『自衛隊生活体験入隊レポート』
萬成沙織 (岡山政経塾 15期生)
日本原駐屯地に1歩足を踏み入れると、迷彩服・銃・戦車。そこには非日常の空間が広がっていました。
今回の体験入隊でわたしが1番感じたことは、自衛隊の皆さんの「人を想う」気持ちです。
天幕設営
まさか外で寝るとは。駐屯地に到着してまず取り組んだのは、今日寝る場所を作ることでした。それぞれが自分のやるべき事を考えながら行動し、協力し合っての設営。男性が力仕事かと思いきや、わたしもハンマーで思いきり地面に杭を打ち込み、次の日に手のひらが筋肉痛になるという初めての経験をしました。出来ることは自分でする。そして全員で取り組む。隊としての「団結」を学びました。
10km徒歩行進
6時起床のはずが、なぜか真っ暗闇の中5時に起こされ「今から歩きます」。
訳が分からないまま急いで準備をして集合。慣れない10kgという重さの荷物を背負い、いきなりの10km徒歩行進。寝起きの低血圧と肩に食い込むほどの重さの荷物でふらふらになりながら1周約3.3kmのコースを3周。
普段、歩くことにはそれなりに慣れていると思っていましたが、最初の1周で疲れ果ててしまうという現状に「あと2周もある…」不安に思っていると、隊員の方に「次は荷物なしで行きましょうか。10kmを歩ききる事が大切なので」と言っていただき2周目は荷物なしで歩きました。
歩きながら隊員の皆さんが「大丈夫ですか?無理せず言ってくださいね」と常に声を掛けて下さる優しさと、私の荷物を背負って一緒に歩いて下さる隊員の方、前を歩く同期の皆の姿を見て、「最後の1周は絶対に自分で背負おう。苦しいのは私だけじゃない。全員で歩ききる!」という気持ちになりました。
目的と手段
10kmを歩ききり戻ってきた時に中隊長に言われた言葉が忘れられません。
「歩くことは目的ではなく、手段です。災害派遣時など目的地に着くための手段として歩き、そこから我々の活動は始まります」
実際には私たちの何倍もの荷物を背負い、何倍もの距離を歩いて活動する隊員の方々。苦しい時は目の前のことでいっぱいになってしまうけれど、何のために何をするのか。「目的と手段」の考え方に気付かされました。
士気
「いつかに備え、常に準備を行う」自衛隊の皆さんのモチベーションはどこにあるのだろう。「守りたい」その言葉だけで過酷な訓練に耐えることが出来るのだろうか。隊員の方が「自衛隊は人と接する仕事です」とおっしゃっていたのが印象的でした。「自分」だけではいけない。人を想う気持ちが無ければ自衛隊の環境の中で生きることは難しい。体験入隊の間、常に私達の体調を気にかけて下さる隊員の皆さん。仲間に対しても同じように気遣い声を掛ける姿を見て、たくましさと共にある優しさを感じました。
最後に
人生の中で、まさか自衛隊に入隊する日が来るとは思ってもいませんでした。はじめて見るもの触れるもの、そして経験すること。今まで安全保障に対する知識も浅く、身近に感じることの無かった自衛隊ですが、今回の体験入隊を通して自分の視野を広げ、興味を持ち考えるきっかけとなりました。
日本原駐屯地の皆様、本当にありがとうございました。