2016年12月 
 伊勢神宮・おかげ横丁 視察

心のふるさとへ

和田 万里奈 (岡山政経塾 15期生)

■はじめに
2000年の歴史を持つ内宮、ここのほとりを流れる五十鈴川の初冬の紅葉を楽しみながら「おかげ横丁」へ足を踏み入れると、昔の日本へタイムスリップしたような錯覚が起きました。
季節ごとの催し、伝統的で特徴的な街並み、郷土料理、特産品や伊勢土産、紙芝居や太鼓の演奏など非現実的世界の情景が目に飛び込んでくる。
それがなんだかとても心地良い。きっとこの場所を訪れると、誰しも日本の伝統文化の素晴らしい価値に気づき、心のふるさとへ帰ることができるのであろう。

■日本一滞在時間の短い観光地からの脱出
おかげ参りが盛んで日本全国から伊勢を目指して参拝者がやってきていた江戸時代は内宮前のおはらい町は賑わい、栄えていた。
しかし、戦後の交通の発達やレジャーの多様化により、すぐに次の目的地へ移動する観光客が増え、おはらい町への立ち寄りが減り昭和の終わりごろには1年間に数百万人きていた観光客が20万人となり、衰退した。
この状況を危惧し、当時の赤福の浜田益嗣社長が「伊勢神宮の参拝客をもてなす場を作り、町を復興させたい」と昭和60年に立ち上がった。
赤福は地域の人々と共に魅力ある街並みを作ろうと、おはらい町の中心部に400m四方の新しい町を平成に入って建設した。その町こそがおかげ横丁である。平成5年7月に完成し、創業した。「赤福」が『約300年間変わらず商いを続けてこられたのもお伊勢さんのおかげ』との感謝の気持ちを込めて立ち上げた。
約4000坪の面積に55店舗が立ち並ぶおかげ横丁は、事業の運営は赤福の関連会社である、有限会社伊勢福が行っている。
訪れる観光客からすると、店主が異なる1つ1つの店舗が集まっておかげ横丁ができていると思うが、実際は1つの会社が各店舗を運営している。
そうすることによって、ぶれることなくコンセプト通りの町づくりができる。実際に、おかげ横丁は開発をはじめた赤福の考え「参拝客へおもてなし」を基盤に神恩感謝・伝統文化・伊勢の商人という戦略、戦術での運営を行っている。
昭和60年に年間約20万人だった観光客が平成25年には650万人を超えた。おかげ横丁は大成功である。

■おわりに
おかげ横丁へ訪れる観光客はリピート率が高い。
それはこの場でしか体験できないコト、ここでしか味わえない料理、ここでしか手に入らないモノに加えて、心が温かくなるおもてなしで満たされる場所であるからだと考える。観光地や町づくりには個性と魅力が大切である。と今回の視察で私は一番に感じた。
伊勢福の橋川社長に、「今後はどのような成長を目指すのか」と質問したところ、「おかげ横丁で働くことに憧れてもらえる会社にしたい。」と話されていた。現状でも現地現場主義を大切にしているそうだ。
従業員の満足度こそが顧客満足へ繋がるのだろう。今後のおかげ横丁がどのようにますます発展していくのか目が離せない。

今を生きる私たちは、2000年後の日本にどのようなメッセージを送り届けることができるだろうか?自分と日本と世界の未来へ想いを抱きながら、内宮に参拝して伊勢をあとにしました。