2017年6月 
 丸亀商店街視察

丸亀商店街視察レポート

若旅啓太 (岡山政経塾 16期生)

 40万人の人口の街の休日に3万人の買い物客が訪れる商店街がある。香川県高松市の中心市街地、高松丸亀町商店街だ。全国の市街地が抱えるシャッター街の解決、そして商店街の再生を軸としたコンパクトシティ化による地域の活性化の事例として注目されている。今回はその一大プロジェクトの旗振り役となった高松丸亀町商店街振興組合の古川康造氏にお話を伺った。

・丸亀町商店街衰退の経緯
 瀬戸内海に面した香川県高松市は昭和63年に瀬戸大橋が開通したことで本 
 州とのアクセスが向上した。当時、地域活性の起爆剤と期待されていたが、 
 皮肉にも商店街衰退の契機となってしまったのである。高松へのアクセスは
 船便に限られていたが、本州と地続きになったことで物流の便が良くなった
 ことや大規模小売店舗法の改正で地元との調整が必要無くなったことも相ま
 って、大手資本を背景にした大型商業施設が高松市に乱立したのだ。平成7
 年には休日1日あたり35,000人の通行量を誇った商店街も平成17年には
 9,500人まで減少し、シャッター街と化した。

・丸亀町商店街独自の再開発
 シャッター街と化した丸亀町商店街を再生するためには商店街全体を管理し、
 自由度の高い意思決定の在り方が必要だと気付いた振興組合はまちづくり会
 社による抜本的な問題解決に乗り出した。興味深かった取り組みを以下に紹
 介する。

① 定期借地権を用いた市街の再整備
土地の利用権は所有者にある。また土地は一度貸すと借主に既得権がつくた 
  め土地の所有者は土地を貸すことに消極的であった。そこで第3セクターの 
  まちづくり会社と地権者の間で60年間の定期借地権を結び、土地の利用権
  を地権者から取得したことで丸亀町商店街のお店や施設を自由に再配置す
  る『テナントミックス』が可能となった。街区ごとがコンセプトを持つこと
 で業種の偏りが改善され、利用者の欲しいものが揃う商店街となった。

  A街区:ドーム広場&高級ブランド
  B街区:美容、健康、ファッション
  C街区:美容、健康、ファッション
  D街区:アート&カルチャー
  E街区:ファミリー&カジュアル
  F街区:ファミリー&カジュアル
  G街区:ホテル、マンション

② 在宅医療と住宅整備
丸亀町商店街のバブル前にいた居住者の数およそ1,000人だったが、バブル後には70人にまで減少した。それを解決するために商業施設だけでなく住宅や病院、住民が集まれる広場などをG街区に整備した。商店街は元々、人々が暮らす場所であったという考えからである。高齢者をターゲットにしたマンションを整備し、その中に診療所を開設することで在宅医療を簡単に受けることができるという仕組み作りを行った。回診は診療報酬が高いため診療所側にもメリットがあり、商店街、居住者、診療所3方良しの関係となっている。また重大な病気が見つかった時には提携した大学病院等の後方支援病院に送られ、適切な処置を受け、在宅で予後を見てもらうことができる。移動手段の乏しい高齢者にとっては痒いところに手が届くものとなっていた。

・ 提言
新宿歌舞伎町商店街やアメヤ横丁商店街、吉祥寺サンロードなどと比較すると飲食店の割合が少ないように感じた。衣類や雑貨の豊富さが目を引くが、1家庭あたりの消費で多くを占めるのは食費である。また外食はレジャーでもあり他地域からの観光客のさらなる流入も見込むことができると私は考える。飲食店の配置を進めることで地域内の税収も増え、地域内での生活がより一層便利なものになるのではないだろうか。税収が上がることは商店街だけでなく、香川県の利益にもなる。衣(医)・食・住の全てが高いレベルにあることがコンパクトシティに必要だと感じた。

・ 所感
私の住む和気町にもシャッター街と化した駅前商店街や住み手のいなくなった空き家街が乱立し、町全体の問題となっている。耕作放棄地や空き家など町の再整備を阻んでいるのは土地権利が大きく関係しているため、解決策を考える上で今回の視察は大変有意義なものだった。今回の視察では商店街の内部だけしか視察できなかったので、コンパクトシティの実態を肌で感じるべく、再び現場に訪れ郊外の様子も見るようにしたい。和気町の持続的な発展のため、これからも現地で多くの知見を蓄えるようにしたいと思っている。