豊後高田市から学ぶ地域の視点
―昭和の町のまちづくり―
西井隆之 (岡山政経塾 17期生)
今回2度目の訪問になる豊後高田市は、「昭和の町」と「教育のまちづくり」でテレビでも多く取り上げられ、特集されている。また、映画のロケ地としても使われており、話題作りの成功例ともいえる。
昭和40年代までは最も栄えた商店街が「犬と猫しか通らない」と言われるほど寂れたが、そこから114万人の観光客が訪れるようになった地域再生と「住みたい田舎」全国1位に選ばれた事例をこの目で再確認するため訪問した。
2. 昭和の町
店街は一歩入った途端懐かしさを感じる。それもそのはず、衰退のために建て替えが進まなかった昭和30年代以前の古い建物が残っているのを逆手に取り、商店街の中心に昭和30年代の街並みを再現したのだ。商店街の店は、店の歴史を物語るお宝を「一店一宝」として店頭に展示し、その店ならではの昭和の頃からの逸品を「一店一品」として販売している。また、おもてなし力が高く、体験型のものも多く観光客を楽しませる事も魅力なのだと思う。
町の人たちの声として、昭和の町は一過性のブームで終わらなかったとおっしゃられていた。実際駐車場には6台の観光バスが停車しており、皆地方から観光に来ていた。
昭和を知る世代は懐かしく、平成しか知らない世代には目新しく新鮮に見えるのだと思った。
3. 教育のまちづくり
豊後高田市が注目される最大の魅力は「教育」だ。市全体で取り組む教育への連携がとても素晴らしい。自治体が運営する「学びの21世紀塾」は学びの3本柱からなる3つの事業体で成り立つ。
① いきいき寺子屋活動事業 指導者は塾経営者、教員免許を保有している一般市民、退職校長会の会員や指導する分野に堪能な市民講師や教員で、5つの活動から子供たちが希望の講座を選びいきいきと活動している。
② わくわく体験活動 市内の各地公民館と学校を中心に週末や平日の放課後を利用して、子供たちが日頃体験できない活動を行っている。
③ のびのび放課後活動事業 健やかな心や体づくりを目指し、放課後を利用してスポーツ活動が盛んに行われている。保護者、地域住民、教職員指導の下、少年野球、少女バレーなど29団体が登録され活動している。
この取組は5歳児から中学生を対象としており入塾すれば受講料は無料となっている。
この「教育のまちづくり」は21世紀塾だけではない。なんといっても『住みたい田舎ランキング』が第一回から6年連続でトップ3入りを果たしており、人気の移住地になっていることだ。高校生まで医療費無料や幼稚園、小中学校の給食費無料や子育て支援拠点の設置など支援策がパワーアップしていることが、とことん未来を担う子供と、子供たちを育てる親の環境に寄り添っているように思う。
4. おわりに
豊後高田市は古き良き昭和の風景が「昭和の町」に反映され、古き良き人との繋がりが「教育のまちづくり」に反映されているのではないかと思う。今は便利な世の中で、不便に思うことが少なくなってきた。特に教育に関しては世代を超えてお互いをサポートしあう温かみのある「繋がり」を感じることができた。SNSの普及である意味「繋がり」はあるが、人間味あふれる繋がりを感じづらく思う。豊後高田市は人の住まう環境の不完全さを人や建物、行政それぞれの得意分野でサポートしあう成功例だと改めて感じることができた。