『自然とアートに触れた感動の1日』
林 俊行 (岡山政経塾 14期生)
フェリーに乗ることさえ初めての私は、船上で心地よい潮風にあたりながら宮之浦港・直島に到着。巨大な「かぼちゃ」が私たち岡山政経塾のメンバーを優しく迎えてくれました。1日のみの参加でしたが、全てが初体験な私はワクワクしながら直島に降り立ちました。
水辺の睡蓮は私たちを温かく迎えてくれ、それを横目に地中美術館に到着。人生初の現代アートは安藤忠雄氏の設計した館内から始まる。右も左も分からない私は不思議の国のアリスになった気分で、館内の中を歩きました。作品ジェームスダレルの創る異空間に驚かされた、壁の向こうの異空間。
家プロジェクトにおいてもジェームスダレルの創る漆黒の空間で驚かされました。じっと目を凝らして見ると真っ暗闇の中から微かに明かりが見えてくる。今、見えているものが錯覚なのか本物なのかそれさえも分からない。視覚と脳を巧妙に翻弄するアート。見えていたものが見えなくなると、目の前の現象に捉われることなく感じる事が大切だと教えられました。
ジェームスダレルさんにお聞きしたいです。貴方は作品を通して私たちに何を伝えようとしているのでしょうか?是非、一度お話をお聞かせ下さい。
島とアートという意外な結び付きについて、私はどうやって成功させたのだろうと思っていました。都内の一等地であれば年間数百万人を見込めるはずです。それを敢えて不便で、三菱マテリアルの公害で禿山になってしまった直島にアートを展示するのか疑問を抱いていました。
実際に訪れてみて福武總一郎幹事の言われた「在るものを活かし無いものを創る」この言葉は直島に集約されていると受け取りました。美しい瀬戸内海にある島にあるからこそアートをより楽しむことが出来るのではないでしょうか。大小の島々が浮かぶ瀬戸内海は生まれ育った私達からしてみれば当たり前の景観かも知れませんが、海外から訪れた方達からすれば素晴らしい景観だと思います。それこそが素晴らしい作品なのではないでしょうか。
300年、400年前からある古民家。その中で見事に現代アートを表現している。
私はアートを通して作者のデッカイ価値観に触れ、体感することでちっぽけな自分に気付くことが出来ました。福武總一郎幹事の言葉をお借りすると、大切なのは自分が何を感じたかであります。おそらく理解することは不可能。でも、でも、本当に大切なのはアートに触れる事で自分の視野の狭さと、感性の無さに気付き大きな視点と多様な価値観で物事を見つめる事だと教えられました。
夕方、波音の聞こえるつつじ荘で福原慎太郎先生の「人は何故美を求めるのか」という講演と福武總一郎幹事の直島を復活させた「直島メソッド」について講演を拝聴しました。
福武總一郎幹事の講演は話が壮大すぎてド肝を抜かれました。まるで宇宙の遥か彼方に飛ばされ、自分の位置感覚を失っている。いや、自分自身を失っているような感じさえしました。しかしその壮大な価値観だからこそ傷ついた過疎の島を現代アートでよみがえらせ、国際的評価を受けた「直島メソッド」が生まれたのでしょう。またその本質は「物で栄えて、心で滅びる」という今日の日本の現状に立ち向かっているのでは感じました。講演の中で「レジスタンス」という言葉を使われていましたがそれも印象的でした。
物質の豊かさばかりを追求してきた今日の日本。その中で本来忘れていった心の豊かさが直島にはあると思いました。学ぶという事で壮大な価値観に触れ、未熟さを痛感し自分の志についてどうあるべきか考えさせられました。ただ、一つ悔やまれるのは福武總一郎幹事の持つ独特な雰囲気に終始圧倒され質問できなかった事が悔やまれます。そこにまた聞く事しか出来ないちっぽけな自分がたたずんでいました。
大小の島々の浮かぶ瀬戸内海は、そのものが素晴らしいアートです。モネの睡蓮もジェームス・タレルもウォルター・デ・マリアも素晴らしいアーティストです。しかし、この様な島自体を瀬戸内に創ろうとした福武總一郎幹事こそが最高のアーティストだと思いました。一体誰が思いつくでしょうか?これこそが奇跡ではないでしょうか。
参加した同期の方々は、これから起こることに期待を抱きながら集合しました。緊張していなかったのでしょうか?最初はどことなく表情が硬い様に見えました。因みに私は緊張しています。何せ初体験なもので。
しかし、同じテーブルを囲み同じ物を食べ、共に現代アートに触れて驚きと感動を共有しているうちに次第に笑顔が溢れ出てきた。普段であれば恐らく気付かないであろうあの人の素顔と笑顔。こういった発見があるのも合宿の醍醐味でした。
島のコンビニに皆で買い出しに行った際に塾生を約1名忘れてつつじ荘に帰ってしまい同期の皆で慌ててしまうというアクシデントがありましたが、それも良い?思い出です。 ごめんなさい。
懇親会バーベキューでは美味しそうにこんがり焼けたお肉を後目に、早々に帰路につきました。帰りのフェリーに乗ると島の灯りが妙に恨めしく思いました。
今年中に、今回訪問できなかった豊島に行きます。あの人と手をつないで。
心と身体に言い表せないほどのエネルギーを充電しました。
私は前に進みます。
最後になりましたが小山事務局長を初め、暑い中バイクで駆け巡り私たちを案内してくださった西美さん、例会担当幹事の劔持さん岡崎さん、そしてこの度関わって下さった全ての皆さん、心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。