2019年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

直島・豊島合宿レポート

大倉 淳平 (岡山政経塾 18期生)

 直島・豊島合宿につきましては、直島・豊島での数々の芸術作品に触れること、福武塾長の講演を聞くこと、また豊島で産廃現場を視察することができました。
 芸術を楽しむためには、感性だけに頼るのではなくその作品の背景を知ることが必要だと気付かされるとても大切な機会になりました。
 この合宿で得たものは、今後の人生において役立てることができると思われます。

 地中美術館では、美術館自体がアート作品のようで、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3人の作品はもちろんのこと、自然と調和している安藤忠雄作のこの美術館自体が一番の作品と感じる。自然光が降り注ぐことで、季節や時間によって設置された作品の見え方が変化するようになっていて何度でも作品を感じたいと思わせる点が素晴らしかった。

 家プロジェクトの本村エリアでは、いろんな芸術家が歴史と共存させ様々な作品を見ることや体験することができた。印象に残ったが石橋邸の空という空間が般若心経で言う空を表現しているようにも感じた。また小さなアートが点在していて、風情のあるこの町を歩くことが楽しめた。町が一丸となって取り組む姿勢が岡山のまちづくりにも活かせれると感じた。

 安藤忠雄設計の施設で、ホテルと美術館が一体化しているベネッセハウスミュージアムでは、現代アートの作品を展示しており、中でも印象的だったのが国吉康夫の戦争ポスターだった。戦前移民としてアメリカに渡り、画家として成功し、戦争時にはアメリカへの忠誠と日本の軍国主義への抵抗の意を示す意図で描かれたものだった。観た時にはなぜこのような残酷なポスターを日本人が描いたのだろうと疑問だったが歴史背景で考えたら仕方のないことであったとも思える。

 バス停から豊島美術館に行く道中に、遊歩道からアートスペースまでの道中に棚田や瀬戸内海を感じた。アートスペースでは、光や風や音を感じ自然の流れについて少し考えされられるような空間だった。美術、建築、環境が一体となっていて生命を感じさせてくれる見事な美術館だった。


 直島・豊島の芸術にふれアートとはつまり、それぞれの時代の政治、宗教、哲学、風習、価値観や環境などが造形的に形になったものが美術品であり建築なのだと感じた。

 福武塾長の講演では、いま日本が抱えている問題やこうあってほしいという願いを聞くことができた。報道の信憑性や民主主義の限界、賃金が上がらない現状、一極集中の東京、地方の衰退、民間でなければこの現状は変われないという様々な問題や老人が笑顔あふれる世の中にしたいという願いを聞いて、私なりに思ったことは、今の民主主義では確かになかなか日本は変われないと感じる。良い意味でも悪い意味でも舵がきり難いのが民主主義の特徴で、政治家や役人に期待をせず各民間企業が生産性を上げ、それに見合った賃金を労働者に与え、利益がでれば地域発展のための社会貢献するようにしていければ強い日本になっていくと考える。政治家や役人はそれを後押しする存在なのだと感じた。定年とか社会から追い出すようなやり方をせず元気な時は働けるようにしていけば、老人の笑顔が続くと思う。世界からみて日本の資本主義はすばらしいと思ってもらえるようにしていかなければならないと考える。

 豊島の不法投棄の産廃現場では、2000年より原状回復作業が始まり、まだ作業が残っている現状を目の当たりにしました。住民運動によってここまでできたことに尊敬の念を抱きます。元県議の石井亨さんの話を聞いて、第二・第三の豊島を作ってはならないと強く感じた。許可を出した香川県長、不法に投棄した業者は許しがたいが、産廃を産んだ企業は、日本にとって重要な科学技術であったかもれない。しかし、科学技術の負の遺産である産廃は当初はどうすればよかったのだろうか。今の日本の現状でも同じことをしているように感じる。例えば、原子力発電所の使用済み核燃料の処理問題。処理方法がないまま、施設の中のプールでずっと冷やし続けているのが現状である。豊かさを求め、経済大国であり続けるためには仕方のないことなのでしょうか。国民一人一人が考えなくてはならない問題であると思う。

 この直島・豊島合宿を通じて感じたことは、アートの島にしたことにより、地元への愛着や子供の社会性が高まり、新たな趣味から出会いが生まれ、生きがいを持つようになるなど、地域に好影響を与えている。観光地としての新たな魅力が高まり、観光客が増加することで宿泊業など観光産業が活性化し、地域経済にとってプラスになるだけでなく、地域住民にとっても来訪者との交流や地域貢献が高齢者自身の福祉や生活の質にプラスに働いていると思われる。ベネッセをはじめとする民間の力でここまでのことができるのだと思い知らされ、岡山の希望が見えた気がした。