自衛隊体験入隊レポート
『人が持つ力』
萬成 沙織 (岡山政経塾 15期生)
昨年に続き2度目の自衛隊体験入隊。非日常の空間で昨年は「人を想う」気持ちを学びました。
そして今年は、厳しさを増した体験入隊の中で「人が持つ力」を感じました。
格闘
何をするのだろう。昨年とは全く違う日程表の中にある「格闘」という言葉。普段体を動かさない私にとって不安でしかありませんでした。
まず教官に言われたこと。それは「声が小さい」「返事」。自分がいつも言われていることでした。
なぜそうしないといけないのか?それは「伝えるため」相手との意志の疎通。そして苦しい状況でも「自分を鼓舞し仲間に力を与えるため」だと教えて頂きました。大きな声を出しお互いに励まし合い、言葉にすることで伝わっていることを確認する。
それを聞き、普段出ない大きな声が出せるようになりました。
そして始まった「格闘」。走る・動く、そして殴る・蹴る。今年は会社の上司と一緒に参加させて頂いたのですが、上司へ思いの丈を込めて思いきり殴っていると終わった時には手の甲の皮が剥けるというはじめての経験まで。
自分の普段の生活でも課題である「声を出す」ことの大切さと意味を教えて頂きました。
戦闘訓練
続いて始まった戦闘訓練。人生ではじめてする匍匐前進。実際の戦闘を想定して行われる1つ1つの動作。仲間に生きていることを伝えるために出す声。仲間を信じ、助け合って前に進んでいく。動きもぎこちなく不細工かもしれないけれど、恥ずかしさはどこかへ行っていました。
普段の自分とは違う自分を感じながら、一緒に行ったみんなとの間に訓練を通じて団結力が生まれたように感じ嬉しかったです。自分の事だけを考えていてはいけない。苦しいのは自分だけではないと思えるのは、一緒に頑張る仲間がいてくれるから。その力はとても大きいと感じました。
徒歩行進訓練
昨年、最もきつかった徒歩行進訓練。今年も覚悟して向かったのですが、荷物がまさかの20kg。昨年の10kgでも肩に食い込む重さにふらふらになりながら歩いたのに、歩ききれるか一気に不安になりました。
寝ころんだ状態から荷物を背負って立ち上がり、歩いてみるとあまりの重さにかなり前傾姿勢にならないとバランスが保てない状態。正直「無理だ…」と思いました。やはりふらふらになりながら1周目を何とか歩ききり、休息を取っている間に隊員の方が荷物の重りを入れる場所を変え、重心が上にくるように工夫して下さいました。みんなも少しでも痛みが減るようにと肩にタオルを挟んでくれたり、荷物を体に密着させて安定するようにと紐を締めてくれました。2周目からは荷物を背負っても自力で起き上がれない状態に自分でも驚きながら、でもみんなと隊員の方の助けで最初よりも歩きやすくなり、みんなの優しさに「まだ頑張ってみよう」と思えました。それでも体力は確実に消耗していくため何度も「もうダメだ…」と思いましたが、「頑張れ」「大丈夫だ」「もう少し」と励ましてくれる言葉に「最後まで荷物を持ってみんなと歩ききる」と心が決まりました。
苦しい時に自分はしてもらうばかりで、みんなの為に何かをしてあげることは出来なかったけれど、歩ききる事ができたのはみんながいてくれたからでした。みんなは「根性がある」と言ってくれるけれど、自分の力ではなくみんなが与えてくれる力が大きかったです。
最後に
人は支え合って生きている。だからこそもっと周りに目を向け、周りにいい影響を与えられる人になりたい。厳しい訓練の中で感じる自衛隊の皆さんの仲間を想う気持ちやみんなの優しさに触れ、自分に必要なことを感じました。
体力面は昨年と全く変わっていないけれど、厳しさを増した訓練に耐えることができたのは仲間がいてくれたこと、そして自分の心が少し成長したからかもしれないと思いました。
諦めない気持ちと、苦しい時に自分を支えてくれる仲間に感謝し、もっと周りに目を向けることが出来れば今の自分を変えていく事ができる。人が持つ力は大きいからこそ、自分の限界を自分で決めてはいけないのだと思いました。
人生で2度も自衛隊に入隊できるとは思ってもいませんでしたが、今年も参加できたことで新たな学びを得ることができ、そして昨年よりも成長した自分を感じることができました。
日本原駐屯地の皆さま、そして2日間一緒に過ごした16期生の皆さま、体験入隊に行く機会を下さった小山事務局長、本当にありがとうございました。