2017年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

直島合宿〜人とヒトとの化学反応〜

櫻井透 (岡山政経塾 14期生)

1.はじめに
 岡山政経塾と出会ってから、8回目の直島。瀬戸内海に浮かぶこの島は、毎回不思議なくらい違う顔を見せてくれる。
 今回も直島合宿では多くの仲間と言葉を交わし未来を語った。意見を交わし合うほど自分の進むべき方向に確信を持つ。
 合宿の2日間、直島でお会いした多くの人々との化学反応とその振り返りを私のレポートとしたい。

2.旅のはじまり〜海外の人〜
 私はこの4月に岡山から東京に転勤になった。今までは岡山市内から車で訪れていたのだが、今回初めて公共交通機関で直島を訪れた。
 岡山から直島行きのバス、フェリーには多くの外国人旅行客が乗車していた。大きなリュックを背負い、カメラ片手にワクワクした表情でフェリーに乗り込む外国人観光客。まるで遠足に行く子供の様に。彼らの行く先に待っているのは瀬戸内の景観と現代アートだ。
 直島を目的に来日する人がいる一方、岡山には直島を訪れたことが無い人も大勢いる。しかし、その瀬戸内の直島にアートを持ってきたのが岡山の企業ベネッセだから、いや福武總一郎塾長だから面白い。
 岡山の友人には東京に憧れを持つ者が多いのだが、隣接する瀬戸内海にはこんなにも素晴らしい景色が在る事に気づいてほしい。

 下記は日本一の繁華街と言われる銀座にある「GINZA SIX」と、瀬戸内の直島の海辺にある草間弥生さんの作品。
 いずれも南瓜の作品だが、私は直島にある南瓜に何万倍もの感動を覚えた。
 大自然を感じ、感性を研ぎ澄まされる作品。私は直島に存在する南瓜が大好きだ。


3.ベネッセの理念経営に震撼〜ベネッセの人〜
 直島アートを案内してくださったベネッセの本部管理部長の渡辺様は、非常に魅力的なビジネスマンであり、この人の言葉でベネッセという会社を聞いてみたいと思いお時間を頂戴した。
 渡辺さんはベネッセ勤続約30年。なぜ、ベネッセに入ったのかと聞くと、「30年前、福武書店の初代福武社長の説明会を聞いて惚れたから」その一言が返ってきた。以来、渡辺さんはベネッセの歴史と共に歩んできている。
 印象的だったのが「ベネッセという会社はあまり形がない。理念を元に生きている。『Bene(よく)』『esse (生きる)』という言葉を一人ひとりが感じそれぞれに仕事をしている」という言葉だ。
 人が人を呼び、人をつくる。形のない理念が形のある世界を作る。そんな事を感じた瞬間だった。

4.時代のレジスタンス〜歴史を作った人〜
 今回も福武塾長の話を聞く事ができた。この講演を聞く為に東京から来たといっても過言でもないくらい、偉大な事業を成し遂げた人の言葉は重く価値がある。いったいどのくらいの挑戦を行い、困難と向き合い、どれだけの人を幸福にしてきたのだろうと思う時間だった。
 瀬戸内海にアートを置こうという発想、世界基準の事業。そんな固定概念を取っ払った偉人からの話をきくほどに自らの小ささを感じた時間だった。
 『今ある価値観をぶち壊せ。お前はそんなもので満足しているのか。俺は世界と戦ってきた。直島を世界に発信した。櫻井お前は何を遺す』そう直接心に語りかける講演だった。
 福武塾長は自分にとっていつかこうなりたいとする理想の人物だ。

5.懇親会〜町を作る人々〜
 夜の懇親会では東京の都民ファーストの会の方をはじめ、自分とは全く違う道を歩んできた方々と話をする機会があった。
 中には都会を離れ田舎町のために移住し、地方を良くするために活躍している方もいた。それぞれ違う町で生きているのだが全員に一貫している事が『町を良くしたい』という想いだ。
 『選挙で町は変わらないというイメージを変えたい』『住む人たちを笑顔にしたい』そのために、なにを、いつまでに、誰と、どうやって。具体的に話す頭の中には未来の町を描いている。
 自分はこの町のために、この国のために何ができるのか問いただされた時間であった。

6.おわりに
 岡山を出て東京に住み3ヶ月。もっとも感じた事は『東京にはなんでもあるが、何にもない』ということだ。
 私は地方こそ日本の宝庫であり、守るべき景色があると考えている。今回出会った方々との時間は自分も地方のため行動を起こそうと感じた時間だった。
 地方には、私たちが失いつつあり、探し求めている何か、宝物がいっぱいある。
 福武塾長の言葉を借りれるなら『在るものを活かし無いものを創る』。私は転勤族のため田舎がない。だからこそ地元の人には気づけない地方の良さに気づく事ができる。自らの手で地方を良くしたいと感じた時間だった。
 最後になるが、今回の様な機会を作ってくださった事務局長に感謝すると共に、企画に関わってくださった福武塾長、渡辺様、西美様、多くの関係者にお礼をお申し上げたい。