2017年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

知ることの大切さ

和田 万里奈 (岡山政経塾 15期生)

■はじめに
気づいたら1枚のポストカードを手に取り、レジに向かっていた。4滴の水の写真。見ていると元気になる。何も知らない人が見るときっとただの水滴。どうしてこのカードが欲しいのか?と疑問を持つ人もいるだろう。
豊島美術館の床に湧き出る水滴の写真。今回の合宿はこの水滴を通してこれから先“どう生きるか”を考える良い機会となった。

■幸せとは何か?
 豊島美術館に訪れたのは2回目だ。1回目は去年の直島・豊島合宿。想像していた美術館のイメージをぶち壊され心が動揺し、驚きと戸惑いを感じた記憶がある。2回目の訪問は床に湧き出る水滴に魅了された。心を穏やかにして床に座り、天井にある2箇所の開口部から風や音、光を感じていた。ふと足元を見ると床から水が湧き出ている。水といっても水滴で、湧き出た後は近くの水滴へ連鎖していきどんどん連なって最終穴へと消える。そばに水滴がなく連鎖できない場合でも穴に消える前には必ず一度分裂して、また一緒になって穴へ消える。
 まるで人の命の様だと思った。人は1人では生きることはできない。ここ数か月、うまくいかないことが続き悩むことが多い日々を過ごしていた私は、水滴を見つめながら考えた。幸せとは何だろうか。15期生として岡山政経塾で学んでいる時に小山事務局長から「幸せとは何かが分からなければ幸せにはなれない」と聞き、何度も定義を考えていた。辛いことや挫折を経験したことによって「幸せとは何か」が見えてきた気がする。
今の環境を当たり前だと思わず周りの支えてくれる家族や友人達に感謝をしよう。消えても何度も湧き出る水滴のように挑戦を続けようと。

■幸せなコミュニティに住む
 福武塾長が「田舎をバカにしたり、田舎を放置すると日本は滅びてしまう。なぜ我が町を愛せないのか。」と言われた際にハッとなった。私は田舎育ちで電車は1時間に2本。見たいテレビは映らない。欲しい洋服は隣の県までいかないと手に入らない。田舎に暮らすことは不便だと感じながら学生時代を過ごした。今でも都会に憧れを持っている。日本のほとんどの情報の発信源が東京だからだ。仕事で常に流行を追っていて感じることは東京に行けば手に入らないモノはほとんどない。
 しかし、都会に住んでいる人は幸せなのだろうか。モノや情報は溢れているが田舎に比べて人との繋がりは希薄で自然も少ない。心の豊かさや満足感は田舎のほうが充足しているように思える。福武塾長は30年に渡るアート活動を通して瀬戸内の島に住むお年寄り達が笑顔に満ち溢れた幸せなコミュニティを作ってこられた。
この活動は「直島メソッド」と呼ばれ世界から注目されている。〝幸せになるためには幸せなコミュニティに住むこと″田舎に住んでいることを悔やむ前に幸せなコミュニティにするためにはどうしたらいいか、これから先、自分がどう生きるかを考えるべきであると合宿を通して気持ちが変化した。

■終わりに
 訪れるたびに新しい魅力を感じ瀬戸内の島がますます好きになる。友人達になぜ何度も同じ島に行くのかと尋ねられた。
冒頭に挙げた水滴と一緒だ。知らなければただの水滴。今の私にはコミュニティをすぐに変えることはできないけれど周りの人たちへ伝えることはできる。大切な人たちと島へ行きどう生きるかを一緒に考えたい。
 最後になりましたが、福武塾長、小山事務局長、渡辺様、西美様をはじめ多くの関係者の皆様にお礼申し上げます。