2015年10月 
 豊後高田市(まちづくり・教育)現地視察

『未来に光り続けるまち 豊後高田』

剱持宏明 (岡山政経塾 14期生)

●はじめに

  豊後高田市は人口約2万3000人の大分県の国東半島にある町です。まちづくりの施策により、13年間で観光客がほぼ0人から40万人に増加した要因は何故なのかということに興味を持ちました。その要因を探すことに視点を置きながら例会に臨みました。また、市の教育がいかに充実しているかにおいても興味があり、教育現場の先生から直接お話を聴けることを楽しみにしていました。   

●昭和の町

 岡山から新幹線・特急列車等を乗り継ぎ、豊後高田市への最寄駅の宇佐駅に到着しました。
昭和の町エリアのみでなく、その周辺エリアも徒歩で探索したいと思い、宇佐駅発豊後高田着のバスに乗車しました。昭和の町の周辺はコンビニ・銀行等が立ち並ぶ平成の町並みでした。ところが、一歩昭和の町エリアに足を踏み入れ、駄菓子屋のキャラメルや飴玉を見たとき、幼少時代に戻ったような感覚に襲われました。視覚のみでなく、味覚で記憶した物事は忘れないものだと思いました。
 世代によって昭和の町の見方は異なっていたことが興味深く感じました。例えば、店頭に設置されているレコードを複数人で見ていてあった出来事です。ある世代では、昔レコードで音楽を聴いていて懐かしいという感想がありました。また、ある世代では、祖父母の家に置いてあったのを見たことがあるという感想もありました。昭和の町の町並みを見て、昭和30年代生まれの世代では、幼少時代に戻ったような感覚を覚える人が多いかもしれません。一方、平成生まれの世代では、日本史の時代の一定期間と捉える人が多いかもしれません。
 例会が終了し、岡山に戻る間、豊後高田市の観光客の増加の要因を考察していました。要因は3点あると思いました。1点目は、全国で例のない試みであったことです。2点目は、あるものを活かし、魅力を創り上げる事業であったことです。3点目は、生まれた世代によって見方が変わる町であることです。
 1点目の要因において、一定の事業においては、3つの過程があると考えています。「開始」、「継続」、「終了」です。中でも事業を「継続」することは最も困難なことだと思います。「継続」のための行動力は真似をしようとしても、なかなかできるものではありません。前例のないことについての「継続」は周囲の反発も相当あったと思います。豊後高田市の職員の方のまちづくりに対する熱意のこもった講話をお聴きして、市も信念を持って進めている事業と理解しました。
 2点目の要因においては、福武幹事の講話で語られていたお言葉を思い出しました。「国家とは、光り輝く個人と、個性と魅力に溢れる地域の集合体である」と。まさに、昭和の町は福武幹事の言葉を実践していると思いました。昭和の町の商人の接客も商品について熱く語られていて、決して岡山の表町商店街では見られないような心温まるものでした。昭和初期の冷蔵庫が置かれる店等を見て、「一店一宝」の言葉通り、一店一店が光り輝いていました。
 3点目の要因において、私自身が感じた感想です。家族連れの観光客にも、次世代に自分が生きた時代を伝えられる点において、今後も盛り立てていくべき町であると、岡山県民ですが、僭越ながら思いました。 写真

●教育の町

 豊後高田市の教育長の河野潔先生の講話をお聴きしました。教育における確固たる信念と熱意が伝わりました。
 教育の充実により町は発展していくことを、豊後高田市の教育政策の実績を持って理解できました。例えば、分譲地の販売において、一定の地域の学校の教育が充実しているかどうかは、土地購入においての購入者の重要な判断の指針の1つです。周辺の市でなく、県外から移住して来られる方も多いという話をお聴きして驚きました。自分も豊後高田市に分譲地を買って移住しようかと本気で家族に相談してみようと心が動きました。
 「学びの21世紀塾」においては、土曜や放課後に学習塾関係者などの外部講師を招いて無料の授業を実施しているとの話をお聴きしました。週休2日制導入によりゆとり教育を推進する国の方針より、ゆとり教育への懸念への対応を優先したことは、先を見通した賢明な判断であると思いました。生徒は土曜日も学校があることに落胆するかもしれませんが、大人になって学校に対して感謝をするはずです。また、学びの21世紀塾創設により、学校関係者が外部講師などと接することで、教育現場の教員が意識を改革するよいきっかけになったという話をお聴きしました。このことから、多様な見方や考え方に接することは、成長の機会となるということを学びました。
 「汎用的能力」という言葉もお聴きしました。臨機応変に気持ちを切り変え、主体的に対応する能力という意味です。私自身、就職をしてから常々思うのが、読み書き計算能力も必要ですが、「汎用的能力」を磨き続けることは生きる上で必要不可欠であると実感しています。そのためには、生徒を指導する教員が出来ていなければ、生徒を指導できません。勤務評定においても、民間企業に似た成果主義の導入をすれば、教員も創意工夫をしていき、更に汎用的能力を磨けるのではと思いました。
 豊後高田市の子供達はベネッセのチャレンジは取っているのかどうかということは未だに気になります。なぜなら、河野教育長に質問するタイミングを逃したからです。岡山に戻ってからベネッセに確認をしたいですが、まだ実行できていません。
 帰りに河野教育長が外まで出て見送りをして下さっていました。こんな先生に自分の子供の教育を任せたいと心の底から思いました。
 教育の町も昭和の町と同じく、教育により、光り輝く個人を創り上げ、福武幹事の言葉を実践していました。直島例会から豊後高田市の例会と、岡山政経塾においての学びは別々のものでなく、密接に関連しているのだと気づきました。新しい気づきを得たことで、非常に有意義な例会となりました。