2016年12月 
 伊勢神宮・おかげ横丁 視察

衰退から繁栄復活の「おかげ横町」

中西 充 (岡山政経塾 15期生)

1. はじめに
 三重県の「おかげ横丁」と「伊勢神宮」、この機会を得るまで個人的にまったく知る事のないところでした。
 こんなにも充実した素晴らしいところを、知る事のなかった自分が恥ずかしく、学ぼうとする姿勢が欠如していることを自覚しました。
 今回はこのような機会に恵まれ「おかげ横丁」のこれまでの歩みを、視察と講演で知ることができました。
参加日程:2016年12月10日(土曜日)
研修内容:伊勢神宮・おかげ横丁視察 
     株式会社 伊勢福 橋川史宏代表 講義
     
2. おかげ横丁 概要と歴史
 伊勢神宮に隣接する「おかげ横丁」に関して、簡単な概要をまとめてみたい。
施設情報
テーマ:お蔭参り
管理運営:株式会社 伊勢福
※関連会社は全部で7つある。
面積:4,000㎡
総工費:140億円
店舗数:伊勢福直営31店舗 委託18店舗 赤福直営8店舗 合計57店舗
来場者数:500~600万人(主に平成24~26年の平均値)
オープン:1993年
※一部wikipedia参照

 昭和50年代頃から、商業地としての衰退が激しく、一時は年間観光客が20万人にまで減っていた。
 そこで三重県のお菓子として有名な「赤福」が創業の地でもあるここに、総工費140億円をかけ「おかげ横丁」の創設を行った
「おかげ横丁」完成後は、順調に観光客は増加し、今では年間500万人超が訪れるまでになっている。
これには、やはり赤福の地元愛あったらばこその「事業と成功」ではないかと、強く思う。
 橋川社長の講義では、そんな思いが強く感じられ、ぶれることのない、そして諦めないプロジェクトへの姿勢が伝わってきた。

3. 「おかげ横丁」視察で感じたこと
おかげ横丁に来たとき、瞬時に「千と千尋の神隠し」のイメージが沸き出した。


 ノスタルジック(郷愁)な感覚に襲われる雰囲気がそう感じさせてくれる。
古来より日本人が併せ持つかのような不思議な感覚に捉われ、自身の潜在意識深くにまで、刺激を齎す。
 そして、瞬時にこうも思った、「倉敷美観地区にはないものが、ここにはたくさんある」と。
 それは訪れる観光客を飽きさせない仕組みだ。考え抜かれた店舗の配置、地産地消の飲食物を被ることなく配置させ、歩く楽しみを提供している。観光客には次から次へと目新しいものが目に入ってくるに違いない。またしっかりと神楽や民族系の演奏などの演出も行われており、見る楽しみ、食べる楽しみ、聞く楽しみの三拍子が見事に調和し、揃っている。
 そしてそれが互いに相乗効果を出している。
一方 倉敷美観地区では、この三拍子が残念ながら揃っていない。一度通り過ぎるとそれで終わりといった味気ないものとなっている。また同じような飲食店が乱立しており、訪れた観光客もどこを選んだら良いのか分からなくなる。また流行りに乗ったものが多く、そこには確固たるアイデンティティがない状態となっており、それを観光客も感じている状態だ。
 いちばんの差異を感じたものは何なのか、それは一言でいうならば「また来たい」と思わせるか否かだ。

これは美観地区にはない要素ではないだろうか。
観光地ではあるが、そこに共通のテーマはなく、各店舗が自由に商売をしている。決して否定する訳ではないが、なにかバラバラとしたイメージを感じてしまう。
 美観地区が以前より通過型観光都市として問題視されていた。滞在時間も平均2時間程度でツアーもちょっと散策して昼食をとって終わりと言った流れになっている。
 回遊型観光都市を目指しているが、その目処は立っていない。

 また「おかげ横丁」は伊勢神宮に隣接しているため、更なる相乗効果を出しているように感じた。
 両者を行き交うことに対して、抵抗はなくスムーズにアクセスできることは非常に魅力的に感じ、ちょうど良い観光気分を味合わせてくれる。

 美観地区にも阿知神社や大原美術館 アイビースクウェアなどの施設があるが、どれもうまく生かし切れていないように感じる。むしろ連携が取れていないと表現しても良いかも知れない。

 そんな伊勢神宮の参拝客数を調査してみたところ。近年参拝する人の数は増加の一途を辿っているようだ。
 海外からの観光客も増加しており、目が離せない。
伊勢市観光統計参照

4. 橋川社長の講義を聞いて
 まず町並みの在り方を聞いて、これこそ美観地区との違いを痛感させられた。
なるほど 切妻を90度に向けた仕掛けは町並みの一望を一変させることが分かった。
おかげ横丁の風景
美観地区の風景

 この違いは個人的には衝撃的であった。
なるほど切り妻を90度傾けることだけで、こんなにも見え方が変わり、在り方を変えてしまうのか。

 美観地区は清楚な感じがするのだが、がしかしそれ止まりになっている感が否めない。
 おかげ横丁は、どうだろう、城主のいる賑わった下町といった風情が言葉として妥当だろうか。賑わいを感じる一方である。遠くの方まで目を凝らして街を見ることができ、何かがある期待感を醸しだしてくれる。

 また狭い路地を敢えて演出し、人々の行き交う密度をあげている。
 バリアフリーという観点からは外れるが、中西は幼児用のバギーを走らせたところ、とくに困ることはなく、ストレスに感じることはなかった。

 人々が袖触れ合う距離感、互いに温もりを感じる距離感は、風の強い寒い時期すら忘れさせてくれる何かがあった。

 他にも日本古来の風土画であろう、「かまど」や「煙突」、「瓦」、「しめ縄」 などを随所に盛り込み、細かな視覚的要素にも充分に演出をPRしていることが分かる。

 飲食に関しては、やはりかなり力をいれているようで、細かく配慮したことが分かる。郷土料理を上手く盛り込み、やはり三重県のものを中心に、ときにそれ以外のものも柔軟に取り入れ、お客さんが楽しめる仕掛けをしていることが分かる。

 創設当初は250万人の観光客を見込んでいたと橋川社長は話していたが、今や500万人、想定の倍である。

 現在、年商43億円ぐらいとのことで、今後も更なる取り組みを行うとのこと。
 個人的には、観光客には海外の人々も多く見受けられた。今後もっとこの分野を開拓すれば、観光立国を目指す日本に多大に貢献できる、日本の文化を世界に伝えることのできる「おかげ横丁」になるのではないか、そう感じた。

5. 終わりに
 やはり「おかげ横丁」を、これまで知ることがなかったことが何故なのか、未だに自問自答であり、これまで行くことが無かったことが悔やまれる。
 知らなかったでは済まされない魅力をそこに強く感じた。
 逆に言えば、今回の機会がなければ、行くことなく終わってしまっていたかも知れない、そんなことを考えると、自分自身がまだまだ見知らぬものが、やはりあるのだと痛感するとともに、まだまだ学びの姿勢が足りないことを改めて自覚した。
 小山事務局長が言った、「単に行く」と「しっかりと学びを得るために行く」とでは、まったく価値が違うと言う言葉に、とても共感を得た。
 今回も単に観光で行くのではなく、あくまでも現地を見て学び、そこから何かを学びとることで、何倍にも人生という経験が豊かになるのだと知った。

こうしたことは自身の今後の人生に於いて、とても価値のある機会でした。

ありがとうございました。