2015年10月 
 豊後高田市(まちづくり・教育)現地視察

『温かさと懐かしさのまち』

坂元大志 (岡山政経塾 14期生)

●昭和の町

 「犬と猫しか歩かない商店街」に、最も栄えた昭和30年代をテーマとして打ち出し、活性化に取り組んだ。行政と商工会議所、そして商店主の3者が連携し、既存の建物を整備することで当時の町並みの再生を図った。
 現地へ到着したのち、その町並みを散策した。商店では、お店の方がそれぞれのこだわりをお話しくださった。手作りを続けるお菓子や、昆虫をそのまま使ったキーホルダーなど、この町ならではのものが多くあった。ゆったりとした時間にどこか懐かしさを感じる一方で、空き店舗が見受けられることや、車の往来が多いことも気になった。
 散策後は、豊後高田市観光まちづくり株式会社の水田様にご講演頂いた。
 平成4年に始まった議論は平成13年に実を結び、事業の開始に至った。外観だけではなく、商品や商人、歴史を再生することで当時の町並みや雰囲気を作っていくことを伺った。米蔵を改装することで「昭和ロマン蔵」を建てたり、お店も既存のものを利用することで再現したりなど、今あるものを活用する姿勢がうかがえた。
 散策や講演を踏まえて、何度も訪れたい場所というにはまだ徹底が足りないように思う。県外からの観光客はもちろんだが、まずは商店主を呼び込み空き店舗をなくすことや、地元の方々がより訪れるような取組があっていいのではないか。地元住民の評判は口伝いに広がって情報発信の一助になる。
 ただし、今回は商店街全体を周りきっていないこと、ご案内人の方のお話を聞かずに自分たちのみで周っていることも事実である。次回訪れる際には、あご案内人のお話を伺いながら、じっくりと歩いて自らも魅力を再発見したい。

●教育のまち

  豊後高田市では、週休5日制が導入された平成14年度から、「学びの21世紀塾」を開講した。子どもたちの土曜日の居場所として、充実した学習の機会と活動の場として、市長自らが塾頭を務める市営の塾である。「知・徳・体」を3つの柱とし、学習補充のための寺子屋活動を中心に事業を展開している。
 河野教育長の講演では、市への移住の話から、近隣の市へも取り組みが広がっていること、子ども達だけではなく誇れる教職員を育てていくことなどをお話しいただいた。講演を拝聴する中で、2点印象に残っている。1つ目に、「多忙感」という言葉である。文字通り、「忙しいと感じること」である。市では、精神的な理由での休職者はほぼいないとおっしゃっていた。お休みである土日も講座の時間に充てているということは、業務の量は多いはずなのに、そこに忙しさを感じずむしろやりがいとしてとらえていることがうかがえる。2つ目に、プロと誇れる教職員とお話しされていたことである。先生たちも研修や仕事初め式などを通して自らを磨いていくことが要求される。その一方で、寺子屋活動は決してボランティアではなく報酬を払って行っている。市が能力の向上を求めるだけではなく、プロとして認めて正当な対価を支払っていることも成功の一因ではないかと思う。

 

●おわりに

 商店街から次の講演場所へ移動を待つ間、昭和ロマン蔵の外で遊ぶ子供たちを見かけた。駄菓子屋さんで買ったお菓子を食べながら楽しそうに話している姿が印象に残っている。昭和の町を再生しようという声が上がったからこそ、教育に真剣に向き合おうとしたからこそ、人に対して温かな豊後高田市が育まれてきたように思う。岡山の教育を考えるにあたって、様々なヒントを頂いた。

 最後になりますが、お忙しい中講演くださいました水田様、河野教育長、このような機会をくださった小山事務局長、例会準備にご協力くださった14期生の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございます。