2015年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

『瀬戸内の豊潤な自然と現代アートに抱かれて』

西村公一 (岡山政経塾 7期生)

●現代アート

 直島の地中美術館や家プロジェクト、豊島美術館では極上の現代アートや絵画にお目にかかれますが、私には意味がよく分からないものもあります。しかし意識する心(顕在意識)には理解できなくても、心の中の深い部分(潜在意識)には何かがイメージとして刻印されているように感じます。
 何か問題を抱えていて解決策が見当たらない時やよいアイデアが浮かばない時、この心の奥に刻印されたイメージが思いもよらないプレゼントを与えてくれるのではないかと考えています。
 たくさんのお酒があればいろいろなカクテルができるように、心の中のイメージが多いと無意識のうちに豊かな発想ができるのではないでしょうか。
 新しいアートに触れるもよし、同じアートに繰り返し触れてみるのもよし、「豊かな発想」というカクテルができる名バーテンダーを目指して、瀬戸内に点在する現代アートに心を浸してみたいものです。

●豊島産業廃棄物問題

 美しい瀬戸内海に浮かぶ島を震撼させた産廃問題から我々が学ぶべき課題は多く、人類の平和な暮らしを守るためにも、豊島問題をしっかりと見つめ直す必要があると思います。
 優しくて心穏やかな人が多い地域は実によいものです。しかし「善に強い地域は悪にも強い地域」でなければなりません。悪質業者が現れたならば、地域住民、行政、警察、議会、司法、マスコミなどがぴたりと連携して悪を封じ込める仕組みが大切だと考えます。
 次に大切なことは、行政、警察、議会の責任を明らかにし、重大な不作為(やるべきことをやらないこと)を犯す公務員や議員には罰則を科すことではないでしょうか。その結果として「たらい回し」という責任逃れを回避することができます。
 さらには、分かりにくくて解釈が難しい法律や通達をシンプルですっきりとしたものにしておくことも大切でしょう。そうすれば善悪の区別が明らかになるので、悪質業者は勝手気ままなことができなくなります。
 いずれにしても、何か問題が発生してしまってから解決するのでは、多くの時間と資金(税金)が必要になります。しっかりとした予防的環境保全対策がとりやすい仕組みづくりが必要であると考えます。このことはまさしく「政治の責任」ではないでしょうか。

●合宿の醍醐味

 岡山政経塾に集い学ぶ塾生は、年代も職業も経歴も種々雑多です。それでいてみんな仲良しです。上下関係や利害関係がないので気軽に何でも話し合うことができます。社会的立場の高い塾生で威張っている人はいません。まだまだ人生を駆け出したばかりの塾生で卑屈な人もいません。とても居心地がいい組織です。このような人間関係を私は「仲間」と呼んでいます。
 このすばらしい仲間は、自分にとって当たり前の世界が、他人から見れば異質な世界であることに気付かせてくれます。曲がった背骨に矯正が必要なように、偏った思いをやさしく矯正し視野を広げてくれるのが岡山政経塾の仲間です。
 合宿で私たちは寝食を共にします。同じものを食べ、しっかりと学び合い、同じ部屋で寝る。このことがお互いの親密感をグッと高めてくれます。
 私が岡山政経塾を卒塾した後も、繰り返し合宿に参加するのは「合宿の醍醐味」に魅せられているからだと思います。

●終わりに

 瀬戸内の磯の香りがほのかに漂う民家の一室で、福武總一郎先生(岡山政経塾幹事)の「在るものを活かし、無いものを創る」との講演を拝聴させていただきました。
 先生の講演内容は、世間一般の成功法則や哲学といった類とは異質で、「宇宙の大真理」とでも形容できるものではないかと感じます。これほどスケールの大きい講演を豊かな自然に抱かれながらライブで聴くことができるのです。
 私たちは岡山政経塾生であることに大きな誇りを持ちたいと思います。