岡山政経塾 チーム21

 

◆◆医療・福祉分科会◆◆


「4.提言(未来)」


        8期生 吉田 龍一、9期生 井上 和宣
     


 今回私たちは岡山の医療・福祉の歴史を振り返り、そしてその現状について各人が受け持ち分野を決めてそれぞれ調べて来ました。その過程で最も感じたことは「岡山の医療・福祉の先進性」とは即ち、高度先進医療から地域医療・福祉まで、様々な分野で全国から注目される取り組みがなされており、それぞれの分野で「多様性のある発展」を遂げてきているということです。この多様性に富んだ岡山の医療・福祉をさらに生かしていくために、そして未来の魅力ある地域づくりに生かすために、今を生きる私たちが為すべきことについて提言をまとめました。




提言1【岡山ブランドの確立・発信を】
 
 岡山県は、岡山大学病院、倉敷中央病院という日本を代表する先進医療を誇る二大総合医療機関を有しており、優秀な小児科医が集い高度な治療を担う岡山医療センター、また、心臓病の榊原病院、脳・神経・運動器の極東病院、透析医療のしげい病院など専門医療機関も多く存しています。さらに、優秀な医学関係者を育て、地域内に医師を確保する観点から考えれば、岡山県には、140年の歴史と世界的な先端医療の研究機関である岡山大学医学部と、昭和45年に創設された川崎医科大学が存在します。一つの県に国立と私学の二つの医大をもつことは大きな財産であり、県内外の優秀な学生にとって大きな目標であり続けており、岡山県の医療の質と量を支える大きな基盤となっています。緊急医療体制も整備され、他府県で報道されるような救急患者受け入れ体制の不備も皆無に近く、岡山県の医療における多様な先進性と充実度は、まさに「岡山ブランド」といえるに相応しい大きな魅力となっています。この岡山ブランドをさらに高め、いかに活かしていくのかが重要です。県民の健康を守る大切な財産として、さらなる向上を図ると同時に、ブランドそのものを岡山の街づくりや地域づくりに繋げていかなければなりません。絶えず、全国、アジア、世界から、人・物・情報が流入するように、岡山ブランドの価値を高め、発信しなくてはならなりません。
 前述してきたように、岡山県内における医療資源の南北格差は確かに存在しています。しかしながらそのような環境下でも強力なリーダシップを行政や医療従事者が発揮することで、旧川上町のように地域医療・福祉を街づくりにまで取り入れた先進的な事例も存在します。川上方式を学ぶにあたって興味深かったのは、そこに住む住民の医療・福祉に対する満足度が非常に高く、この満足度の高さは医療従事者と住民の間に‘顔のみえる’関係が築かれていることに由来している点でありました。驚くべきことに川上地域では高齢者一人あたりの医療費も他地域と比べて低く抑えられていました。県南都市部に住む人は、大病院も多いにも関わらずこのような満足度を得られていないのではないでしょうか?都市部で失われつつある人と人の繋がりを、川上方式のように、医療・福祉を地域づくりや街づくりに導入していくことで取り戻していけるのかもしれません。県北の成功事例のよい部分を県南にも取り入れ、そして県北に対しては医療資源格差を埋めるような努力を継続していくことが、岡山に住む私たちの医療・福祉に求められています。




提言2【岡山県内の医療・福祉・介護・教育関連機関のネットワーク化を】
 
 岡山県内の医療・福祉・介護・教育関連機関のネットワーク化を提言します。
 今後建設予定である岡山ERをハブホスピタルとして位置付け機能整備行います。岡山大学病院、倉敷中央病院、そして岡山大学の医学部と共に教育機関を有する川崎医大付属病院を3大核として連携させ、高度医療のさらなる進化を図ります。岡山県がカルテをはじめとする様々な情報を一元管理するソフトを開発して、ハブホスピタルを中心として、県内の総合病院、専門病院、療養施設、検診機関、かかりつけ医、介護施設、教育機関をネットワークで結び、先進医療・高度予防医療・介護予防の例をみない基盤を完成させることができます。
 県民全員の健康状態をデータベース化しているので、介護予防体制も万全となり、また、情報の共有化により、専門(総合)病院のない地域に住まいする人も、早期に適切な治療を受けるためのシステムとして活用することができるようになるでしょう。
 救急救命処置を必要とする患者が発生した医療現場等に救急医療に精通した医師および看護師を迅速に到達させ、可能なかぎり速やかに適切な救急処置が開始されるようにするために用いられるドクターヘリは、2008年、岡山県が全国に先駆けて導入しました。県内いずれの場所にも30分以内で到着できます。県民の健康データバンクと連携を図ることにより、大きな相乗効果の発揮が期待できます。
 医療・介護関連機関のネットワーク化が実現すれば、その先進性も含め、国内はもとより世界に発信するに充分な魅力を持つことになるでしょう。





【未来予想図】
 
 20XX年医療・福祉先進県岡山には、世界中から製薬・医療設備・研究開発・情報などの関連機関が集まって来るようになりました。アジアを中心に世界中から高度な検診と先進医療を求めて訪れる外国人も多く、まさに国際医療都市の様相を呈しています。他の分科会の研究テーマであった観光資源も整備され長期滞在するに相応しい環境が整いました。医療を中心として先端技術産業も興り、その波及効果で岡山県の地域経済は活性化しています。医療・介護関連機関のネットワークは、県民の安心・安全を確保すると共に、岡山県の発展に大きな貢献を果たしています。

 未来予想図を夢のまま終わらせてはいけません。夢を現実のものにするためには、強い信念を持ったリーダーとそれを支える県民ひとりひとりの信頼・信念が不可欠です。郷土岡山の歴史・文化の中で独自に発展してきたこの多様性に富む岡山の医療・福祉を『岡山の地域づくり・街づくり』に充分に生かしていくことで『夢を現実にすること』が可能になると確信しています。