2016年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

萬成沙織 (岡山政経塾 15期生)

はじめての直島・豊島。こんなにも素敵な場所が身近にあったなんて。島では自然・地域と共にアートが存在し、美しく自由な魅力で溢れていました。

○現代アート
今まで現代アートは、「独創的で難しい」「意味がよく分からない」と思っていましたが、今回、西美さんに案内していただきながら直島の現代アートに触れ、作品の見方を教えていただくことで、アートを身近に感じ、とても楽しく見て・聞いて・体感することができました。
地中美術館では、地中にありながら自然の光で作品を鑑賞し、天気や時間によって様々な変化を見ることができる。わたしのお気に入りは、ジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」。限られた空間から空を見上げているはずなのにとても開放的で、不思議な感覚でした。
アートと建築。それぞれの作品のために設計された空間には無駄がなく、建築もアートとなり、作品だけではなく空間を見る楽しみもありました。

○家プロジェクト
のれんが掛かった雰囲気のある町並みを歩いていると、何だか不思議な名前の表札が。「屋号」と呼ばれる、苗字とは別のニックネームがそれぞれの家にあるそうです。家プロジェクトは空き家を改修しアーティストが作品にするだけではなく、住民も参加したプロジェクト。町全体がアートとなり、歩いているだけで様々な出会いがありました。
一歩家の中に入ると静寂に包まれ、家の歴史と共に作品を感じることができる。千住博の作品《ザ・フォールズ》は眺めていると滝の音が聞こえ、マイナスイオンが部屋に満ちてくる気さえしました。

○豊島問題
史上最悪といわれる豊島の産業廃棄物不法投棄。なぜこんなに酷いことができるのだろう。自分や自分の大切な人々が暮らす土地であれば絶対に出来ないはずだ。無責任さと、謝ることもできない人間性に言葉も出ない。
島を訪れたとき、住民の方が「島の一部分だけを見て、ゴミの島だと思ってほしくない。」とおっしゃっていたのが印象的でした。
豊島は美しい。豊かな自然にのどかな風景。島独特のゆっくりとした時間が流れ、棚田が広がる坂道から見る瀬戸内海は本当に綺麗でした。

○豊島美術館
これは何だろう?白いドームに足を踏み入れると、澄んだ空気に響く音。不思議な空間が広がっていました。床には小さな泉がたくさんあり、地下水が湧き出ては流れてゆく。はじめは座って眺めているだけでしたが、仰向けに寝転がってみると天井にある2つの開口部からは空と新緑が見える。目を閉じて、何も考えずただ時を過ごす。風が木々を揺らし、水の流れる音が聞こえる。自然を全身で感じていると、こころが癒されました。

○笠原氏講演
「作品が場所を特別にし、場所が作品を特別にする」
直島にあるアートは、直島にしか無いものばかりではない。それでも人々は直島に集う。それは「あるものを活かし、新しいものを創る」という発想の転換から生まれるアートだからだと思う。何よりも、島の人が本当に喜んでいるか?を1番に考えた現代アートによる地域再生活動は、お年寄りの笑顔が溢れている。アートが人と人をつなぎ、縁をつくっている。「よく生きる」を考えるベネッセは、人+歴史・文化・暮らし+アート・建築+自然のすべてが必要であるという。次に直島を訪れた際には、ぜひ地元のお年寄りにアートについて話を伺ってみたい。

○最後に
今回の合宿で直島・豊島をはじめて訪れ、その魅力にまたすぐにでも行きたいと思うほど大好きになりました。日常から離れ、自由に感じ考える。ふと思い立って行きたくなる場所のように思いました。
このような特別な機会を作って下さった小山事務局長、2日間本当にお世話になった西美さん、合宿に関わって下さったすべての皆様、本当にありがとうございました。