2019年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

35歳の若造が学ぶ『生きる』とは『死ぬ』とは

櫻井 透 (岡山政経塾 14期生)

仕事で行き詰まった自分に、一人の人間と一つの企業からスタートした壮大なアート、『直島』が生きるとは何かを教えてくれた。
わずか14㎢の小さな島が自分に問いかける。『お前小さいな』と。
瀬戸内海であった仲間が、先輩が、作品が自分をまた一つ大きくさせてくれた。


【仲間とよく生きる】
今回OBとして参加させていただいた。現役の18期は実に多業種に渡る。会社役員、弁護士、医者、自営業等。全員に共通しているのは現状を打破し成長を求める心。
全員が、人が幸せで生きるとは何かを考えそれぞれの目指す方向に向かい行動している。今を一生懸命に。
深夜の暗闇の中、タオルも用意せず、後先も考えず暗闇の瀬戸内海にパンツ一枚で飛び込み、「藻が絡む!」大きな叫び声をあげる彼らを見て今を真剣に生きる事の大切さを学んだ。

【先人から学ぶ生きる】
福武さんの講演を聞くのは今回で3回目。毎回同じ内容の話だが入って来る内容が異なるのは自分が少しづつ変化しているからだと信じたい。幸せになるとは、人が笑顔で生きるためには。世の中に貢献をした先人の発想、考え方に少しでも近づけるよう日々成長したいと願う。

ベネッセの本社・直島統轄部長である高橋さんからもたくさんのお時間を頂戴できた。ベネッセに勤めて30年。なぜベネッセが大きくなったのか。言葉の一言ひとことが動いてきた実績の重みを感じる。物事を達成するためにどうやるか。子供の智の成長、教育という商材を一人でも多くの顧客に届けるための戦略。従業員数百人の時代から駆け抜けてきた先人の経験はここでは語り尽くせ無いほど重かった。

【作品から学ぶよく生きる】
私の大好きな作品3点から多くの事を学んだ

・豊島美術館 (生きる)
豊島に存在する巨大なアートは毎回自分の心を真っ白にしてくれる。白い壁にぽっかり空いた穴。穴の先には青々とした木々と広い空が見える。白い床には不規則で水の玉が生まれ、大きくなっては流れていく。
生まれるという奇跡と生きるという尊さ、儚さを感じさせる作品だ。

・100生きて死ね/100 Live and Die (生きるそして死ぬ)
『生きる』『死ぬ』という対局的な言葉が光っては消えていく。しばらく眺めていると全部の言葉が全て光り輝き、消えていく。一生懸命に生きては消えていく人の儚さを感じさせる作品。光る瞬間があってもいいじゃないか、消えることがあってもいいじゃないか。呼吸しているけど、本当にお前は生きている?生きたフリして死んでないか?ナウマンの作品が『生きる』とは、『死ぬ』とはを点滅しながら問いかける。

・豊島横尾館 (死ぬ)
死を見守るスフィンクスの絵画から始まり、死の島へ向かう。
生命の誕生をあざ笑うかの様に、めでたい作品であるはずの福笑いは骸骨を抱えている。
アーティストの横尾忠則氏は30歳を迎える頃から今に至るまで、「生と死」を主題とし、死と正面から向かい合い制作してきたらしい。(ベネッセアートサイト直島HP参照)
私自身生命保険会社に勤めていたが、目の前の人が事故に合う確率、病気になる確率なんて誰にも分からない。
ただ言えるのは人はいずれ死ぬ。人の死亡率は100%だ。
では100%死ぬまでの時間に何を成し遂げられるか。横尾忠則氏の作品からそんな覚悟を感じさせられた。

出口で最後の作品のふくわらいが問いかける『どんだけ悩んでも最後は死ぬんだぜ』と。

さいごに
毎年直島に来るたびに新しい発見をさせていただいています。
講師が、仲間が、作品が、直島が。
『よく生きる』という大きな謎かけに自分なりの答えが出るのはまだまだ先のようです。