『自衛隊生活体験入隊レポート』
中山 真里 (岡山政経塾 16期生)
はじめに
「自衛隊生活体験入隊」のカリキュラムが、私にとっては例会の中で一番の恐怖でした。何か理由があれば参加しなくてもいいのではないか?と考えてみたものの、予定はすっぽり空いていて。その上、例会担当でもあり9月上旬までは参加するか棄権するか悩んでいましたが、一週間前にもなると腹も座り、「45歳、運動不足のおばさんがどこまで出来るか。これも挑戦!」と、秋風が心地よく木々の葉を揺らす、日本原駐屯地のゲートをくぐりました。
1.入隊
先ず、宿泊等に案内され、迷彩服を頂き着替えを行いました。初めて着た迷彩服は、とてもしっかりした生地にも関わらず、重さを感じない着心地に驚きました。
迷彩服にて入隊の申告を行い、記念写真を撮って頂き、駐屯地内の案内を受けました。広い敷地は、一回りするだけでも大変な距離でした。
駐屯地の中には、見たことない大きな車両や戦車があり、とても感激しました。きっとこのような機会がなければ、見ることもなかったでしょう。
2. 食事
食堂にて、昼食を頂きました。
私が一番驚いたことは、ご飯が「麦ごはん」だったことです。
他には「マンナンご飯(こんにゃく)」の時もあるそうで、体調管理をとても考えられているんだなと思いました。
主食もボリュームがあり、デザートや飲み物で乳製品も摂れる様になっていました。
カロリーについても、隊員の年齢毎に記されている表がテーブルの上にあり、毎日食事を作る母としても大変勉強になりました。
3. 基本教練
広いグラウンドに移動し、「基本教練」を行いました。
「気を付け」「休め」「右向け右」・・・等、一度は学校で習ったことのある動作でしたが、自衛隊の中での規律に沿ったキビキビとした動作は、最初はなかなか上手く出来ず苦戦しました。
また、号令をかける自衛隊の方の声の大きさに驚きました。黙って私たちの指導を見守って下さっていた方が、号令の瞬間にこだまが返ってくるような大きな声で号令を出して下さいます。必要な時と、そうでない時のこれも「規律」なのだということを学びました。
4. 格闘訓練
「格闘訓練」と聞いて、「私もやるの?」と、とても不安になりながら移動しました。私も何も関係なく訓練は始まり、先ずはウォーミングアップで、何周も歩いたり走ったり飛んだりしました。
これだけで、私の体は倒れそうなぐらい大変で、息は上がり心臓はバクバクになり、いつギブアップしてもおかしくない状態でした。
皆に遅れをとりながらも、なんとか終了し、本格的な格闘訓練です。
パンチやひざ蹴りのやり方を教えて頂き、声を出しながらサンドバックを殴ったり、蹴ったりします。
今まで、人をパンチしたこともなければ、蹴ったこともない私は、人生初体験。どんな気持ちだったかというと、初体験だけに、よくわからず、ただがむしゃらにしていた感じでした。

5. 戦闘訓練
格闘訓練で、ほぼ力を使い切った状態で、次は匍匐前進で、戦闘訓練を行います。
木製の鉄砲を持って、目的の場所まで、声を掛け合いながら、だんだん体制の低い匍匐前進を行い、最後は「やー!」と、大きな声で一撃します。
普通でも重いと感じている自分の体を、腕と膝だけで進んでいくことは大変難しく、また周りに自分の存在を知らせる為に、声を出し続けて前進します。
なかなか、上手く進めず、また大きな声がなかなか出せず、厳しく苦しい訓練でした。

6. 懇親会
へとへとになって宿舎にようやく帰り、入浴の後、痛い体をひこずりながら懇親会へ。
懇親会では、皆さん気さくにお話をしてくださいました。一番驚いたことは、ホームページなどで、私たち一人一人のプロフィールを読んで下さっていて、名前だけでなく何をしているかも覚えてくださっていて感激しました。
私も、仕事上沢山の方に会います。このような小さな気遣いがあると、とても嬉しいことを学びました。
7. 徒歩行進訓練
私が、最も恐れていた時間です。
朝五時に起きて、集合します。去年は10キロを背負って10キロ歩いたと先輩から聞いていて、「絶対無理だわ~。」と思いながら、出来るとこまで頑張ろうと自分に厳しく言い聞かせて参加しました。
にもかかわらず、今年は何故か。荷物の重さは去年の倍の20キロ・・・。
しかも、去年は二人で10キロを運んだはずなのに、今年は一人ずつリュックがあり・・・。
頑張りました。45歳、今年の参加者の最年長。頑張りました。
でも、1.5周で、荷物を下ろすことを決心しました。
最後まで、皆と同じように頑張れませんでしたが、途中、痛さや辛さと戦いながら、何度も諦めそうになる私に、隊員の方が「今、苦しいこと以外のことを考えて下さい。おいしいものや楽しいことを考えてください。苦しさにフォーカスすると、人間はいつ辞めるかを考え始めます。」と励まし続けてくれました。
本当に言うとおりでした。 自分の弱点がはっきり出ました。
この、徒歩行進訓練が一番苦しい訓練でしたが、その分一番勉強になり、今後の生活に大きな影響があると思います。
8. 講義
安全保障についての講義を受けました。いろいろな話を聞き、私が一番印象に残った言葉は、「自分たちが、一番戦争が起こって欲しくないと思っている。」と穏やかな口調ですが重みのある一言を話されました。
政治に関わる人、一般の人たちが、ただただ、「戦争は良くない、反対!」と言っていますが、もっと自衛隊の方はそのために命の危険が誰よりも近くにあって、逃げられない現実となると思うと、本当に言葉に出来ない任務を行っているのだと改めて尊敬の気持ちでいっぱいになりました。
最後に
母からも体のこと(年齢的に)が心配で、参加を反対され、自分自身も不安で仕方なかった自衛隊生活体験入隊。
本当に死ぬかと思うくらい苦しかった。でも、人間はそう簡単にも死なないし、心の持ち方でどんなことも出来る。出来ないと決めるのは、本当に自分自身なんだなと、本当に貴重な勉強をしました。
これからも、「出来ない」を言わない挑戦し続ける人生を重ねて行くことを改めて、心ノートに書き留めました。

また、自衛隊の皆さんとお酒を飲みたいです。
そして、その時はお酒の力を借りて、必ず彼氏をゲットします!