率は高く、その実態の把握と対策を推進するため、大正5年にわが国は保健衛生調査会を設置した。その全国調査によると乳児死亡率は出生1,000に対して170という劣悪な状況であった。そのため、主要都市に小児保健所の設置が進められた。
 昭和8年、皇太子殿下(後の今上天皇)がご誕生になり、翌9年、天皇陛下から「わが国の児童と母性の教化と養護について考えるように」と御沙汰と御下賜金があり、同3月に恩賜財団愛育会が創立され、当時ほとんど顧みられない状態にあった母子の保健と福祉のための事業を実施することとなった。
 恩賜財団愛育会は、昭和11年から村ぐるみで乳児死亡率を低下させるため全国に愛育村を指定し、岡山県では、昭和15年に邑久村(現瀬戸内市)が最初に指定され、昭和19年までに御津郡野谷村(後の岡山市津高)、赤磐郡鳥取上村(後の赤坂町、現赤磐市)、真庭郡河内村(後の落合町、現真庭市)が指定を受け、県下に愛育班活動が広がることとなる。
 戦後、母子保健対策が進められるようになったものの、食糧難による栄養失調や結核等の感染症疾患の多発、急激な出生数の増加、生活の困窮など諸問題が山積みの状況であり、母子保健を進めていく上で深刻な時代であった。
 このような状況の中で、岡山県の母子保健活動は、保健師等の献身的な活動が行われていたが、保健師の数も少なく、活動にも限界があり、岡山県下全体に母子保健活動が行き届かない面もあり、岡山県では、行政と連携し地域と密着した母子保健活動を推進するボランティアを強く求める声と、地域の婦人達の「赤ちゃんをなんとか守らなければならない」という強い思いが重なって、昭和25年に愛育委員設置要領が岡山県衛生部より示され、保健所での愛育委員設置に向けての活動が始まった。
 昭和25年には真庭郡河内村(後の落合町、現真庭市)、湯原町(現真庭市)に母子衛星の向上を目指した愛育委員会が誕生し、その後、岡山県下全域に急速に波及し、昭和30年8月18日に約6,000人の委員により現在の岡山県愛育委員連合会が結成された。



3.主な活動
 
 愛育委員の活動目的は、健康増進にある。その手段として、自主的活動および行政への協力活動がある。

 @ 赤ちゃん訪問
  子どもの健やかな成長をお祝いするとともに、これからのお母さんが安心して子育てができるよう地域の愛育委員を知らせたり、育児に関する情報提供をしたりするために、赤ちゃんの生まれた各家庭を訪問している。
  岡山県内でも核家族化が進んでいるため、子育てに不安や分からないことがあるときに、「子育てはあなた一人ではないですよ、見守っていますよ」というメッセージが伝えることを目的としている。

 A 親子交流会
  親子に出会いと交流の場を提供するために、各地域で親子交流会を開催している。愛育委員は、楽しく参加できるよう声をかけたり、お母さん同士がゆっくり話しが出来るように子守を引き受けたりしている。親子交流会を通して、地域での仲間作りの輪、子育て支援の輪が広がることを目的としている。

 B 生活習慣病予防の推進
  生活習慣病予防の必要性や早期発見・早期治療のためには健診が重要であることを伝え、受けてもらうよう訪問をしている。

 C 禁煙の推進
 小さい頃からタバコの害を知ってもらい、タバコを吸わない世代づくりを目指している。その一環として、保育園に出向いて、タバコの害の話しなどを行っている。
 昭和40年には大阪鉄道管理局へ授乳のための禁煙車輌設置について申し入れを行い、昭和53年には、新幹線のグリーン車が禁煙授乳車輌として設置されることへの一役を担った。


 D 感染症予防のための普及啓発
  結核やO-157等の感染症予防のチラシを各家庭に配布し、注意を呼びかけている。また、結核予防に関する活動資金援助や普及啓発のために実施する複十時シール募金運動に協力している。




■参考文献
 
・岡山県『健康おかやま21』平成18年3月
・岡山県愛育委員連合会『愛育委員活動テキスト 平成21年度版』2009年
・岡山県愛育委員連合会
・岡山県がん患者支援情報提供サイト
・社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会
・社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会『愛育32』2010年10月