岡山政経塾 チーム21
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◆◆医療・福祉分科会◆◆
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3.多様性と先進性に富む岡山県の医療・福祉の現状(現在)
H) 岡山県の児童福祉の現状と課題
8期生 川口 史恵
岡山県は孤児院発祥の地としても有名だ。石井十次という一人の人間が一時は1,200名もの孤児を立派に育てた話はメディアにも幾度となく取り上げられています。
そして、その姿は児童養護施設として、現在、法の下で管理、運営されています。岡山県では12ケ所の児童養護施設があり、岡山市では5ケ所の施設が運営されている。そして岡山市では660名の定員です。
今回、論文を書くにあたり、社会福祉法人 備作恵済会若松園を訪問し、理事長・園長の高月和紘氏にお話を聞かせていただきました。
それは、家庭で育てることの困難な子どもを、社会が育てるということや現在の子どもの状況、保護者の状況、家庭の環境、社会の環境など様々な状況を把握され、40年間子どもたちと関わり、法と関わり、制度と関わり続けた、現場のリアルな声でした。
そのお話をふまえ、岡山の現状と課題を考察し、一人でも多くの市民が岡山の児童福祉に関心と協力を頂ければ幸いです。
1.社会的養護の全体像
現在、児童福祉法の下、都道府県と市町村が連携し、養護の必要な子どもは児童相談所が相談・判定を行っている。政令指定都市である岡山市は市に児童相談所が設置され、親・児童の相談や訪問事業等を行っている。(資料1参照)
児童養護施設は、児童福祉法第41条に、「保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入居させて、これを養護し、あわせて退所したものに対する相談その他の自立の為の援助を行うことを目的とする」と規定されている。児童養護施設への入所は、児童相談所を通じて行政権限により行われることが一般的である。そして児童養護施設は措置費と呼ばれる国庫負担金を基本として運営されている。

(資料1)
2.社会的養護の現状
@ 虐待を受ける子どもの増加について
少子化、核家族化といった子どもや子育てをめぐる社会情勢の変化や、昨今の厳しい経済状況が家庭や地域社会の養護機能の低下をもたらしていると言われている。資料2は社会的養護を必要とする対象児童と制度、定員数である。
そして、近年の児童虐待の増加は止まるところを知らず、虐待死などの重篤なケースも増えている。(資料3参照)
原因としてあげられることは
T お金がない。→(ネグレクトを引き起こす)
U 一生懸命子育てをしているが、どうしたらいいのかわからない。
V 保護者の精神疾患
核家族化がすすみ、密封化している環境の中で、今まで子どもを育てたことのない親が、一生懸命子育てをし、ストレスをため虐待に至るケースが少なくない。
おじいちゃん、おばあちゃん、ご近所さんとの関わりが希薄になっている今、養育機能がなくなりつつある。
こうした児童虐待の発生予防から再発防止といった取り組みが社会的な緊急課題であるとともに、虐待を受けた子どもたちが心身を癒し、夢や希望を持って社会に出ていけるようにするための専門的な支援が必要とさせている。

(資料2)

(資料3)
A 障害をもった子どもの増加について(資料4参照)
虐待を受けた子どもたちは、心の奥深く傷ついている。また、入所児童の中で、知的障害や発達障害などの何らかの障害があると考えられる子どもは4分の1近くいる。特に知識障害児の増加がみられる。
知識障害は乳児の時にはわからないことが多い。育っていくにつれ、何かがおかしいと母親が気づくことが多いようだ。
ここで課題となることは専門知識がないと子育てが難しいということだ。
専門知識のない母親がどうしていいかわからず、ストレスをため、虐待に至るケースも少なくない。岡山市では専門知識を持ったスタッフの育成と子育て支援の対応がせまられている。岡山市の福祉の特色としては他府県にはない、先行職というシステムを取っている。
他府県であれば、福祉と全く違う科からの移動があるが、岡山県は福祉科の職員は退職するまで福祉に携わるという点がある。その点プロフェッショナルな人材を育成することは優位である。

(資料4)
3.施設の現状
児童養護施設は職員1人1人の頑張りに支えられている!
施設に入所した子どもたちの生活は職員がチームケアにより支えられている。とくに虐待を受けた子どもは親と愛着関係が確立されていないため、職員との間に愛着関係を再形成し、信頼関係をきずいていけるようきめ細やかな養育が求められる。しかし、障害をもった子どもの増加に伴い集団生活が困難な子どもも増加している。そこで現在は施設の小規模化の推進(資料5・6参照)が行われている。
@ 費用軽減
A 地域社会(家庭)と同じような環境づくりができる。
B 発達障害の子どもの増加で集団ではケアがしにくい。
大規模な建物での集団生活になれば、電話に出たり、ごみを出したり、お手伝いをしたりすることはほとんどない。そして集団生活ではパニックを起こしてしまう子どもはさらに人を信用できなくなってしまうおそれもある。
そこで、家庭と同じようにごみを出したり、電話にでたり、日々の家庭生活を体験させることが重要である。現在は6名の子どもに対して3名弱のスタッフでケアを進めていくように国から指導がある。
(資料5)

(資料6)
4.まとめ
社会的養護における養護とは、子どもたちの心身の健やかな成長と幸せを願って、社会全体が子どもたちが困難な状況を乗り越え、道を見出す為のいとなみであるのではないだろうか。
児童養護施設や職員だけではなく、社会全体、1人1人が地域の子どもの安全を守り、安心して育てられるように気を配る必要がある。
そして、児童養護施設 社会福祉法人 備作恵済会 若松園 園長高月氏に最後にこんなインタビューを投げかけてみた。
「施設の園長として40年間携わられて、地域の方々に子どもたちの為にしてほしいこと、してほしいものはありますか?」
高月氏からはこのような回答がありました。
「お金やものはもちろん大切ですが、私たちがほしいものは、「人」そのものなんですよ。ある美容師はボランティアで子どもたちの髪を切ってくれて、子どもたちと楽しそうに話をしてくれるんです。そしてある学生は子どもたちに勉強を教えに来てくれるんです。そこでも楽しそうに話をして子どもたちとコミュニケーションをとってくれるんです。そのことが一番なんですよ。子どもはそうやって夢を見つけていくんだと・・・そしてまた親子の絆を修復して家庭に帰って立派に育って行ってくれることが一番。うちの息子なんてね・・・岡山空港が開港になってそのときの飛行機が衝撃でパイロットになったしねぇ(笑)・・・」
私たちには現状をよくするためにできることはたくさんある。少し周りの人に目を向けてみると予防できることもたくさんある。そして何かを感じたら少しの思いやりと勇気を持つことが重要である。
そしてこれから現状と改善策を発信していきたい。
■参考資料
・全国養護施設協議会HP
・福祉行政報告書
・岡山市HP
・社会福祉法人 備作恵済会 若松園資料
・人は人によって輝く (共著) 致知出版社
・ひとりぼっちの私が市長になった! 講談社
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