2016年9月 
 自衛隊生活体験入隊

『自衛隊生活体験入隊レポート』

中西 充 (岡山政経塾 15期生)

1. はじめに
自衛隊、個人的には大学時代から海上自衛隊の知り合いがいます。
飲みに行く際は、よく海上自衛隊の話を聞いては、その厳しい世界観に圧倒されながら、ふと「彼らは戦争が起きない為の戦いを日々行っている」のだなという考えに至りました。
今回、陸上自衛隊ということで、よく企業研修などでも聞き及んでいたので、内心レクリエーション的な感覚で参加に望みました。
自身も大学時代そして社会人になってから、柔道という所謂 武道系出身だったため、こうしたイベントはむしろ楽しみでもあるという感覚で実際に入隊をさせていただきました。


2. 入隊後に関して
まずは自衛隊ということで野営は基本なのか、テントの設営からスタートし、自身が知っているアウトドア系のテントとはかなり違った、頑丈なテントに感服しました。但し、やはり設営にそれなりに労力と技術が必要であり、様々な条件の中で、この設営をキープするのは、なかなかたいへんであろうことは想像に難くありませんでした。

更に一番に驚いたのは、担当の自衛隊の人の良さです。勝手な思い込みですが、はじめは内心それなりに無表情な人たちなのかなと思っていましたが、その予想は良い意味で裏切られました。皆さん、軽いジョークやボキャブラリーを持っており、コミュニケーションがきちんと取れる人たちという意味では、こうした対外的な要素も、日ごろから求められているのかなと思いを馳せるのでした。
考えてみれば、例えば災害地へ派遣されたとして、地元の人たちと協力しながら任務をこなさなければならない状況下では、現地の人とのコミュニケーションは必要不可欠で、また関係者を不安にさせてならない、そういうシーンが想定される訳で、最終的には少しでも円滑に物事を進行させるためには、こうした要素も重要なコンセンサスなのだろうと理解しました。
3. 自衛隊の御食事に関して
率直に非常にバランスの取れた食事を毎日三食取っていることが、よく分かりました。隊員が「健康」というものを非常に重視しているという言葉に、ひどく納得がいきます。自身も自分の会社ではスタッフの健康を考えなくてはならない立場にあり、最近はとくにそれを意識していたので、非常に良いタイミングで、こうした機会に巡り会えたことを感謝するのでした。
ただ、隊員の中にはお食事を残す方もそれなりに多く見受けられ、こんなに栄養価が高くバランスの取れた、そして美味しい食事を、なぜ残すのか理解不能でした。やはり日ごろから食べ慣れると、飽きて来るのでしょうか?今でもそれは残念な場面として記憶に刻まれています。
なんだか和田さんの卒論テーマ「子ども食堂」の事が頭の中でシンクロし、もったいないお化けを意識してしまいます。
それとなく残した隊員に理由を聞いてみると、とくに他意はなく単に腹が減っていないとのことで、だったら食べられる量だけ皿を取ればいいのではないかなとも思ったり、複雑な気分でした。
自分の会社では好き嫌いの激しいスタッフもおり、こういうところへ研修で入隊させたら、少しは改善されるのかなと淡い期待を込めたりもしています。


4. 戦車試乗
こんなにも乗り心地が悪いとは、まったく想像していませんでした。
とくにカーブする際の移動は、カクカクでこれはもはや乗り心地と言うものは一切考慮されてないのだなと思わざるを得ませんでした。
しかし歴40年の戦車、確かに近代戦争に取り残されている感は半端ありませんでした。実際にこれで戦地を赴くということは、もはや自殺行為なのではないかと思うぐらいで、せいぜい弾幕を張り防衛線を維持するぐらいが関の山ではないかと。
近代戦ではやはり制空権がものをいうかと思います。戦闘機、戦闘ヘリ、こうした対象へ如何に対応できるようにするか。
どうしようもなく対空兵器が必要であると思うし、速射砲が必要だと思います。
ちなみにちょっと戦車事情をサーチしてみたところ、日本には10式戦車が富士駐屯基地にあるようで、三菱重工開発の最新鋭が配備されていることが分かりました。動画を見て、カーブをスムーズに曲がっているのが分かり、機動性に半端なく差があることが分かります。
逆に言うと日本原がそれほど重要なポイントではないのでしょうか?
以前は1000人近くいたとあり、現在その半数500人程度。国家の防衛網におけるその変化が見て取れます。
最後にできれば実弾を発射するところも見てみたかったです。その命中度もさることながら。


5. 夜の懇親会にて
隊員のプライベートなことなどを知ることができ、陸上自衛隊の制度も知ることができ、非常に有益な時間でした。
しかも基地内に居酒屋があるとは、呆れるほど驚きました。
いずれにしても、酒にもよく付き合っていただいて、とても親近感を得ることができ、一歩引いてみれば、同じ国民であり住民であり、それぞれ過程を持つ人たちなのだと。


6. AM5:00 行進
正直に言います、ほんとやばかったです。二日酔いも冷めやらぬときに、予告なしでいきなり叩き起こされ、「????」が続いていました。
しかも10キロのリュック背負って。喘息持ちの自分にはこういう持久力的なものは致命傷で、頭の中では常にレッドアラームが鳴り続けていました。ここで重要なのは完走だと自分に言い聞かせ、とにかく前へ進むことに意識を集中させました。
隊員曰く、通常は20キロを背負って20~40キロ歩くと聞き、やはり基礎体力のある人たちでないと、本当に務まらない職務だなと思うばかりで、喘息持ちの自分なんて決して足を踏み入れてはいけない世界かなとも思いました。任務先で喘息で「ひーひー」言ってたら、何をしに行っているのか分からないと言った感じでしょうか。ちょっぴりそんな自分に僻み乍らの行進でした。

7. その後の講義
事務局長が突っ込んだ、年数間違いの講義。小山事務局長が言う事も分かります。内容自体も淡泊なものを感じ、そこに熱意のようなものを感じることはできませんでした。
つまりは、この講義での最終的な落としどころがまったく見えてこなかった。下手をすると単にグループディスカッションのような形で終わっていたかのようでした。「答えはみんな各々で導き出してね」的な。
確かにもう少し深く掘り下げた内容が欲しかったのも確かです。
でも個人的には10キロの行進で、相当へばってたので、いつ気絶しようかなと甘い考えでグロッキー状態がすべてを支配していました。


8. まとめ
今回の体験入隊で感じた事、それは自衛隊の基地なのだろうが、どこか学校のような雰囲気も感じられたこと。やはりもっと現実的な訓練を垣間見たかった気持ちも確かにありました。
もっと日本と諸外国との関係について議論したかった気持ちもありました。ただしそれは彼らが隊員である以上、中立的な立場を臨まなければならないことも理解できます。
彼らの戦いはどこにあるのか、単に災害派遣だけなのか、PKO的に海外へ派遣され現地での任務なのか。
この日本に於いて、どのような形で平和維持に関与しているのか、もっともっと知りたかった気持ちがあります。
しかし、それは海上自衛隊の知り合いから、いろいろ聞いていたから、そう思ってしまうだけかも知れません。
そうした意味では、僕たちは陸上だけでなく、海上自衛隊 航空自衛隊 それぞれを知って行く必要が或はあるのかも知れません。