地元の、地元による、地元のための街づくり~高松丸亀町商店街の挑戦~
高田真也 (岡山政経塾 16期生)
○はじめに
高松丸亀町商店街振興組合 理事長 古川康造氏より当街の再開発について講演頂いた。講演の中で、最も印象に残った3点と視察の感想を報告する。
○全員で利益をシェアする発想

上記写真のように、土地の所有権と利用権を分離するという発想、地権者全員の同意を得たこと、まちづくり会社なる会社を組織し、利益をシェアする仕組みを実現させたことが最も感心した点である。瀬戸大橋の開通によって街の衰退が予測される背景があったとはいえ、資本主義のこの世の中で、この仕組みを考えた人、実行に導いた方の労力は計り知れないと感じた。また、定期借地権という発想、60年経てば建物はすべて取り壊し、更地にしてお返しするということであったが、60年後に本当にそうするのか。街の形成・成熟を考えれば改修して継続させる方がよいようにも思えるが、街を人の体と同様に考えるなら、新陳代謝が定期的に行わる方が時代の、地元のニーズにあった街に生まれ変わると考えたのかと推察した。
○公共性の追求

競争原理の資本主義においては、隣の商売人は敵である。みずからが利をあげ、競争に勝ちぬかなければならい。経済成長と共に右肩あがりの発展をとげる時代であればこれで良かったのかもしれないが、デフレや人口減少が予測される世の中においては、資本主義もいきづまっている感がする。そんな中、公共性に目覚めるということは、資本主義につぐ、時代に即した新たな、モデルになるのかもしれないと感じた。組合単位の組織で結集しているので、組合員は利益を享受するが、組合に入っていない隣接する町は、例え組合に入りたいとしても加入を認められない。我が町の発展はのぞみ、隣接する町は市からの交付金が分散されることになるため、加入をよしとしないということであった。個単位の競争でなく、町単位の競争であるなら、それも資本主義であることに変わりはないのかもしれない。ただ、自分の町さえ良ければいいというものだけではないとのことであった。丸亀町が発展することで、同時に隣接する町内も通行量が増え、発展につながっているという説明であった。力を1局、1町に集中させることで、まわりの町の発展も誘発させているという事実に、人間社会の発展の典型、セオリーを見た気がした。
○自宅で医療を

街の再開発の中心を高齢者に絞り、高齢者が住みやすい街づくりとした発想に感動した。街の将来を考えれば、若者を中心に発展する街づくりしようとしそうなものだが、十分なマーケティングを行った上で、若者は車を使用した郊外での生活を求めている。高齢者の生活がそこにあることこそ、街の発展につながるとした考えを、英断だと感じた。高齢者の生活を支援する立場にある私にとって高齢者を主体にした街づくりは、理想であった。自分達の老後の未来はどうありたいのか。そのモデルが丸亀町にある気がした。高齢者になれば、医療・福祉は切り離せない。地域が広範囲になればなるほど、医療・福祉人のマンパワーも足りなくなる。しかし、丸亀町は高齢者の住まいの中に、病院を設置し、医師は往診という形で診療する。医師にとっても、往診の巡回効率が良く、診療報酬も点数上高い。生活している高齢者も安心というWIN・WINの関係が成立していると感じた。「老後は施設で暮らす」は人間にとって幸せなのか、疑問である私にとって、「自宅は世界最高の特別室」は大変魅力のある言葉だった。
○おわりに
丸亀町商店街を視察して、人通りの多さ、活気、飲食店や、品ぞろえの豊富さを感じた。シャッターを閉めている店がなく、街全体が生き生きしている。アーケイドの中に、有名ブランド店がひしめいている。年代層も決して高齢者ばかりという印象ではない。これと比較するように翌日、岡山市問屋町、岡山市表町商店街を歩いてみた。問屋町は無骨だが若者のエネルギーを感じる。ファション店、雑貨店、飲食店など若者の好みそうな店が立ち並ぼうとしている。なにより車が路上駐車できるのが良い。多くの車が路上で縦列駐車し、みなが街に繰り出している。一部が西洋の街並みに思えた。また、表町商店街は日曜日でもあるせいか、人通りがないわけでない。残念なのは気軽に腰を下ろせるベンチ、シートが少ないこと。駐車にお金がかかること。城下市営地下駐車場など、もう少し地下にて拡張し、無料開放すれば今より人通りも増えないだろうか。丸亀町の言葉を借りれば本当にお客がほしいと思うものを用意することが大事。今ある姿が時代のニーズにあっているのか感じ、常に改革、改良していかないと、いつの間にか荒廃してしまう。過去の栄光にしがみついていてはいけない。