2015年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

『過去への責任 責任ある未来のために 』

大森 篤志 (岡山政経塾 14期生)

『見る、聞く、体感する。考える力を身につける。発想の転換をする
 アートを眺めるのではなく、アートから学ぶ思いで今回の直島合宿に望みました。

●直島・豊島を訪れて

①地中美術館
 地上ではなく地中にあることにまず驚き、なぜ美の空間を地中に創ったのかという思いを抱きながら入口へと進みました。

・クロード モネ「睡蓮」
 地中でありながら自然光にライトアップされた絵画を鑑賞することで絵画の持つ陰影をより感じることが出来ました。

・ウォルター デ マリア
 球体と金箔をほどこした木製の彫刻は日の出から日没の間に表情を様々に変化させる。ワイン片手に変化の様子を一日中見てみたいと思いました。

・ジェームス タレル
 天井中央を切り取ったような白く四角い空間で切り取られた天井から見える空と光の心地よさの中で目を閉じれば、心の安らぎと気持ちの高まりを覚えました。
 全ての作品に共通した「光」というテーマを感じ、人の創りだしたアートと自然光が優しくも力強く調和し一つの作品を完成させているのだと感じました。

②家プロジェクト
 そこに生活する島の人々との出会いから感じたこと。
 新しいものを受け入れる勇気、アートを理解し共存・発展させようという直島の方々の思い。
 様々な活動を通じて幸せのコミュニティを作りあげたベネッセの方々の行動。
 人と人が心を合わせ、目的を共有して力を合わせるからこそ美しくも温かい芸術の島。
 直島であるのだと思います。

③産廃現場を訪れて
 現場に立ち、話を聞き過去に犯した過ちを知るほどに重く苦しく、怒りの気持ちが湧きあがるのと同時に「責任」という言葉の意味を深く考えさせられました。
 政治の「責任」以前に人としての「責任」があれば起こらなかった事件ではなかったのではないかと思わずにはいられません。
 住民、行政の努力により処理事業も進み、島は本来の美しい景観を取戻しつつあります。しかし人の心に残る傷みは消えることは無いと思います。
 同じ過ちを繰り返さない為にも、国・政治責任という考えでなく国民一人ひとりが日本人としての誇りと責任を今改めて持つべきだと思います。

④豊島美術館
 美術館に入った瞬間に広がる無音の空間と足元から湧き上がる水に生命の誕生を感じ、水の動きを見ているだけで時が経つのを忘れ、非日常の空間にただ居たいと感じました。
 天井の空間から差し込める光の温かさ、心地よく吹き抜ける風、音の響きがテレパシーのように体に伝わり全身で芸術を受け止める感覚でした。
 通常の美術館との一番の違いは体を大の字にしてアートを感じることが出来ること、腕を伸ばし寝転がり天井に空いた空間から空を見上げれば日常の悩みや迷いが空に吸い込まれていくようでした。
 あまりの心地良さに睡魔に襲われイビキをかく同期の仲間には何より癒されましたが、、、。
 美術館を出て目にした棚田の風景と、晴れやかな空と海が織り成す自然のアートに一瞬で心を奪われ、この素晴らしい景色を未来に残し伝えたいという思いと責任を感じ、10年後、20年後にもこの場所に立ちこの景色を見たいと思いました。  

●福武總一郎幹事 講演

 「在るものを活かし、無いものを創る」
 直島に対する見方、国に対する見方、物事に対する見方。
 普段聞くことの出来ない話は刺激的であり、今の日本・自分たちの置かれている状況に焦りを感じると同時に「やってやるぞ!」と奮い立つ熱い気持ちが湧き上がりました。
 講演を聞き終えて、福武總一郎幹事が何故世界中のどの都市でもなく直島に美術館を創ったのかを理解できたように思います。人が生き、自然が溢れ、美しい瀬戸内海だからこそ自然とアートの共生と成りえるのだと思います。

●合宿を終えて

 非日常の中で過ごした2日間。アートを通じて人が人を動かす「力」とたくさんの気付きを学ぶことが出来ました。
 この時間を14期生の仲間と、岡山政経塾の塾生として経験できたことを嬉しく思い感謝します。
 学びを生かしブレない信念を持つことを決意し前進します。
 2016年に開催される芸術祭には、私と妻の「希望」である息子と共に参加し私が感じた感動を伝えたいと思います。