五感で感じた、現代アート
矢吹彰博 (岡山政経塾 16期生)
梅雨明け間近の初夏の日に潮風を感じながら、現代アートに触れる為瀬戸内海の海を渡った。
今回、以前から念願であった「直島・豊島」に行くことができ、アートに対する考え方、見方が変わった。以前にあった「定義」で、私は「アートとは、紙、絵の具、石、土などを用いた自己表現」と定義したが、今回の例会で大きく変わった気がする。地中美術館、豊島美術館を見て、福武塾長のお話を拝聴し、肌で感じることで変わっていった自身の思考、感覚、感情を振り返る。
1934年に日本初の国立公園として指定された、瀬戸内海国立公園であったがそれ以前の銅の精錬所による亜硫酸ガスの影響や1975年から約20年の長きに渡り問題となった豊島の産業廃棄物問題により、島に生息する植物が枯れ島民への健康被害や環境問題へと発展して行った。
人口約3,000人の直島に2004年の地中美術館開設、900人弱の豊島に2010年の豊島美術館開設、そして昨年で3回目となった瀬戸内国際芸術祭(直島、豊島以外にも女木島、男木島、小豆島、大島、犬島を含む)の開催により2016年だけでも1,040,050 人もの来場者数訪れる地域活性化繋がったのには、「現代アート」を武器(手段)に現代アートによる地域再生を行なった瀬戸内国際芸術祭実行委員会会長の香川県知事、浜田恵造氏や福武塾長、ベネッセコーポレーションの力があったからこそである。
■見る、聞く、体感する。
今回の例会では、多くの美術館や街並みの中に溶け込んだアートを数多く見ることが出来た。
初めて訪れた地中美術館では、まず風景に溶け込み名前の通り地中にすっぽり隠れた、美術館の外観とこれだけ大きな空間を地中に建設したのか、と思わせるギャップに圧倒された。以前から、安東忠雄さんの建築は雑誌や実際に岡山市内の施設や職場の近くにもあり目にした事はあったが、これだけ大きく壮大な建物は始めてであった。



福武塾長のお話の中にもあった、「アートに合わせた建物を作った」と言うとおり島の風景に溶け込み、いかにも美術館といった感じではない外観。そして、その中に展示される作品をありのまま見せ、最大限活かす、造り、自然光の取り入れ方など見て、説明を聞くことで更に理解が深まり、最後に体感することにより腑に落ちると言うか、自身の中にスッと入り込む何かを感じました。
特にジェームズ・タレルの作品では、地中美術館の天井を取り払い、自然光を最大限活かした「オープン・スカイ/2004年制作」と外界からの情報の内、約8割を視覚から得ている我々人間の情報がない暗闇で体感する、家プロジェクトの「南寺/1999年制作」の対比が特に印象に残っている。同じ作者であってもここまで対極的な表現の仕方をしているアーティストは稀である気がした。そして、この作品を選び展示しようと福武塾長の感性に感嘆した。
また、この合宿の後の話になるが、小山事務局長からお伺いした「真逆の考え方をする=真逆の視点(偏らないこと)」という思考にもリンクするような気がしました。


また、豊島美術館の西沢立衛の建築も外観のユニークさもさることながら入るまで創造しなかった空間が広がっていた。まさに「感動」の一言でしかなかったです。あれだけ大きな空間の中に柱が1本もない、作品名の「母型」の名とリンクするカプセル状の構造になっている。
床からは、一定時間ごとに泉が湧いておりその雫が他の雫と一つになり床を流れ伝って行く。建物上部には東西の方向に2つの大きな穴があり、そこから自然光、外気(風)、音が建物内部にまで取り込まれる。その日の天候や時間の経過によって見え方、感じ方など姿を変える建築と作品と環境が一体となった素晴らしく、癒される空間でした。
福武塾長が講演で言われていた「在るものを活かし、ないものを創る」の言葉を思い出し、豊島美術館がそれを感じられる代表的な存在なんだなと思いました。
また、こういった美術館を瀬戸内海の島に創ったということも意味があることだと思う。わざわざ、市街地から港まで行き、更に船に乗らなければ行けない場所に行く。必ず目的がなければこの行動には結びつかない。こういった行動にまで繋げる、人々の好奇心をくすぐる魅力がこの島々にはあるのだと思う。



■まとめ
「考える力を身につける。発想の転換をする。」
例会が終わり、この言葉の意味を考える中で多くのことに気付き、学んだ。
今回の例会では、地中美術館や豊島美術館など初めて見るもの、福武塾長の講演や一緒に解説してまわって下さった西美さんから聞くもの、その場所に訪れたものにしか分からない身体と心で感じる(体感する)もの。岡山政経塾に入塾しなければお話しすることのなかった都民ファートの奥澤都議、これから選挙に出馬されようとされている山本さんとのお話し、同期の塾生やOBの方々とのディスカッションなど、「見て、聞いて、体感する」、そこから「思考し、納得し、行動(会話)する」ことの大切さを実感しました。
これを日々の行動にまで繰り返し落とし込むことが、福武塾長のような経験に基づいた柔軟な思考(発想力)で敵に立ち向かう対応力の在る人間、夢を現実にする人間に成長する鍵であると思います。
今回の例会を終え「アートとは?」と問われたならば、「五感で体感し、自身の感性を磨くもの」とお答えします。
この暖かい時期とは真逆の冬には、家族を連れて新しい自分の感性を磨き、共有しに行きたいと思います。
最後に今回、講演して下さった福武塾長、案内して下さった渡辺さん、西美さん、色々なお話をさせて頂いた奥澤都議や山本さん、OBの方々、考えるきっかけを下さった小山事務局長、同じ時間を共有した同期の塾生、関係者の皆様に心より感謝致します。
本当にありがとうございました。