『教育がもたらすもの』
萬成沙織 (岡山政経塾 15期生)
学びの21世紀塾
平成14年度に完全学校週5日制が始まることをきっかけに設立された「学びの21世紀塾」。子どもたちの土曜日の居場所として、また、地方でも都市部以上の充実した学習機会と活動の場を提供するために作られた市営の無料塾だ。
ゆとり教育によって学習内容・時間は3割減。日本の大きな教育の流れに疑問を持った豊後高田市は、子どもたちの確かな学力・豊かな心・健やかな体を培うことをめざし独自の取り組みをスタートさせた。
市民講師
学びの21世紀塾の特徴は、市民が講師として参加しているところだ。引退した元教員や個人塾経営者、留学経験のある主婦や元銀行員など様々な人材が「先生」として子どもたちに授業を行っている。
地元に眠っていた人材の宝は、子どもたちに学ぶ楽しさを教え、勉強だけではなく伝統文化やスポーツを通じて、自主性や創造性、社会性を育んでいる。
そして講師自らも活躍の場を得ることでいきいきとした活気が生まれ、子どもたちと地域の人々が触れ合う、大切な交流の場ともなっている。
自ら学ぶ意欲
塾に通うきっかけはそれぞれ違っても、続けるかどうかは自分の意志で決まる。学びの21世紀塾は、子どもたちが刺激し合い共に学べる環境になっている。
少子化が進み、学校の中だけでは競争心をあまり持たなくなってしまっている中で、小規模校の垣根を超え、勉強やスポーツにおいてライバル・共に学ぶ仲間の存在が子どもたちを成長させている。
学び続けるために必要なことは「基礎」であると思うからこそ、学びの21世紀塾で理解を深めることができる子どもたちは、学ぶ楽しさを知り、自ら学ぶ意欲を持つことができるのだと思う。
学校教育の基盤
中心はあくまでも学校での学びである。それにプラスして学びの21世紀塾という取り組みがある。
豊後高田市は「開かれた学校」として、外から誰でも学校見学ができる。徹底した個別指導に7時間授業の実施、授業日数をいかに確保するかを考え学校が休みの時に修学旅行や家庭訪問を行うなど「チーム学校」として、地域と学校が双方向の関係性を築き、子どもたちを共に育てている。
まちに育てられた
豊後高田市の子どもたちは、進学などで外へ出たときに自分たちが受けていた教育が当たり前ではなく特別であったことに気が付く。「まちに育ててもらった」と戻ってくる若者が増えているのだ。学びの21世紀塾がスタートして15年。かつて塾生だった子どもたちが大人になり役目を引き継いでいくのだろう。教育がもたらすこの循環が地域を活性化させ、豊後高田市を「希望があるまち」にしているのだと思った。
最後に
教育のまちと共に昭和のまちでもある豊後高田市。「昭和の町」の商店街を訪れて昼食を食べた喫茶店のマスターが男性陣に伝えていたことがある。
「女性と食事をするときは、いつもよりゆっくり食べなさい。はやくに食べ終わると、女性が気を遣うからね。」と。はじめてお店を訪れた人にたくさん話しかけていることにも驚きだったが、こんなところにも学びの場があるとは。
昔ながらの気さくなコミュニケーションは、新鮮でありながら温かみを感じ、とても魅力的でした。