岡山政経塾 チーム21

 

◆◆産業・環境分科会◆◆

 ・ 児島初(発)!! 新しいデニムファッションのムーブメントを提案
 ・ 世界一のメガソーラー発電所で世界一の環境都市・岡山をめざす

『世界一のメガソーラー発電所で、世界一の環境都市・岡山をめざす』

       7期生 難波 宏行     

@ はじめに

 2010年の夏。岡山の8月の平均気温は30.5℃と、これまでの国内の記録を更新し、気象庁は30年に一度の異常気象と認めた。
 現在、地球の気温は上昇の一途をたどっている。地球温暖化は、自然環境や生態系の変化や、農畜産業や社会経済の活動に大きな影響を与える。先進国の間では「京都議定書」に基づく温室効果ガスの削減が明記され、日本もその例外ではない。
 日本のエネルギー供給の大半は石炭、石油の化石燃料に依存し、石油に関してはほぼ100%輸入に頼っている。またエネルギー自給率は20%程度(原子力を含まなければ4%程度)と不安定なエネルギー供給構造となっている。
 これからのエネルギー問題は、地球環境の問題を念頭に考え、化石燃料からの脱却と新エネルギーの推進を図り、水力・火力・原子力・新エネルギーの良好な供給バランスを実現していく必要がある。
 私たちは、地球の恩恵を受け生きている人類として、将来の地球と子孫に対して、良好な自然環境を受け渡していく責任がある。
 だからこそ、これからの「晴れの国・岡山」は、環境都市世界No1をめざし、50年後100年後の地球環境の重要性を岡山から世界へ訴えていく必要がある。




A なぜ「晴れの国岡山」なのか
 
「晴れの国岡山」と呼ばれるいくつかの理由がある

○降水量1ミリ未満の日 276日【全国第1位】
 (昭和26年から平成12年まで平均値)
○日照時間 2,010時間【全国第12位】(同期間)
○降水量 1,141ミリ【少ないほうから全国第7位】(同期間)
○快晴日数【全国第5位】

 北に中国山脈、南に四国山脈を望む岡山の土地の利が、降水量の少ない温暖な気候を作り出している。




B 電源発電構成
 
 私たちが利用している電気は、いくつかの方法で発電されている。供給される電源構成を下記に示す。(中国電力HP参照)

 電源種別構成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

単位

2005年度

2006年度

2007年度

2008

年度

2009年度

発電設備 (年度末)

水 力

千kW

3,115

3,126

3,126

3,126

3,126

 

 

石炭

千kW

5,304

5,282

5,282

5,440

5,337

 

LNG,

その他

千kW

2,129

2,469

2,469

2,469

2,754

 

石油

千kW

3,911

3,561

3,186

3,186

3,186

 

 

合計

千kW

11,343

11,311

10,936

11,095

11,276

 

原 子 力

千kW

1,280

1,280

1,280

1,280

1,280

 

合 計

千kW

15,738

15,718

15,343

15,501

15,683

発電電力量(発電端)

水 力

百万kWh

4,014

4,658

3,569

3,821

3,777

 

 

石炭

百万kWh

36,168

36,703

38,622

36,794

33,139

 

LNG,その他

百万kWh

10,895

10,619

10,743

12,068

13,440

 

石油

百万kWh

6,783

8,875

9,995

8,496

4,809

 

 

合計

百万kWh

53,846

56,198

59,360

57,357

51,388

 

原 子 力

百万kWh

9,297

7,937

8,485

7,131

9,585

 

新エネルギー

百万kWh

257

351

461

540

576

 

合 計

百万kWh

67,414

69,144

71,874

68,850

65,325

(注1)他社受電を含む,特定融通を除く。

(注2)四捨五入の関係で合計と一致しない場合がある。


 上記の表でもわかるように、発電電力量のうち石炭・LNG(液化天然ガス)・石油を含む火力発電が、全体の約8割を占めている。温室効果ガスの排出量を削減するためにも、火力発電の依存度を減らしていく必要がある。



C エネルギー資源の埋蔵量
 
 石油、石炭、天然ガス、ウランの確認されている埋蔵量は、石油は42年分、石炭は122年分、天然ガスは60.4年分、ウランは100年分となっており、どれも限りある資源である。原子力の燃料ウランは、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再利用できる。また、現在の可能採掘量以外にも、採掘技術の進歩や、新たな採掘場所の発見により可能採掘資源の絶対量は増える可能性がある。


 Bでは、発電種別の中での火力発電の依存度の高さを、Cでは限りある資源を確認した。これからの電力供給の在り方を考えると、火力発電の割合を減らし、化石燃料からの脱却を模索する必要がある。
 そのために、化石燃料を使用しない、温室効果ガスが発生しない新エネルギーのソーラーパネルで発電する太陽光発電に着目し、メガソーラー(大規模太陽光)発電所の可能性について考えてみる。
 



D 太陽光発電の歴史的経過
 
 まず、太陽光発電とは、太陽電池(ソーラーパネル)を利用し、太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する発電方式で、太陽エネルギーを使用した再生可能エネルギーのひとつの形態である。
 日本における太陽光発電システムは、オイルショック以降、1974年に現経済産業省の「新エネルギー技術開発計画(サンシャイン計画)」によって技術開発が進められた。以降NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)・NEF(財団法人・新エネルギー財団)・国・地方自治体等の助成、および各電力会社の自主的な開発プログラムにより普及し、日本は生産量・導入量とも世界一となった。
 2000年まで、ヨーロッパ全体よりも日本の発電量が多かった。2005年NEFによる助成が終了し、2007年まで国内市場は縮小した。日本のシェアは減少し、世界一の座から転落し政策の不備も指摘された。
 2008年に福田ビジョンによって導入量の大幅増加の目標「緊急提言」が打ち出された。2009年2月、環境省は太陽光発電を含む再生可能エネルギーの普及と、経済効果、雇用などの試算を行った。普及政策としては固定価格買い取り制度の採用し、経産省は初期投資を10年程度で回収できる助成策を導入している。




E 岡山での太陽光発電の取り組みの現状
 
○岡山市 ・住宅用太陽光発電設置に伴う補助金
○岡山県 ・住宅用太陽光発電設備設置費補助金制度
○岡山県 ・公共施設や民間事業所の太陽光発電補助制度
○国   ・住宅用太陽光発電導入支援対策補助金制度など
 ※NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
  …省エネルギーシステムや新エネルギーにステムの導入設備工事に対して、補助金制度を設けている。
 ※NEF(財団法人新エネルギー財団)
  …家庭用太陽光発電設置補助金や地方自治体・事業者への新エネルギー等導入補助金を行っている。

 現在の主な取り組みは、住宅や公共施設、社屋などに対しての設置費用補助金制度である。この補助金は、市・県・国と重複して獲得する事ができ、すべてを取得すると初期設備費に対して、費用が負担される。
 
 しかし、岡山県の補助金は、国からの補助金の枠内で支給されており、年度ごとに国が配分する補助金が前後し、それによって金額も毎年前後する。また戸数の制限があり、すべての県民に平等に配分される行政サービスとは言えず、不公平が生じる。
 財団法人や独立行政法人などの補助金もまた、年度によって予算額が前後する。近年の民主党政権の事業仕分けにより、すでに余剰金の国庫返納や削減、事業内容の一部廃止の対象になっている。今の政権はどのような国にするか示していない。政党や政治家自身の理念や政策が欠如している状態で、事業の節約をとりあえず要求している現状は、正しいとは言えない。
 たしかに、建物の消費電力に対してまかなえる発電量を有したパネルを設置する事は、発電所の化石燃料依存度は少しずつ低くなっていく。火力発電の依存度を考えると、個々に対しての補助金制度ではなく、政治・行政とソーラーパネルメーカー、電力会社のすべてが手を組み、大規模な太陽光発電施設を模索していく必要がある。




F その他の岡山での太陽光発電の取り組みや現状
 
【1】岡山の企業の取り組みでは、両備ホールディングス(両備HD)と産業技術総合研究所が、京山ロープーウェー跡地に、世界最高水準の集光型太陽光発電システムを整備し、発電効率の実証実験を行っている。その横には植物工場が設置され、太陽光で得られて電力を利用して野菜を栽培している。工場見学で一般公開され、栽培された野菜は、エコな野菜として一部販売されている。両備HDは、「岡山の気象条件を生かし、食料自給率や環境、エネルギーなどの問題を総合的に研究する、新たな産業集積モデルを示す。そして次世代を担う子供たちに夢を与えたい」と説明している。

【2】山田養蜂場やベネッセコーポレーションなどの企業では、敷地や事務所の屋上や壁面にソーラーパネルを設置し、電気料金節減と企業イメージアップを図り、一般企業単位でCO2排出量削減もできる。NEDOからの補助金を利用しても、回収までに約20年かかる。

【3】 NPO法人「おかやまエネルギーの未来を考える会」が、市や市民と共同で、3か所の保育園に太陽光発電を設置している。資金は補助金と市民からの募金「おひさま基金」を活用しおり、施設の消費電力の約8割を補う。発電量が分かる表示器を設置し、園児への環境教育の一端を担っている。




G メガソーラー発電所の紹介
 
【1】堺市のメガソーラー発電所の紹介(関西電力)
 関西電力が世界一のメガソーラー発電所を大阪府堺市に、一部(6ヘクタールに2万枚のソーラーパネル・発電量3MW)運転を開始した。三洋電気のソーラーパネル工場の誘致にも成功し、関西電力と三洋電気・堺市の3者の利害と目的が一致した。2011年10月には約20ヘクタール 10MWの発電出力の設備を完成、運用を始める。
 
(1)「堺第7−3区太陽光発電所(仮称)」
・発電出力:約10MW
・発電電力量 約1,100万kWh/年
・総事業費約50億円
(2)「堺コンビナート太陽光発電施設(仮称)」
・発電出力:最大約18MW、(当初約9MW)
・発電電力量 約1,800万kWh/年



【2】福山市のメガソーラー発電所の紹介(中国電力)
 中国電力は、広島に福山太陽光発電所を計画した。
・発電出力3MW
・二酸化炭素排出量2,000t−CO2/年 程度削減見込み
・年間発電電力量 約334万kWh
・4.5ヘクタールに太陽光パネルを設置(東芝製)
中国電力は、2020年までに10M程度のソーラー発電の開発を進めている。




H 提言:世界一のメガソーラー発電所で、世界一の環境都市・岡山をめざす
 
 ここでは、【晴れの国・岡山】に世界一のメガソーラー発電所の実現を提言する。メガソーラー発電所が、岡山の地域や私たち住民にもたらす可能性について考察する。

【1】原子力発電と太陽光発電を比較する
 温室効果ガスの削減は、火力発電の発電量の削減でもある。温室効果ガスの発生しない発電は、水力発電や原子力発電、風力発電などいくつかある。
火力発電の次に発電量が多い、原子力発電と今回のテーマのメガソーラー発電を比較して、将来の電力供給のあるべき姿を示していく。
 
(1)太陽光発電と原子力発電の長所・短所を比較
まず、将来の電力供給を担う、二つの発電技術の特徴を把握する。
 

項目

原子力発電

比較

太陽光発電

発電時の問題

温室効果ガス排出しない

温排水が発生

温室効果ガス排出しない

排気・騒音・振動がない

発電時の

資源・燃料

ウラン

再利用されるプルトニウム

可採埋蔵量が有限である。

いらない

化石燃料の輸入量が減れば貿易黒字が見込める

廃棄物

放射性廃棄物

世界に処理施設ナシ

発電時にはナシ

誘致自治体への対応・利点

雇用、国からの交付金

税制税収面での優遇

特にナシ

災害や

重大事故

テロリズムや軍事転用の脅威

地球規模での環境被害

災害時や有事の非常用電源としてのメリット

 

配電設備

電力の生産地と消費地が離れており、送電網による電力ロスや事故・停電リスクがある

発電に対する調整機能やコスト削減を目指した「スマートグリッド」が必要

 

出力ピーク

 

電力需要に合わせて調整可能

日照時の昼間で、天候に左右され、夜は発電しない。蓄電機能がない。


(2)メガソーラー発電と原子力発電のコスト、電力発電量などを比較する。
 ここでは、島根原子力発電所3号機の発電量(出力)1,373MWとし、年間発電電力量を想定。それ相当のメガソーラー発電所を仮定し、コストや発電量などを比較する。太陽光発電の換算基準にするのは、中国電力の島根原子力発電所3号機・中国電力の福山太陽光発電所・関西電力の堺第7−3区太陽光発電施設の公開資料に基づく。
 

項目

島根原子力発電所3号機

比較

相当の太陽光発電所

発電量

(出力)

1,373MW

 

福山は3MW(約1 / 458倍)

年間発電

電力量

出力80%で24時間・300日稼働

(年間約2ヶ月間点検のため運休)

7,908,480MWh(想定値)

7,908,480MWhに合わせる

福山:3,340MWh

(約1 / 2,368倍)

敷地面積

192ヘクタール

福山4.5ヘクタールなので

10,656ヘクタール必要

 

 

初期

設備費

 

 

4,000

 

福山(非公開)

堺:年間発電電力11,000MWh

初期設備費50億円で換算

島根原発の年間発電電力量の1 / 719、同等量の発電設備費

3兆5,950億円

 

 

燃料費

出力1,000MWで約21トン/年のウランが必要、年間使用量約29トンと想定する

ウランの価格1ポンド62ドル

為替1ドル82円で換算すると

35,000万円(想定値)

 

 

 

なし

設備寿命

法定耐用年数16

パネル約20

(発電能力約10%減)

年間の

二酸化炭素

抑制効果

一年間フル稼働700万トン

出力80%・24時間・300日稼働とし、

460万トン(想定値)

福山約2,000トン

年間発電量の比で換算

473.6万トン


 上記から、両者とも良い点・悪い点が確認できる。電力発電電力量は圧倒的に原子力が優位である。しかし、原子力発電は、化石燃料ウランを必要とし、放射性廃棄物の処理が明確でない。また、あらゆる有事に危険が付きまとう。
 近年では、世界中でメガソーラー発電所の建設がラッシュを迎え、中国を筆頭に各国でウラン獲得の動きがあり、争奪戦による価格高騰が懸念されている。
 中国電力の取り組みも2020年までに、全体で10MWのメガソーラー発電所の設備を目標としているが、すでに堺市でそれ以上の取り組みが行われていることを考えると、目標数値が低すぎるように感じる。近い将来必ず訪れる資源の枯渇時代に対応するために、新エネルギーに強くシフトしていかなければならない。それは、この中国地方で唯一電気を発電・供給することのできる企業として、将来の地球環境や社会生活の責任の一端を担っていることを改めて認識する必要がある。
 
 瀬戸内の温暖な気候を生かし、【晴れの国・岡山】に世界一の大規模太陽光発電所の導入を提言する。例えば、岡山県内の荒廃地である、錦海塩田跡地(505ヘクタール)にメガソーラー発電所を誘致。この誘致は、工場や住宅などの誘致と異なり、地盤改良や水道などのインフラ整備を最小限に抑えることができ、安価で済む。堺市では三洋電気との共同事業であることから、それ以外のパネルメーカー(三菱や京セラ・東芝など)に呼びかけ、競争力と企業イメージを上げることのできる誘致であることを、岡山県と瀬戸内市が、積極的にアピールする必要がある。
 
 平成22年度末に岡山県が、新エネルギーの普及の拡大を目指す「おかやま新エネルギービジョン」の素案をまとめた。その中では、2020年までに、メガソーラー発電所を10施設の誘致、新エネルギーは関連企業30件の新規立地を目指している。(メガソーラー発電所は発電出力1MW以上の施設を指す。)
 せっかく取り組むのなら、国内のどこでもあるような規模の施設誘致を10件ではなく、1か所にNo.1の規模の施設導入を目指さなければならない。
 そして、世界一のメガソーラー発電所を有する岡山は、環境立県として日本全国、また世界に発信することにより、世界中から人が訪れ、環境や文化、歴史を同時に知ってもらう観光産業としての可能性も広がる。
 
 太陽光発電は、発電時間の制限があり、発電量も原子力に大きく差がある。発電をする側は、大規模な電力量で調整できる原子力発電の利点は大きい。しかし、その地域の住民は、発電する側と電力を消費する側の両者から、生命や環境、有事での被害の危険性を負わされている。政治は、この現状に目を背けず、国や地域の将来に安全で、発電バランスのとれたエネルギー供給の在り方を考える必要がある。




I おわりに
 
 本文は、岡山の特色の一つである【晴れの国・岡山】を、政治がどのように生かしていけ良いかを考えるところから始まった。私たちは、岡山の温暖な気候の中、歴史や文化、特産物、立地の地域性など、とても恵まれた環境のもとで社会生活を送っている。その万遍なくある恵みが、反対に岡山の政治を消極的にし、日本一・世界一のような突出したものを創り出そうとしていない。そんな岡山に対する、岡山県民の愛着度は全国的にも低い。

 政治が、国内外にアピールできる【世界一のメガソーラー発電所】に臨む覚悟があるならば、岡山で生活する私たちの意識は良い方向に変化する。「岡山って何がある?世界一のメガソーラー発電所!」など、イメージしやすい【世界一】がある事で自慢や誇り、愛着などが変化し、そして地域には、メガソーラー発電の産業資源が観光資源となり、経済的効果が期待できる。
電気を発電する世界一のメガソーラー発電所は、あくまで手段のひとつである。世界一のメガソーラーは、環境に対する意識・世界一の県民を育て、世界一の環境立県・岡山をめざすことができる。ここが導入の目的であることを、忘れてはならない。




■参考文献(以下、各機関ウェブサイト等を参照)
 
・岡山市
・岡山県
・山陽新聞
・中国電力
・関西電力
・電気事業連合会
・資源エネルギー庁
・NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
・NEF(財団法人新エネルギー財団)