2017年9月 
 自衛隊生活体験入隊

『自衛隊生活体験入隊レポート』

春名 充明 (岡山政経塾 16期生)

1.はじめに
 私たちが仕事や日常生活で必要とされる、組織の中での規律、精神力、団結を高めること、及び日本と諸外国の安全保障戦略を学ぶことを目的として、自衛隊生活体験研修に参加した。
研修場所:陸上自衛隊日本原駐屯地
参加日程:平成29年9月23日(土)10:00~24日(日)13:30
研修内容:基本教練、格闘訓練、ほふく前進訓練、徒歩行進訓練、安全保障戦略講話ほか

2.仲間とともに
 秋晴れの午後、私は陸上自衛隊日本原駐屯地敷地内の芝生に伏していた。笛がやむと、私は再びほふく前進の体勢に入る。しかし、目的地ははるか遠く、疲労で手と足が前に出ない。
「今日は土曜日だし、みんな家で家族とゆっくりくつろいでいるんだろうな・・。私は一体ここで何をしているんだろう。もうリタイアしようか・・・。」
弱気な思いが頭をよぎる。
 ふと、横に目をやると、私と同じように苦悶の表情でほふく前進をしている人がいた。それは、私とともに研修を受けに来た、仲間だった。
「私だけリタイアするわけにはいかない、仲間とともに、この試練を乗り越えるんだ。」

 私は再び前進を始めた。


3.規律・精神力・団結力
 研修期間中、様々な訓練があるが、担当の自衛官は常に「着眼点」を持って訓練に望むように指導する。
 自衛官の行動の基礎となる基本教練では、「規律」が、格闘訓練では、「精神力」、ほふく前進では、「団結力」、そして、徒歩行進訓練では、これら3つすべてが試される。これらの要素は、普段私たちが仕事や日常生活を送る際に必要とされる人間の本質である。これらを高める意識で訓練することが、「着眼点」を持つことである。意識を持たないと、決して訓練を乗り越えることはできない。

(1)基本教練
 隊列を組み、指揮者の支持のもと、右や左に進むだけなのだが、これが奥が深い。まず、号令に即座に反応できない。動きも隣の人と動きが揃わない。さらに、行進すれば、歩幅や足並みが揃わない。
 しかし、全員が揃えようと意識すると、不思議と2日目には隊列が整っているのだ。仲間と呼吸を合わせ、同じ気持ちで行動することの大切さを学んだ。
(2)格闘訓練
 今回の研修で初めて挑戦した。1時間にわたり、ひたすらワンツーパンチとひざ蹴りの型を磨く。1時間もやり続けると、どうなるか、手や足が出なくなる、やめたくなる、弱気な自分があぶり出される。それでも、腹から声を出し、気力で乗り越えると、大きな達成感を感じられた。
(3)ほふく前進訓練
 この訓練も初めてだった。ほふく前進の型は5種類あり、場面や目的によって使い分けることを学んだ。

 この訓練は本当につらかった・・・

 1日目の最後に実施したこともあり、疲れがピークの状態で2時間も芝生を這いずり回っていた。体が動かなくなりそうになる度に、仲間のエールに励まされ、助け合うことの大切さが身にしみた。
(4)徒歩行進訓練
 恒例の訓練で、3回目にもなると、少し余裕を見せて集合していた。
 しかし、現実は甘くなかった。行進の際に背負うリュックには、いつもの2倍の20kgの重りが入っていた。行進前に背負うと、一歩動くのにかなりの負荷を感じた。正直、これは無理かもしれないと、誰もが思ったはずだ。それほど、重かった。そして、女性も同じ負荷をかけられていた。
 それでも、これまでの訓練で培った力は、確実に私たちに身についていた。励まし合いながら、この訓練を乗り切った。特に、女性2名が最後まで同行したのは、強い気持ちがあったからに他ならない。

4.日本の意思は、どこに向かっているのか
平成29年現在、日本の国家安全保障上の喫緊の課題は、北朝鮮の核開発、中国の台頭などが挙げられる。これらに対して、日本がどのような対応を行うのか、もはや他人事ではなく、全国民が関心を持ち、日本としての意思をはっきりと持つべきである。
 以下の表-1に、日本及び諸外国の軍事力を、表-2に各国の国家目的を示す。

表-1 各国の軍事力データ



表-2 各国の国家の目的


表中の内容について個人的に何かを述べることはないが、重要なのは、このような内容を日本人が知っておく必要があるということである。私自身、今回の研修を通じて、改めて調べてみたが、初めて知った数字や国家の目的も少なくなかった。まずは、現状を知り、そして、どのような日本のあり方、意思を考えていく必要があるのではないかと感じた。

5.おわりに
 自衛隊体験研修を終えて、思うことを列挙する。
(1)励ましながら、助け合いながら、研修を乗り越えた私たちは、より固い絆の仲間となった。
(2)国家安全保障戦略は、他人事ではなく、私たち全国民が関心を持ち、意思を明確にするべきである。
(3)2日間、こんなに激しく運動したのに、体重が2kg増えていた。間違いなく、日本原駐屯地のおいしいごはんを食べ過ぎたおかげである。