岡山政経塾 チーム21

 

◆◆観光・文化分科会◆◆

 ・ 備中聖人「山田方谷」の観光資源化について
 ・ 備前焼の現状と未来への提言
 ・ 岡山の特産物に触れて
 ・ スポーツツーリズムによる岡山の活性化


『岡山の特産物に触れて』

       8期生 三島     

まえがき

 現在、岡山県だけでなく日本全体で農業の衰退化がすすんでいる。
 その問題点として食料自給率の低下・高齢化問題・後継者問題等が考えられる。しかし農業とは食料生産だけの目的だとは私は思わない。現在では農業を通して不登校児童をケアする場所であったりもするからだ。
 私は、農業の問題点を改善させると共に農業を通じて心のケア、喜び、食物の有り難さなど感じる。「岡山の人から元気に」「岡山の農業・特産物を活性化させ」「日本を元気に」という視点から考察する。




1. 食物に対する過去
 
1−1.日本人から薄れゆく「飢餓」の記憶
 子供を連れてレストランに来ると、その子供が注文したものを残したのに親は何も文句を言わないどころか「無理をしないでいいよ。お腹を壊すから」などと言っている様子を目にする。
 しかし、自分が頼んだものを責任持って食すること。食物というものが天の恵みのような有り難いもので、世の中には飢えに苦しんで栄養失調になり、この時間にも死んでいく子供の存在があることを教えることが大切ではないだろうか。
 このように、現代日本人にとって飢えという問題は遠い過去に起こった遠い記憶でしかないのかもしれない。スーパーやコンビニに行けば溢れるように見るから美味しそうな食物が陳列してある。飢えはもはや日本には無縁のことなのだろうか。


1−2.現代世界における飢餓と食料問題
 日本人にとって飢えの記憶は遠いものになったが、歴史を思い起こしてみることは大切なことだ。現在、世界の人口はまもなく70億人になる。2050年、世界の人口は92億人に達する。1日1ドル以下で暮らす絶対的貧困層は12億人。1日2ドル以下で暮らす人は30億人。世界の死亡原因の第1位は飢餓。人の営みが、太陽と地球からの恵みを超えている。
 日本人はもう一度、歴史を振り返り食料を生産する農業というものの大切さを考えるべきではないかと思う。
 






2.農業の現状と問題点
 
2−1.食料自給率の低下
 1960年度に79%であったカロリーベースの日本の食料自給率は、年々低下を続け40%台へと低下した。主要先進国の中では最低水準である。
 アメリカやカナダなど国土の大きな国の食料自給率が100%を超えており、同じ島国であるイギリスでは2005年度のデータでは約70%。日本の水準を大きく上回っている。また、穀物自給率(国内の総消費量に対する国内生産量の割合)は、日本は2007年度で約28%とやはり世界175か国中125番目という低い水準である。つまり日本は米などいくつかの品目を除いて、多くの食料を海外からの輸入している国である。


農林水産省「平成18年度 食料自給率レポート」
※数値は、2003年度(日本は2007年度)


2−2.高齢化問題
 農水省統計によれば、平成21年の農業総産出額(概算)は8兆491億円、このうち耕種部門の産出額は5兆8,248億円である。日本の農業就業人口は毎年十数万人ずつ減り続けており平成21年で698万人。このうち238万人は65歳以上の高齢者が占めている。
 

 農林業センサスのデータから「農業従事者」(1日でも自営農業に従事した農家世帯員)およびそのうち「農業が主」の「農業就業人口」について年齢別の構成を示した。日本農業は70歳以上の農業者が数的にも大きい。高齢者の定義である65歳以上で見てみると農業従事者の37.8%、農業就業人口の58.2%は高齢者である。
 男女別に農業が主の農業就業人口の年齢構成をみると30歳代〜60歳代では男より女の方の人数が上回っており、女性の果たす役割が大きいことがうかがえる。
 日本の食料自給率の向上が目指されているが、こうした農業の担い手の高齢化が最大の隘路となっていることは間違いない。
 なお以下に食料・農業・農村白書から、農業者の年齢構成の国際比較を掲げたが、日本の農業者の高齢化は他国と比較しても著しいことが分かる。


2−3.後継者問題
 次の世代の担い手が現れてこない理由をより明らかにするために、親が農業関係者であるにも関わらず、農業を主な職業として選んでいない人にヒアリングを行い下記の結果となった。

・親がまだ農作業を行っているので継ぐ必要がない。親と自分の家族両方が食   べていくには、今の農業収入では難しい。
 ・農業に興味がない。今の仕事(サービス業)の方がやりがいがある。
 ・自分だけならいいが家族を養っていけない。
 ・子供を大学などに進学させてあげられるかが不安。
 ・労働と対価のバランスが悪い。
 ・自然環境に左右されるので生活が不安定。会社などに努めた方が収入だけでなく色んな意味で  安定した生活を送れる。
 ・自分の成長につながらない。
 ・自然は好きなので、趣味としてやる。収入を得るのは別の方がよい。
 ・妻が嫌がる。
 ・女性一人で農家をするのは、結婚などを考えるとない。
 ・作るだけならいいが、備品の管理、収益の管理など考え出すと億劫。
 ・頑張っても報われない仕事。

 現状を把握せずに農業に対する想像で色々な意見がある。一番多い意見は「農業では生計がたたない」ということ。また収入面だけでなく、「農業を仕事にすると長い人生を考えた際に不安定な印象がある」ということも複数の方から聞かれた。
 新しい農業の担い手を多く生み出す為にはこうした問題点に注目して、考えていく必要がある。特に「日本において農業(特に専業農家)で生計が立てられるビジネスモデルを再構築すること」が何より一番大事ではないだろうか。





3.農業への展望
 
 果樹栽培を中心とした岡山県での歴史は古く、栽培技術の水準は高いレベルにある。しかし、果樹栽培の先進県である岡山県でも農家の高齢化や後継者不足等で、岡山特産のブドウ・桃でさえも栽培農家は減少しているのが現状だ。
 このような背景の中で農業経営を維持発展させ、地元特産の「ブドウ」「桃」を始めとした体験型農業や味覚狩り、地元特産物の直売を通じて消費者との交流を図りながら農地の遊休化を防ぐことを考える。同時に、耕作放棄地を借り受け、開墾のうえ市民農園として提供するなど、新規就農を目指す者に対しての支援活動ができるのではないだろうか。
 全国的な傾向として、有名な観光地であっても、団体旅行客の減少と、通過者(客)が悩みの種と言われているが、新規の客また次回には家族連れで来客、その次は友人の家族とリピータとなって訪れてくれるような一層魅力ある観光農園となることを望む。
 積極的な情報の公開等を通じて、さらには消費者及び地域住民との連携の下に、地域から活性化を行うことで、岡山県から日本と元気になるのではないだろうか。




まとめ
 
 現在の社会問題として少子高齢化が取り上げられる。また核家族化もその内の1つだ。
 高齢者では大変過酷な労働条件の為、辞めざるおえない現状でもある中で、観光・体験農業をおこなうことで、農業は地域住民・観光客とのコミュニケーションツールとしても考えられるのではないだろうか。
 また食物の好き嫌いが目立つが、自分で栽培し食することで、食物の大切さ・美味しさを感じることができるのではないだろうか。
 土に触れ、人に触れ、自然に触れることで人間味あふれた社会が築けると私は思う。