2014年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

『自然と本物に触れる』

森脇 慎 (岡山政経塾 13期生)

●はじめに

 岡山政経塾に入塾して初めての宿泊をともなう例会ということ、そして政治とは直接関係の無さそうな芸術・アートに触れる企画が織り込まれていることなどで大変楽しみに参加させて頂きました。

●直島

 初日は直島の地中美術館を見学させて頂きました。これまでにも美術館はいろいろと見てきましたが、展示してある作品はもとより、建築物そのものの芸術性を意識させられた美術館を見るのは初めてとなりました。そして、北川フラム先生による講演を拝聴することにより、ますます現代アートの素晴らしさ、そして、地中美術館の素晴らしさを感じることが出来ました。

●豊島

 産業廃棄物の不法投棄が問題となった豊島ですが、問題となった当時は“遠い世界の話”と全く関心がなく、新聞の記事さえもまともに読むことはありませんでした。  しかし、今回ここに来させて頂き、まだ完全に撤去されていない廃棄物や事件を詳細に記録された資料館を拝見し、実際にこの事件に関わられた方の話を直接拝聴することにより、大変な事件であったことと“政治のあり方”というものの大切さをあらためて実感しました。資料館の資料で最も印象に残ったのが、遠目から豊島を撮られた写真で、産業廃棄物を焼却する際に発生する黒煙が“堂々と”上がっている様子を写したものでした。今のこの日本で、しかも行政手続き的なことをすべてクリアされたうえで、このようなことが行われるという現状を見て、恐ろしさを感じました。知事をはじめとする香川県議会が当時のメンバーではなく、違う知事で違う議会であったならばこの事件は果たして起こっていたであろうかと考えた時に政治の責任、政治家の責任、そしてそれを選ぶ国民の責任というのは重大であることを再認識しました。この産業廃棄物を完全に撤去するまでにかかる費用は500億円~1,000億円と言われていました。これを負担するのは当時の知事でもその他の政治家でもありません。
 我々はこれだけの授業料を“税金”というかたちで払い勉強をさせて頂きました。この教訓を生かさない手はありません。
 “政治のあり方”をもう一度しっかりと考えなければなりません。

●豊島美術館

 この美術館には初めて来させて頂きました。この合宿に来る前に、ここに来た経験のある人にどのような美術館であるかを聞きましたが、“行ってからのお楽しみ”ということで教えてくれる人はいませんでした。当日、中に入ってみて、その意味がよく分かりました。理由は分かりませんでしたが、そこに居るだけで大変心地よく、いつまでも居れる感じでした。ちょうど“炎”をいつまで見ていても飽きないのと同じ感覚なのだと思いました。炎、水、光など造られたものではなく、全く自然のものと接し、触れることで得られるこの感覚というものが、お金でもなく名誉でもなく、まさに我々が生きているなかで求めているものの究極なのではないでしょうか。世の中がどんどんと便利になっていきます。IT化、経済の発展、文明の発達、それらが本当に必要なのかどうか、この美術館に一日座って考えてみるのもいいかもしれません。

●おわりに

 今回の例会は企画が盛りだくさんで大変充実した楽しいものとなりました。そして、いろいろな素晴らしい気付きがたくさんありました。特に産廃場では、見聞きするだけでは気付けないことが、“現場”に行くことで気付ける、そして何よりも“正しく”気付け、“正しく”理解できることを再認識しました。
 そして最後になりましたが、この合宿を細かいところまで至れり尽くせりで段取りと案内をしてくださいました小山事務局長と西美さんに感謝です。