岡山政経塾 チーム21

 

◆◆医療・福祉分科会◆◆


3.多様性と先進性に富む岡山県の医療・福祉の現状(現在)
 G) “アクセスのしやすさ”が発展の鍵 〜高齢者福祉の現状〜

       8期生 塩澤 勝利      

 岡山県も高齢化は進行している。
 岡山県では、総じて、全国平均よりも高い充実度で、介護サービスの整備を進めてきている。但し、医療に南北較差があるのと同様、この領域では“アクセスのしやすさ”の点の南北較差の傾向が存在する。


(1)岡山県の高齢化の現状

 昭和45年以来、日本全体の高齢化と同じスピードで、また、日本全体より高い数値で推移している。

データ出典:政府統計の総合窓口HP




(2)県全体では、高齢化に合わせ、サービスの整備が進む
 
 2000年の介護保険スタート以来、(1)に述べる現状を踏まえ、県全体では、各種サービスの整備は積極的に推進してきた。また、医療施設間の連携による治療―社会復帰の仕組みや「公」以外の主体による活動も充実している。
 県全体で「安心」が整備されてきていると言える。
 
 @介護保険施設の整備状況推移
 下のデータは、2000年と2008年の老人福祉施設、老人保健施設の定員率(定員÷65歳以上人口)の状況である。日本全体の状況を100と置くと、日本全体の中でも、岡山県は、先進的に整備は進んできたと言える。


                データ出典:政府統計の総合窓口HP
   
 A訪問系サービスの整備状況推移
 下のデータは、65歳以上人口÷訪問系サービス事業所(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護の3者で累計)の数の推移である。65歳以上の人全員がサービスを希望したと仮定して、1事業所で受け入れるべき人数を示している。少ないほどサービスが行き届く計算となる。日本全体の中でも、岡山県は、少ない数値となっており、先進的に整備は進んできたと言える。

            データ出典:政府統計の総合窓口HP

 B通所系サービスの整備状況推移
 下のデータは、Aと同じ計算を、通所系サービス事業所(通所介護、通所リハビリの2者で累計)で行った結果である。これもAに同じく、日本全体の中でも、岡山県は、少ない数値となっており、先進的に整備は進んできたと言える。

        データ出典:政府統計の総合窓口HP
   
 C短期入所系サービスの整備状況推移
 下のデータは、Aと同じ計算を、短期入所系サービス事業所(短期入所生活介護、短期入所療養介護の2者で累計)で行った結果である。この点では、岡山県は、高齢化の進展に整備が追いつかなくなりつつあるが、それでも、日本全体に比して、整備されていると言える。

        データ出典:政府統計の総合窓口HP

 D医療施設、福祉施設間の連携による治療―社会復帰の取り組み
 県内では医療施設、福祉施設が連携をし、治療、そして、社会復帰する取り組みがなされている。以下の2例のように、高齢化を見据えたセーフティーネット整備が進んでいる。
・地域連携パス もも脳ネット
岡山市域の取り組み。4疾病について、症状に応じた入院期間、治療方法等を決め、効率的なクリニカルパスが行われる。これにより、「待機」「手遅れ」を防止できる。
・(仮称)岡山総合医療センター構想
岡山大学と岡山市保健医療連携し、岡山市北区西長瀬に一体型施設をつくる取り組み。




(3)地域(圏域)ごとの介護サービスの充実度
 
 岡山県は広域のため、県では圏域を分け、分析、施策検討が行われる。ここでも、この圏域の考えに則り5つの圏域ごとの実態を浮き彫りにしたい。

 @圏域の考え方
    以下の通りで考えたい。
    <岡山県圏域の区切り>
     
     第4期岡山県高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画より
圏域名 構成市町村
県南東部 岡山市、玉野市、備前市、瀬戸内市、赤磐市、和気町、吉備中央町
県南西部 倉敷市、笠岡市、井原市、総社市、浅口市、早島町、里庄町、矢掛町
高梁・新見 高梁市、新見市
真庭 真庭市、新庄村
津山・勝英 津山市、美作市、鏡野町、勝央町、奈義町、西粟倉村、久米南町、美咲町

 A訪問系、通所系サービスの整備状況
(2)と同じ考えで、65歳以上人口÷サービス事業所を算出した結果は以下である。多少の凸凹はあるが、全国水準よりも受け皿の整備は進んでいると言える。


データ出典:第4期岡山県高齢者保健福祉計画・
介護保険事業支援計画

 B訪問系、通所系サービスは県北の「通いやすさ」に課題
 これらのサービスは、自宅居住を前提とした「通う」「来てもらう」サービスである。下図は、圏域ごとの100平方キロメートルあたりの事業所数である。密度は南部、北部で大きな差がある。密度が低い分だけ、「遠いところに通う」手間を感じる者が多くなる。高齢者にとっては、移動が体力面、心理面で大きな負荷となる。また、職員に来てもらうにも、計算上、北部の事業所のほうが広域的なエリアをカバーしなければならない分、フットワーク軽いサービスが実施できない。「通いやすさ」「来てもらいやすさ」の向上がより「安心」「便利」な高齢者福祉充実の大きな鍵と言える。


データ出典:岡山県統計局、第4期岡山県高齢者保健福祉計画・
介護保険事業支援計画




(4)まとめ
 
 以上より、岡山県は、総じて、高齢者福祉のセーフティーネットは整備され、日本全体の中で「安心して老後を迎えられる」県と言える。但し、「アクセスのしやすさ」の南北格差は、サービスを受ける高齢者にとって切実な課題と言える。ここの克服が更なる進展の鍵と言える。