『 向こう100年を見据えてのまちづくり 』
石井 靖之 (岡山政経塾 17期生)
1.はじめに
高松丸亀町商店街は高松市の中心部に位置する総延長2.7kmの400年余りの歴史を誇る全国でも有数の商店街。しかし、バブルによる地価の高騰で空洞化が発生。ピーク時には1日に4万人あった通行量は2006年には9500人まで落ち込んだ。現在は1日3万人までの復活を遂げた丸亀町商店街。今回は四国随一の商店街として復活を遂げた丸亀町商店街を視察し商店街振興組合 理事長 古川康造様の講話を頂き、民間主導の再開発でなぜ復活を遂げることが出来たのか?その成功要因の分析と学びについて報告いたします。
2.土地の所有と利用の分離
バブル期に日本経済を荒らし回った土地問題。日本経済の根本的な建て直しには、この土地問題の解決が必須であるという学説が古い時代から存在する。400年余りの歴史を誇る丸亀町商店街も例外なくこの問題に直面していました。バブル期の地代高騰で中心街は空洞化し、日本人特有の土地に対する執着心が再開発をの妨げになり、結果的に商店街はシャッター通り化してしまった。この土地問題を解決すべく採った手法が『土地の所有権と利用権の分離』である。
3.オーナー変動地代家賃制度
地権者の出資で作ったまちづくり会社がすべての商店の地権者と定期借地契約を結んでその使用権を取得し、同社が建物を整備・所有する。そしてテナントの家賃収入から銀行への返済、建物の管理費用などを差し引いた金額を地代として地権者に支払う。あえて地代を劣後とすることで、地権者はテナントの売上に関心を持たざるを得なくなり、テナントの売上が上がらなければ地代は下がってしまいつまり、オーナー変動地代家賃制度は町の興隆に地権者を半強制的に関与させる仕組みがある。そして土地の使用権をまちづくり会社が一括して持つことで利害調整に手間取る事無く思うようなテナントミックス(業種の再編成)を行うことが出来た。
すべてを行政に任せるのではなく、自分たちの街を自分達で自らリスクを負い自治権を持って運営していこうという新しい自治組織が出来た。
業種の再編成、イベント、組織との連携、住宅整備、安全な街造り、すべてが可能になる『エリアマネジメント』が可能になった施策である。
概要を下記の資料で説明します。
※地権者は、個々の権利を主張するより全体の利益をシェアしたほうが得・・・
という事に気づいた。

行政主導では決して実現しなかった、
『土地の所有と利用を分離した市中心部の土地の有効活用』
理に適った施策であり、これからの人口減、高齢化社会に対応するまちづくりを実現させる大前提の土地問題を解決させたまさに『エリアマネジメント』である。
4.再開発成功の大前提『コミニティーの現存』
丸亀町商店街の再開発を行うにあたり、まず徹底的に調べたのが全国の再開発の『失敗事例の調査研究』である。そこで一定の法則があることを発見する。
ⅰ.駅前の一等地が衰退すると行政が再開発に乗り出す。
ⅱ.地上げをし、新しいビルを建てて核となるテナントを招致する。
ⅲ.デベロッパーがビルを竣工し、テナントを誘致した段階で去っていく。
ⅳ.そもそも衰退した場所なので満足な業績が上げれず数年でテナントが撤退。
ⅴ.また新しい空きビルが出来、お役所が穴埋めに奔走する。
行政主導ではなく、地元主導のまちづくりでないと成功は出来ないと考え、そこにこだわって再開発を行った。
丸亀町商店街の再開発が軌道に乗ることが出来た要因は、丸亀町に400年間続くコミニティーが現存していた。その土台があったからこそ地権者との合意が取れた。どれだけ優れたリーダーや行政の支援があっても、地域のコミニティーが崩壊していたら再開発は不可能。生まれ育った地元に対する熱意と『触媒』とコミニティーの現存こそが再開発の成功の必須の条件である。
※変身していく商店街の概要

※A街区『セレクトショップゾーン』
高級店を集中的に整備したゾーンになっている。
広場の整備によりドームは象徴的な憩いの広場として活用された。

※B街区『フードコートゾーン』
再開発以前は飲食店が商店街に無かったが、現在は36店舗まで増えた。

※C街区『美と健康ゾーン』
病院、ビューティークリニック、歯科、リハビリセンター、鍼灸などをこの街区に集中的に配備し、さらに高齢者向けマンションを42戸整備している。

※G街区『都心生活ゾーン』
大型マンションを整備し、『都市観光』という切り口でホテルも誘致した。

5.感想
今回の視察で物事の考える視点というものがどれだけ大切で、どれだけ重要なものかを勉強させて頂きました。古川理事長の『向こう100年を見据えたまちづくり』は、後に続く若者たちの為に、そして地域繁栄に対しての本気の思いと覚悟。何事も大きな目標を成し遂げるために一番必要な思い。そして思いの度合い。自分たちの街を、自分たちの力で、未来に向けた自分達の責任として。全てにおいて本気の度合いの違いを感じさせられました。自分一人ではなく、地域のコミニティーを活用して、全員で知恵を出していく事。岡山の表町商店街でも十分に再開発は可能ではないかと思いました。これから岡山は駅前、表町、北長瀬と再開発が進んで行くと聞いています。この丸亀町商店街の取り組みを取り入れて行政ではなく、地域の人で考え、取り組んでいければ、岡山の未来も明るくなると思いました。自分自身としては今回の視察で得た気付きを自身の会社に持ち帰り、経営視点として活かしていきたいと思います。貴重な勉強の場を頂き、本当に有難うございました。